萬蔵庵―“知的アスリート”を目指すも挫折多き日々―

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熱投!413球。女子ソフト、執念の金メダル!

2008年08月30日 | 野球


今週の月曜日、NHKスペシャルで北京五輪の女子ソフトチームの快挙を扱った番組が放映された。

「熱闘 413球 女子ソフト・金メダルへの軌跡」

という、2日間で三連投した“豪腕”上野由岐子投手の413球を追った番組だ。リアルタイムでこの試合を見られなかった小生にとっては大変ありがたい番組だった。

まずは、米国との準決勝と豪州との三位決定戦のダブルヘッターの模様。米国戦は互角に戦いながら、延長9回にアメリカの4番、今大会の三冠王「巨漢ブストス」に3ランを打たれ、負けてしまう。5時間後に始まった三位決定戦ももつれにもつれたが、延長12回裏、執念のサヨナラ勝ちで決勝進出を決めた。“金”への望みをなんとか繋いだ。

上野は両試合とも投げきった。二試合で318球。中指の皮がむけてしまう。チームの士気に関わるので、仲間にバレないよう、工夫していたという。

上野は子供の時から“天才”と言われて育ち、彼女の持つ時速119kmの速球は世界最速。投球はこの剛速球頼りで、押し切るスタイルであったが、他のチームには通用しても王者アメリカには通じなかった。

 どうすれば、アメリカを抑えられるか。

が、上野の北京五輪の最大の課題であった。所属チームの宇津木監督のアドバイス「速いだけではマシンと一緒。知恵を使え。」の一言から、従来のライズボールとドロップに加え、シュートを覚えたという。だが、この秘密兵器は研究されないよう、最終戦まで使わず“温存”していた。

最終戦である決勝。相手は王者アメリカ。アメリカに勝つには上野しかいない。

斉藤春香代表監督は上野に聞く。「行けるか?」「もちろんです!」と上野は答を返す。アメリカに勝つために、オリンピックで金を取るためにソフトボールをやってきた。今更、引き下がれない、という強い気持ちが彼女にはあった。

敵のマウンドに立つのは身長187cm。八頭身のプロポーショーンを持つサウスポー、キャサリン・オスターマン。今大会はここまで無失点。まさに、アメリカの大エースだ。武器は「切れのいいライズボール」と「落差のあるドロップ」だ。この組み合わせで攻められると時にボールが“消える”らしい。しかも、前日は1イニングしか投げていないという。318球投げた上野に比べ疲労度という点でもあきらに有利だった。

しかし、難攻不落のオスターマンに対し斉藤監督には秘策があった。彼女の投球のクセを見抜いていたのだ。投球する際の後ろに上げた腕の位置で、ライズかドロップかを判断できるというものだ。位置が低いとライズ、高いとドロップだ。投げる球種が分かればしめたものだ。

上野は疲労と指先のアクシデントを自覚しながらも、「力んではダメだ。回転とコントロールで丁寧に投げて打たせてとる。」ということを言い聞かせながら投げたという。速球投手にこういう心構えでやられたら、大抵の打者は打てない。さすがのアメリカ打線も前半はゼロ行進が続く。

日本は三回、三科のツーベースで動揺したオスターマンから、狩野の内野安打でもぎとるようにして先取点を奪う。4回には女イチローと言われる山田がその細い身体の何処にパワーがあるのか、オスターマンから本塁打で追加点を上げる。だが、さすがにアメリカ。その裏、巨漢ブストスが追撃のソロを放ち、2-1。緊張感は続く。6回裏のピンチ。一死二塁でまたもやブストス。

日本選手はマウンドに集まる。「敬遠か、勝負か。」

 歩かせます。

上野は勝負を避けた。あの時は冷静な自分が見えた、と後述している。結局、一死満塁までピンチが広がるが、ここで踏ん張る。隠し持っていた秘密兵器「シュート」で、ショートフライとセカンドフライに打ち取って逃げ切ったのだ。バットの芯を微妙に外すシュート。その存在を知らなかったアメリカ打線には土壇場にきて、さぞ、有効だったろう。これも作戦勝ちだ。

追いすがるアメリカを振り切るように7回表、日本は1点をもぎとる。迎えた7回裏。ここを抑えれば、金メダルだ。第一打者をショートのファールフライで打ち取る。好捕だった。第2打者はいい当たりのサードライナー。これも前進守備ながら、よく捕った。ファインプレーだ。そして、最後はサードゴロにしとめ、アメリカの五輪4連覇を阻止し、金メダルの栄冠に輝いた。上野の投球数は95球。前日とあわせると実に413球。鉄腕稲尾の再来を思わす豪腕ぶり。あっぱれでした。

思うに、“アメリカに勝つために”という目標に向かって、監督、上野はもとより全員が一致団結して突き進んだ上での快挙であった。つい、星野ジャパンと比べてしまうが、そういう意味では“野球”の方は負けるべくして負けたというしかない。

WBCの監督はトーナメントの戦い方を知っている高校野球か都市対抗野球の監督から選んだ方がいいと思っている。タレント監督、コーチ陣では真剣勝負はできない、というのが小生の見解である。

追伸:この番組のおかげで見逃した五輪の女子ソフトを見ることができた。
   再放送は9月3日(水)深夜0:45~1:34にNHK総合で予定されている。
   見ていない人は是非。感動モノです。
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