あるがまま日録

表題のとおり、日々思ったこと考えたこと、興のむくまま書き散らしています

子供の声が騒音 不寛容の源は?

2017-04-11 14:45:42 | 読んだ本などの抄録

2017.04.11の道新に、表題のテーマで心理学者・加藤諦三タイゾウさんの談話があった。全国各地で子供の声が“騒音”として捉えられ、保育園建設をめぐる訴訟になっている。キレる人も、本音を吐くトランプ現象も、同じ要因か

――なぜ子供の声が騒音として捉えられるようになったのか  
  子供の声でも犬の鳴き声でも、その音をどう感じるかは、人によって違う。客観的に同じ音でも、自分の中で処理する段階で、捉え方は変わるのです。  

  (うるさいと感じる人は)子供が嫌いだということ。もっといえば人が嫌いということ。人間嫌いというのは心理現象からいうと劣等感から来ていることが多い。劣等感のある人は他者に対し、優位に立ちたいとの願望を持つので、周囲の人は敵になる
  これまで私たちは子供の声を喜びに満ちたものと思ってきた。それが『うるさい』というのは、(以前に比べて)人間が変わったということ。

――社会に対する疎外感や人とのコミュニケーションが少なくなったことが背景にあるのか
  好きだと感じればコミュニケーションは上手くいくが、嫌いと感じればうまくいかない。現代人は無意識のうちに、いろいろな問題を抱え込んでおり、人や物事を嫌う傾向を強めている

――最近はキレる高齢者も増えている
  キレる人は過去ずっと我慢してきたのです。青年期、中年期など各年代を通じて、人間は内面の課題を自分の心の中で処理、解決して成長する
キレる人は高齢になるまで(内面の課題を解決しないまま)我慢し続け得てきた。社会のスピードについて行けず、いろいろな問題を心の中にため込んでしまったというわけです。

  今まで心の中で思っていても、口にしなかったことをみんな言うようになった。こともの騒音がうるさいと思っていた人は昔もいたはずだが、人間性が疑われるのを恐れ、誰も言わなかった。
  キレる現象はある面で(差別や敵意をむき出しにする人が増えている)米国のトランプ現象と同じ。

――未熟なまま大人になる人が増えているように見える
  小学校、中学校、青年期に、心理的な問題を自分なりに解決しないまま社会人になり、結婚してしまうことが原因の一つ。
東大の研究者が行なったアジア各国の心理調査で、結婚生活の満足度を問う設問で、インドやスリランカは非常に高い。低いのは韓国と日本。経済的に繁栄している国の人の方が人間関係に不満を持っていたのです。

――悲しい時代になりました
  これは少子化とも関係している。
  人びとの結婚観が変わった。結婚を愛の実現ではなく、束縛と感じる人が増えた。これは回避依存症という。回避依存症は成長の過程で、過干渉を受けたことでおこる例が多い。母親から過剰な干渉を受けて育った人は、深い人間関係を築くことが恐怖になる。

――「不寛容問題」は母親と子の関係に遡るのですね
  母親と子の関係は極めて重要だが、現代はその関係が崩れている。『自分の子が好きでない』と話す母親がすごく増えている。昔もそう思う母親はいたでしょうが、考えてはいけないことだった。それが平気で話すようになった。
母親自体が心に問題を抱えている。貧困の連鎖は目に見え、みんなにも理解できる。しかし、心の病の連鎖は目に見えない。

  技術革新が進み、社会の進歩すれば、人間の心の問題も解決できると思っていたが、それは錯覚だった。他者や社会といった外側の力だけでは解決できない。
心の問題は(自分自身で向き合う)内面の問題。そこを考えないといつまでも『私が不幸なのはあなたのせい』となり、『社会が悪い』となる。

だが、社会の悪いところは挙げればいくらでもあり、問題解決にはならない。オーストリアの精神科医フランクルは『外側のあらゆる困難をなくしても神経症の予防には何の役にも立たない』といったが、最終的には自分の気持ち次第なのです。