もう、数年前のことになるが、速読だか速聴の教材で付いてた物語で強く感銘を受けてしまった
これを読んだとき、当時の自分の上司に
「ほんとすまないことをした」
と後悔の念が強烈に走った
責任を人に預けたようなお手伝いのような仕事をしていたんだ
その物語を「ガルシアへの手紙」という
この場を借りてその全文を紹介しよう
原著の著作権は切れており、この訳者は著作権を主張しないと言っている
ガルシアへの手紙
キューバ事件(※1)に関するあらゆる事柄の中で、ある人物の存在が、私の記憶の中では、火星が大接近してきたときのごとくはっきりと抜きんでている。
かつてスペインと合衆国の間に戦争が起こったとき、早急に反乱軍のリーダーと連絡を取らなければならなくなったことがある。
その男ガルシア(※2)は、キューバの山奥のどこかにいるとのことだったが、誰もその所在を知るものはいなかった。
郵便も電報も、ガルシアの元へは届かなかった。だが大統領(※3)はなんとしてもガルシアの協力を取り付けなければならなかった。しかも早急にだ。
どうすればいいのだ!
誰かが大統領に進言した。
「ローワン(※4)というものがいます。彼ならば必ずや大統領のためにガルシアを見つけてくれるでしょう。」
ローワンは呼び出され、ガルシアに配達されるべき手紙を渡された。
「ローワンという名の男」がいかにして手紙を受け取り、防水袋に密封し、胸の所に革ひもでくくりつけ、四日後の夜に単身ボートにてキューバの海岸に近づき、ジャングルに姿を消し、そして三週間後にキューバ島の別の海岸に姿を現したのか、つまり、いかにして敵地を自分の足だけを頼りに横切って、ガルシアに手紙を配達したのか、その詳細をここに書き記すことは私の本意とするところではない。
ここで述べたいのは以下の点である:
…つづく