2005年9月19日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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今日は山下和仁のギターリサイタルに行ってきました。

第一印象は「昔のイメージとは全く違う」でした。昔の彼の演奏は「スピードと力で弾きまくる」でしたが、彼も今年で44歳、全く違う演奏でした。一言で言えば「ギタリストを超えたギタリスト」とでも言えましょうか。兎に角これ程色彩豊かにギターを演奏する人は他にいません。ダイナミックレンジもこれ程広い人はいません。と言うとやたら大きな音を出すのかと思われるかも知れませんが、そうではなく弱音で美しく歌うのです。勿論大きな音も出しますが、ピアニッシモでうま~く歌うんです。。右手は12フレット辺りからブリッジまで自在に移動します。

ギターも30cm以上も膝から上がったり、ヘッドが最大60度程前方に出てきたり、赤子をあやす様に抱えて弾いたり、裏板を見るほどに胸から離したりと自在にギターが踊ります。時には音を放り投げるようにギターを動かします。昔のギターを抱え込むような窮屈そうな演奏スタイルから開放された様な自在な演奏スタイルに変身していました。そして彼のギターはラミレスですが、サステインがとても長い楽器と言う印象でした。きっと特別に素晴らしいラミレスなんだろうなと思わせるようで、しらかわホールに山下のギターの響きが鳴り響いていていました。

プログラム自体がスピードと超絶技巧を見せる曲が1曲もないのです。選曲の良し悪しは別にして一般的なギタリストのプログラムとは全く違っています。中でも第二部で演奏したドヴォルザークの新世界の第二楽章「ラルゴ」では感動しました。ここでは通常のギタリストが使わないような奏法も取り入れていますが、兎に角彼の音楽をギターを使って表現しています(賛否両論あるにせよ)。昔の様にギター曲を弾きまくるのではなくギターを道具に使って音楽を作っています。盛り上がった後に主題をピアノで美しく奏でたときには胸にこみ上げてくるものがありました。ギターの演奏会ではなかなか体験できない事です。かと思えばその前に演奏したギターのオリジナル曲、アルハンブラ宮殿の思い出も素晴らしく美しい演奏をするのです。今までに聴いたことのない、聞き入ってしまうアルハンブラ宮殿の思い出でした。私の後ろの方の席の男性から演奏が終わる頃(まだ拍手のなる前)に「はぁ~!素晴らしい!」と溜息が漏れていました。

アンコールを6曲も演奏しました。誰も帰ろうとしないのです。第二部最後の曲を終わって舞台裾に引いてから、かなり間を置いて、拍手に応えるために手ぶらで登場します。また引っ込みます。普通なら次はギターを片手に登場ですが、また手ぶらです。そして三度目にやっとギターを持って登場してアンコールに応えるのです。しかもその合間の長い事。拍手する手が痛くなってきます。並みの演奏家だと早めにギター片手に再登場してアンコールに応えないと拍手が止んでしましますが、今日は違いました。しかもその調子で6曲までアンコールを演奏するのですから、第3部が長かったこと。それ程に今日は素晴らしい演奏会でした。


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