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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

当事者の声からみえてくるもの ~若年認知症~

2006-02-15 21:32:12 | 認知症
ここ数年、認知症当事者が自ら声を上げ始めている。これまで障害当事者やハンセン病の回復者、エイズ罹患者などさまざまな当事者と呼ばれる人たちが自らの姿、声を使って現状を訴えてきた。そして今、認知症になった人自らが声がどんな変化をもたらすのであろうか。

2003年、オーストラリアの元官僚だったクリスティーン・ボーデンさんが自らアルツハイマー病で辛い体験をしていることを赤裸々に語ったことは、世界に衝撃を与えた。翌年、京都でおこなわれた国際アルツハイマー協会の会議のため来日したのも記憶に新しい。
また時を同じくして、福岡県在住の越智俊二さんが認知症であること、そして記憶が失われていくことの辛さを語り、多くの人の涙を誘っている。テレビにも取り上げられ、何度か放送もされている。
その他にも広島や長崎でも認知症当事者が自らの声で、世間に訴えかけている。

これら当事者の共通点は、皆若年期に認知症を発症しているということ。40代、50代の働き盛りの時に発症し、仕事を辞めざるを得なくなっている。
彼らの話を聞くと、認知症の人たちがさまざまなことを悩み、考え、苦しんでいることがわかる。決してすべてのことを忘れてしまうのではなく、新しいことでも記憶に刻まれたものは覚えていたりする。これまで認知症の高齢者を介護してきた者にとっても、新たな気づきを与えてくれる。

しかし、当事者が話すことの一番の意味は、世間一般の人に広く病気の理解を広めることにあるだろう。これまでも多くの認知症高齢者が、家族から隠される存在であった。そのため、発見が遅れたり、満足な生活が送れずに苦しんでいる高齢者もいたし、現在もまだ多いだろう。
若年認知症ならではの悩みもある。それは、仕事を辞めざるを得ず、収入が途絶えてしまうことだ。特に男性で一家の大黒柱であった人が認知症になると、その家計は一気に火の車になってしまう。現在では、それを支えるのは7万円/月程度の障害年金のみ。しかし、そのお金も本人の介護費用などで消えてしまう。
また、介護者の問題もある。高齢者以上に同性介助が望まれるし、そもそも若年認知症の専門知識が広まっていない。
当事者の姿からは、さまざまなSOSが発信されているのである。

認知症は病気である。だから、認知症であることは残念なことではあるけれど、恥ずかしいことではない。そして、不幸なことであってはならない。早期に発見されれば、薬で進行を遅らせることができるし、しっかりと診断できれば治る認知症もある。正しい理解のもと、皆で支えあっていく社会にしていくことが必要だ。

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