<正面から見た蔦温泉旅館>
<夕飯は部屋食。かなり豪華。>
昨日、八戸経由で十和田湖の北側、八甲田山の南麓にある蔦温泉へ行った。ここは明治の文筆家大町桂月(おおまち けいげつ)が晩年を過ごした旅館だそうだ。小生、不勉強にも大町桂月の本を読んだことはないが、かなり著名な人のようだ。高知市出身で雅号の「桂月」は桂浜の月を意味するとのこと。
終生、酒と旅を愛したという。(ここは非常に親近感がもてるところだ。)北海道各地を旅行してその魅力を紀行文で紹介し、「層雲峡」の名付け親でもある。しかも、大雪山系には、彼の名にちなんだ桂月岳という山まであるのだそうだ。晩年は朝鮮、満州にまで足を延ばしたという。
十和田湖と奥入瀬をことに愛し、晩年はこの蔦温泉に居住し、1925年(大正14年)4月には本籍も蔦温泉に移した。しかしながら、長年の呑み過ぎが祟ったのか、ほどなく胃潰瘍のため死去。享年57歳。
“終生酒と旅を愛した”人の終(つい)の棲家だけあって、気持ちのいい湯であった。源泉の上に湯船を作っているので、底板の隙間から直接湯が出てくる。このため、刺激が強く湯に馴染まないと実際よりは熱く感じる。しかしながら、だんだんと身体が慣れてくると熱くなく温くなく肌に馴染み、実にいい感じの湯になる。湯上り後もしばらくはホカホカである。
昨晩から今朝にかけて都合五度入ったが、疲れるどころか元気になった。特に今朝はマイナス14℃という、この冬一番の冷え込みであったそうだが、湯に浸かり放題の小生には寒さは無縁であった。
朝めしの後、近くの蔦沼まで散歩に行った。ブナの原生林の中を20分ほど歩くと蔦沼に着く。沼は今朝の気温で見事に凍っている。晴れていれば、八甲田山が沼の奥に見える筈であるが、しんしんと雪が降っていて見えない。この沼の畔に居るのは小生ただひとり。鳥の声さえしない。恐いぐらいの静寂の中、耳をすますと、ギギギィと氷の動く音がする。そこで暇にまかせて数発句。
静かさや 氷の沼に 軋む音
雪の沼 ことり鳴かずに こおりなる
雪深き 音無沼の 鳴き氷
雪深々 無音の沼に 氷啼く
<蔦沼へはブナの林を抜けていく>
<すっかり、凍っている。紅葉の季節は真っ赤になるそうだ。>
写真といい、文章といい、いやー、いいですね。ところでインドの続きもよろしくお願いします。
“インド”は今年中には完結させます。もうちょっと待って下さい。
萬蔵さんの日記も読みごたえ満点。
でも、鳥たちと違って、動くのにアルコールが要りますね。
喫茶の方、缶ビールを物足りなくのむ萬蔵さんの気配を察して、急いで裏口からお酒を買いに行かれたんでしょうね。(笑)暖まって、ご機嫌よく出発なされてこれからは、お燗もメニューに載るかもですね。
喫茶の女将さん、裏口から抜け出たとしても、酒屋も休みのようでした。旦那が夜呑む分を分けてくれたのかもしれません。