ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団 マクミランの『ロメオとジュリエット』7月2日(土)

2011年07月03日 | Weblog

Nさんより再び寄稿頂きました。

今日も最終日をご覧になるとのこと。

写真はロメオとジュリエット限定カクテル パルフェタムール(完全な愛)

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新国立劇場バレエ団 マクミランの『ロメオとジュリエット』
2011年7月2日(土)
ジュリエット:本島美和
ロメオ:福岡雄大
マキューシオ:八幡顕光
ティボルト:古川和則
ベンヴォーリオ:厚地康雄
パリス:輪島拓也
キャピュレット卿:マイレン・トレウバエフ
キャピュレット夫人:西川貴子
乳母:堀岡美香
ロザライン:川村真樹
大公:森田健太郎
ロレンス神父:石井四郎
モンタギュー卿:小笠原一真
モンタギュー夫人:千歳美香子
3人の娼婦:寺田亜沙子 堀口純 丸尾孝子
ジュリエットの友人:さいとう美帆 高橋有里 西山裕子
          寺島まゆみ 長田佳世 米沢唯
ロザラインの友人:酒井麻子
マンドリン・ソリスト:江本拓
マンドリンの踊り:アンダーシュ・ハンマル 小口邦明
         清水裕三郎 田中俊太郎 原健太
 
初役同士の本島さん、福岡さんペアを鑑賞した。

本島さんは少し大人びた落ち着きがあり、
ロメオに対し、優しさや慈愛が感じられるジュリエットであった。
3幕では悲しみに暮れつつも
ロメオへの揺るぎない思いを胸に試練に立ち向かおうとする
強さを感じさせ、まさに大人の女性となり、
薬を飲むか否か決断する緊迫感のある場面では、
舞台上1人であっても堂々たる存在感を示していた。

福岡さんとともに舞台を牽引し、悲劇の結末へ導いていた。

福岡さんのロメオは恋に恋する一直線な少年で、
特にバルコニーのパ・ド・ドウでの疾走感のある踊りからは
ジュリエットへの一途な思いがそのまま表出していた。

マキューシオやベンヴォーリオと戯れているときは
可愛げのある親しみやすい男の子だが、
ジュリエットといるときは頼もしい青年の顔になり、
恋を通して成長していく様子が伝わってきた。

技術は勿論、難易度の高いサポートの上手さが光り、
今後の活躍が益々楽しみなダンサーである。

 何度か他の作品で共演を重ねているお2人だが、
初恋らしい甘酸っぱさやときめきが伝わり、
その後に待ち受ける悲劇が際立っていた。
またの共演が待ち遠しいペアである。

古川さんのティボルトは
モンタギュー家に対する憎悪を色濃く表現していた。
オールバックにした髪形もまた近寄り難さに一役買い、
他の人との格の違いがはっきりと表れていた。

川村さんのロザラインも印象深い。
舞台栄えする容姿に加え、
ロメオをあしらう仕草、つんと澄ました顔も美しい。

マンドリンの踊りも連日舞台を盛り上げていることを挙げておきたい。
広場で行われる結婚式を祝うべく登場するのだが、
初めて観たときは子供番組のキャラクターそっくりな奇抜な衣装に
度肝を抜かれた。

だが彼らの踊りの最中は貴族、街の人々、娼婦、百姓、小姓、花嫁花婿、
身分性別問わずに皆同じリズムをとりながら楽しそうに身体を揺らし、
中には手渡されたマンドリンを楽しそうに奏でている人もいる。
争いの絶えないこの街にとって、束の間の平穏な時間を
与えてくれているのである。
客席にまで街の一体感が伝わる、微笑ましい光景であった。

また作品全体の特徴の1つとして、
雑踏感と様式美の対比が白鳥の湖やくるみ割り人形、眠れる森の美女といった
三大バレエ以上に明確であることであろう。
力強く賑わい、しばしば喧嘩もある街の場面もあれば、
一変して舞踏会では厳格を貫いた中世らしいゆったりとした踊りのもと
様式美が繰り広げられる場面もある。
1幕冒頭でモンタギュー家とキャピュレット家が争い、
大公が止めに入ったあとは、両家それぞれが1人ずつ中央に歩み寄って
大公を中心に左右対称に並ぶが、
人々が入り乱れた直後であるため、一層厳粛さを感じさせる。
全く異なる雰囲気を味わえるのことはこの作品の醍醐味であろう。

 街の人を踊った直後に貴族に扮するダンサーは切替がさぞ大変なことと思うが、
そう感じさせずに踊りきっているのだから流石である。

本日は学校団体が入って高校生の姿が多く目に付き、
携帯電話の宣伝で流れる曲について話題にしている声を
何度か耳にした。
これを機会に、バレエに関心を持つ生徒さんが1人でも増えてくれたら
嬉しい限りである。

明日はいよいよ楽日、
劇場が誇る黄金ペア・酒井さんと山本さんの登場である。
極上のパートナーシップに期待したい。



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