木内孝氏の言(抜粋)
[6つの間違い]
今いろいろな機会があって日本から何かを発信するときに、
私たちは少なくとも6つの間違いを起こしていると
思うというのが導入部分です。
何が6つかと申しますと、
1つ目はとにかく成長しろ、大きくなれ、拡大しろ、
欲しがれ、使え、つくれ、稼げ、競争して相手を倒せ、
使い果たせ、捨てろ、消費は美徳、
この考えは正しくないと言うことです。
アメリカのエネルギー庁の年次総会に呼ばれて、
「足るを知る」というテーマで40分 講演をしたことがあります。
そうしたら終わった時、
アメリカのご婦人が6人壇上に来て抱きついてくれました。
そうなんだ。自分のところの政府があなたのところの政府に
消費水準を上げろとか何とか言っているのは間違いなんだ。
少なくともアメリカにも「足るを知る」ことが大切と
思っている私たちがいるということを、あなたは知ってね、
日本へ帰ったらそれを伝えてねといって、
私に抱きついてくれたおばさんたちがいたんです。
カルチュラル・クリエイティブスです。
全く大きなお世話ですよ、他人の国の消費水準を上げろとか何か言うのは。
私たちは年2%位のデフレで結構。デフレの話は後で致しますが、
消費は美徳じゃないということをまず知る必要があります。
2つ目はどうしてこんなに自分だけよければいいという社会を
つくっちゃったんでしょうか。
お金と物にどうしてこんなにどん欲な日本人になっちゃったんですか。
これを直さなくちゃいけないというのが2つ目。
3つ目は、この地球環境というのは母なるメイン・システムなんだ。
メイン・システム を私たちは壊すことはできても、
つくることはできないんだということをよく考えたい。
経済とか社会はサブ・システムです。
4つ目は値段。
ガソリンが1リットル105円なんてとんでもない価格です。
ほんとうは480円ぐらい払うべきものなんです。
ダイレクト・コストだけを払って、
後のコストは全部次の世代にツケにしている、
これを直さなくちゃいけない。
これはメアリー大学の研究グループが計算したんですが、
今の4.5倍くらい払わなくちゃ、
ガソリンのほんとうのコストというのは償われない。
みんな地球環境へのツケにして先送りしているんです。
5つ目はG.D.P.です。G.D.P.ほど人を迷わすものはないです。
2%上がったらみん なハッピーなんてとんでもない。
私たちの生活とか、幸せに関係ないとお思いになりませんか。
教育の質とか安全性とか。
一体G.D.P.って何なんでしょう。
サイモン・クズネッツさんが1937年だか38年だかに、
アメリカの工業力とドイツの工業力を比較するためにつくった尺度です。
そんなもので今の我々の生活とか経済とかを測られちゃたまらない。
しかも、犯罪とか事故とか訴訟の費用とか、
嫌な話が全部G.D.P.の中に入っているんです。
ロバート・ケネディさんが、
人生にとって大切なものはG.D.P.に何も入ってないんだ。
すばらしい結婚だとか連帯感だとか、
裁判所で正しい裁判が行われるとか、
子供の健康、教育の質、きれいな工場、ゴミのない町等々
何項目も挙げて演説をしたのがもう40年前。
それなのにちっともG.D.P.に代わる新しい尺度を
紹介しようという努力をしないから怒っている訳です。
私どもはジェニュイン・プログレス・インディケーター(G.P.I.)
というのをちゃんと計算して、
少なくともG.D.P.と併用しましょうという提案をしてます。
それから最後の6つ目は、ウィストン・チャーチルじゃないですが、
今の多数が賛成す れば法律になるという、
この制度を変えなくちゃいけないと思うことです。
何故なら我々日本人は people だからです。
Untaughtこれはどうしても日本の新聞は書いてくれない言葉です。
1億2,600万の日本人はこう言われているんです。
Untaught people、
知らない、知らされてない、知ろうとしない国民と言うことです。
3年前の8月の英国の『エコノミスト』誌を見て下さい。
1億2,600万の日本人は
Untaught people なんだとハッキリ書いてあります。
日本は学校よりもメディアが問題だと、私は深刻にそう思います。
メディアが知らせないんだから。
日本はメディアを直さない限り Untaught people のままです。
何が人間にとって可能なのか、
ほかの国ではどうなっているんだと言うことを知らされていない。
例えばヨーロッパのある国では、
ちゃんと選挙で投票しなかったら市民権が維持できないんです。
パスポートがもらえないんです。
そういう国でありたいと思います。
投票しなかったらパスポートはもらえないという、
そういう国があるということも知らせてくれない。
そういうことだらけです。
日本が今のままどんどん国債を発行していって、
どんどん借金を増やしていってどうなるか。
国が破産するというのはどういうことかと尋ねて
即座に答えられない人が多い。
トルコとアルゼンチン、次は日本だと言います。
日本が破産したら、じゃあ、どういう状態になるんだと、
みんな知らないんです。
無責任に自分は世界一の借金王だなんて言って、
ハハハなんて笑っていられる首相がいるんです。
とんでもない話です。
あのときに若者が立ち上がって学生運動を起こして、敢然と闘わなくちゃ。
だれも何も言わないこの日本、
どうなっているんでしょう。