曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

『駅は物語る』 1話

2011年04月07日 | 鉄道連載小説
 
「北池袋 その1」
 
 
JRの電車内に貼ってある首都圏の路線図、いったいあれにはいくつ駅が載っているのだろう。星の数と言っては大げさだが、でもそう言いたくなるくらいの数だ。じっくり数えていったって、途中で混乱して正確に数え切れないだろう。しかも、路線図には私鉄も地下鉄も書かれていない。もしすべてを記載したら、路線図は駅名でびっしり埋まってしまうことだろう。そうなればどの駅が何線なのかまったく分からなくなって、案内の体をなさないにちがいない。正直、JRだけだってパッと分かりにくい部分がある。
 
駅は、案内図に記載されているときは、どこも一律同じだ。白抜きのマルに黒字の駅名。世界に名だたる東京駅も、東京都なのに険しい山の上にある無人駅、白丸駅も同じ記載。まったくもって公平な扱い。そこがすばらしいと千路はいつも思う。都会に落ちている寂れた駅を訪ねることを趣味としている千路にとって、路線図の記載は実にうれしいものだった。
 
 
今日彼が訪ねたのは、北池袋駅だった。東武東上線を池袋から乗って、一つ目の駅だ。
 
日曜日、千路は、JRで池袋まで向かうと人混みの中を東上線乗り場まで歩いた。そして各駅停車に乗ると、2分ほど揺られて北池袋駅に降り立った。
狭く暗いホームに降りた千路は、心の中で「オーッ」と歓喜の声をあげた。
 
(つづく)
 

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