夏に

夏が視ている
ジリジリと
きつい視線を
背中に感じる

眼をあげることも
できずに
私はうなだれて
歩いている

私を視るな
私はおのれを
恥じるばかり
わかっているから
耐えていけない

ポッカリと
ほがらかに咲く
ひまわりのかげに
身をひそめよう
小さくなって
隠れていよう

ひまわりのかげで
私は緑にそまるだろうか
私はひともとの雑草に
なってしまえるだろうか

そうしたら
一生懸命
小さい花を
咲かせるのに

ほがらかな
ひまわりのかげに
さびしい白い
小さな花を

つみとらないで

蝶

もんしろちょうが
ちいさな　はねを　ふるわせて
てばたしんごうを
おくりつづける
だれに　むかって
なにに　むかって

生きている　よろこびを
うたって　いるの？

けし

くびを　かしげて
はるの　ゆめを　みています
いつか　蝶に　なって
ゆっくりと　はねを　ひろげます

ゆめの　花だから
きけんの　かおりが　します
ゆめの　果実だから
あなたを　とりこに　します

もう　わたしから
はなれられない　
はずです

ただ、いちにち

たった　いちにち
ことばをもたずに
くらせぬものか

ことばの根っこを
ほりおこして
じっとながめて
いられぬものか

あの人にはこのことばを
この人にはあのことばを
言っていいこといけないこと

もう
たくさん

黙ってしまえ

朝

まっさらの朝にむかって
深呼吸をひとおつ

やさしい気持ちになれるよ
すがしい気持ちになれるよ
うらやむ気持ちを捨てられるよ
鏡にむかって
笑えるよ
何よりも
私というものを
愛せるよ

できたての朝に
抱かれて

シクラメン

小さなかがり火をたいて
あなたの帰りを待っています

こんな小さな炎ですが
命をもやしているのです

こんな小さな炎ですが
あなたの心を
照らせます