水川青話 by Yuko Kato

時事ネタやエンタテインメントなどの話題を。タイトルは勝海舟の「氷川清話」のもじりです。

イラクと幕末

2004-10-06 15:51:11 | ニュースあれこれ
2004-09-22 初出

イラクで次々と外国人が殺されている(もちろんそれ以前に、膨大な数のイラク人が殺されているわけだが)。

16日に拉致された米英人3人のうち、アメリカ人2人が殺されたというニュースを読んでいて、改めて、幕末日本を思った。

日本人としては、当時の攘夷派志士たちと、今イラクで外国人を拉致しては殺している武装グループを同列にしたくない気持ちは強い。日本人としては、攘夷派志士たちと、「タウヒード・ワ・ジハード」のテロリストたちとでは、やってることもその動機も全く違うと言いたい、その気持ちは強い(イラク人側からしたって、幕末のあんたたちと今の自分たちとでは、置かれてる状況がまるで違うと言いたいだろうし。「タウヒード・ワ・ジハード」を率いているとされるザルカウィはヨルダン人だけど)。

でも、アーネスト・サトウたちの日記を読むと、そこには別の視点がある。

サトウや、リーズデール卿ABミットフォードの日記を読むと、生麦事件や東禅寺事件(英国公使館襲撃)などの外国人殺害が、どれだけ彼らにとって深刻な事態だったかが、ひしひしと伝わってくる。サトウの日記も前半は特に、一連の外国人襲撃を中心に、いろんな出来事が展開している感じだ。

日本人として幕末史を学ぶと、ほかにも重要なことがたくさんありすぎて、外国人襲撃を最大重要事項のひとつに位置づけないと思うけど、非・日本人の目で当時を眺めると、全く違う日本の姿が浮かび上がってくる。

大小の刀を差した武士が外国人にとってどれだけ恐ろしい存在か、サトウは何度も強調している。大小をカラシニコフに置き換えれば、今のイラクでの状況と何も変わらない。

それでも欧米人は幕末日本を訪れた。ビジネスチャンスを求めて。そして今、大勢の外国人がビジネスチャンスを求めてイラクにいる。いつ自分が拉致されて首を斬られないとも限らないのに。

私は全く持ち合わせていない指向性やエネルギーなので、価値判断は完全に抜きにして、単純にすごいことだと思う。外へ外へと向かっていくそういうエネルギーがなかったら、人類はいまだに洞窟の中で暮らしてたんだろうか。