つれづれなるまま(小浜正子ブログ)

カリフォルニアから東京に戻り、「カリフォルニアへたれ日記」を改称しました。

農隠廬日記購読会

2012-10-28 18:28:19 | 日記
今日は明治大学で、20世紀前半に活躍した上海の郷紳・王清穆の遺した農隠廬日記の購読会。王清穆は上海近郊の崇明島の人で、清末に科挙に合格して官僚としてのキャリアを歩み出したが、辛亥革命後、中華民国の世になってからは実業界や地方自治で活躍し、時には全国の政局にも介入している。この日記は、たまたま現在一橋大学教員の佐藤仁史さんが上海図書館で発見し、数年前から十人ほどの仲間で購読会を続けている。
線装本スタイルの冊子に細かい毛筆で書かれた日記の内容は、地域での交際や家庭の出来事、企業や地主経営、学校や義倉(救済用食料貯蔵庫)の運営の様子、崇明の自宅から上海・蘇州・南京・無錫・北京などへの旅行と旅先での交遊や交渉など多岐にわたっており、文句なく面白い。じつは王清穆については、民国史の専門家であるメンバーの誰一人としてこの日記を発見するまで知らなかったのだが、知る人ぞ知る実力者で、日記に見える交際相手には民国期の政界実業界教育界などの大物が続々と登場する。(参考:小野寺史郎「農隠廬日記解題と紹介」『近代中国研究彙報』2011。小野寺氏も購読会のメンバーです)
 このようなナマの史料を読み、その解釈について議論するのは歴史家にとって至福の時間である。最初は苦労した毛筆の解読も、やっている内に王清穆の筆跡に慣れてきてほぼわかるようになった。惜しむらくは昨今の大学の忙しさの中で、メンバーが集まって購読会が出来るのは二~三ヶ月に一回が精一杯なことだ。一度に二~三ヶ月分しか進まないので、この調子では全部で二十数年分ある日記を読み終えるには同じだけの時間がかかる計算になる。研究の時間がもっと取れるようになって早く読了できることを切に願う。
 この会は十二時に始めて五時に終わるのがお約束。終了後はいつもの近くの琉球料理屋で飲みながら二次会。これもとても楽しい。

日本上海史研究会で書評

2012-10-27 18:42:24 | 日記
今日は日本大学通信教育部で日本上海史研究会の例会がありました。日本上海史研究会は、1990年の創設以来、近現代上海の都市社会史を専門に勉強してきた会ですが、当初10年間で終了するつもりだったのが、現在まで活発な活動を続けています。この日はメンバーの鈴木将久さんの近著『上海モダニズム』の書評会でした。鈴木さんは中国文学が専門ですが、当初はほとんど歴史家の集まりだったこの会に早くから参加され、一緒に議論を重ねてきました。『上海モダニズム』は、中国のモダニズム文学の歩みをその舞台となった上海の場のあり方の中で論じており、特に日中戦争期の対日協力者とされた文学者達の軌跡を深く分析します。評者は対日協力政権について研究している新進の歴史学者の関智英さん。文学の専門家はもちろん、歴史家にとっても大変教えられるところの多い面白い本で、様々な角度からの議論がはずみました。
終了後、近くの上海飯店で二次会。ただしここは水道橋に店を構えて久しく、完全に日本化した上海料理です。岩波茂雄が好んだという「社長豆腐」などの「招牌菜(名物料理)」を肴に、さらに話が弾みました。

現代中国学会全国大会

2012-10-21 13:06:46 | 日記
この土日は、一橋大学で現代中国学会の大会があり、<ジェンダー>に関する特別分科会を企画し報告しました。
土曜の共通論題のシンポジウムは<中国社会とメディア・コミュニケーション>がテーマでしたが、基調報告をする予定の中国の研究者が、日中関係悪化のためビザが取れず(中国側が申請させないため)来日できませんでした。しかし報告を代読した後、上海と会場とをSkypeでつないで質疑と討論を行い、テーマ通りのメディア・コミュニケーションの発達によって国境をこえることが可能になったことを実感しました。
現在、日中間の学術交流の集まりに中国人が来日できない事態があちこちで起こっています(来日できているケースもあるので、状況はいろいろです)。しかし図らずも今回は、実際に来日しなくてもリアルタイムでの議論を可能にする技術の進歩を皆が知ることにもなりました。障碍を乗り越えて交流を継続する方法は、いろいろ開発の余地がありそうです。
日曜には、<ジェンダー>の特別分科会を企画し、中国研究の様々な課題にジェンダー視点からの分析を内在化させる必要を訴えました。特別分科会は「現代中国におけるジェンダー・生育・人々の絆」をテーマとして、出産をめぐ(って変化す)る人間関係を様々な側面からジェンダー視点を持って分析する三つの報告を準備しました。私は、この間のフィールド調査から、中国の家族形態とそれに対する考え方が、都市と農村における「一人っ子政策」による少子化の中で変化していることを紹介しました。現在では農村でも「子供は娘だけでよい」という人が珍しくなくなっており、女系の家族関係も重要性を増しています。
大会後、「自分のフィールド調査にもジェンダー視点を加える必要を痛感した」という感想を得て、特別分科会を企画した甲斐あり。
夜は分科会関係者と国立駅近くの店で打ち上げでした。おいしいお酒と料理を楽しみながら、さらに中国ジェンダー研究を発展させる戦略を相談。この後も、いろいろ企画します!

日中関係などに関する市民のアピール

2012-10-08 15:51:52 | 日記
日中関係に関して、中国の知識人らが「中日関係に理性を取り戻そう」という呼びかけを始め、ネット上で署名者が拡大しています。(2012年10月4日 呼びかけ人:崔衛平)
http://blog.sina.com.cn/cuiweiping
これは、「「領土問題」の悪循環を止めよう!」という日本の市民のアピールに応えたものです。(2012年9月28日 許すな!憲法改悪・市民連絡会発起)
http://www.annie.ne.jp/~kenpou/seimei/seimei165.html
このような理性的な良性の循環が発達するよう祈らずにおれません。

ゼミ合宿

2012-10-01 17:37:34 | 日記

ゼミ合宿を9月末の週末に日本大学軽井沢研修所で行いました。
今年は4年生は昨年留学していた一名のみ(昨年私がサバティカルだったため)で、あとは3年生。4年生の卒論発表、3年生の研究発表、課題図書の購読と盛りだくさんの勉強をこなし、夜は遅くまで懇親会。
3年生の研究発表は、パワーポイントを使って報告してもらいましたが、みな様々な「ワザ」を駆使して上手に報告するのに感嘆!(普段のゼミ報告は紙のレジュメだけしか使いません。中身より「ワザ」を鍛えることに気持ちが向かわないように) 課題図書は、現在問題になっている日中関係に関わるものだったので、議論がたいへん盛り上がりました。
軽井沢研修所は、ほとんどの人が初めてでしたが、高原の素晴らしい自然の中でのびのびと森林浴しながら勉強でき、広々した施設やバイキング形式の食事にも大満足だったようです。私は3年振りで、久々に軽井沢の雰囲気を楽しみました。
2日目、勉強が終わって皆で信州蕎麦に舌鼓を打ってから解散。私は雲場池まで散歩して水辺で遊ぶ鴨を眺め、帰り道でにわか雨に降られて道端の喫茶店でコーヒーを飲みながら雨宿り。毎日営業は9月末の今日までで、10月からは週末のみの営業になるそうです。夏の終わりの軽井沢でした。