りなりあ

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約束を抱いて:番外編-幸せへの願い-1

2007-03-17 22:57:25 | 約束を抱いて 番外編

◇杏依◇

今日が来るのが楽しみで、とても待ち遠しかった。

窓に近づくと、白い雪が舞っている。
朝から温度が上がらず、午後の一番暖かい時間なのに、外の空気はとても冷たそうだ。
そろそろ、むつみちゃん達が到着するだろうから、本邸に移動しようと思ってリビングを出た。
私と晴己君が住む別邸と、晴己君の両親が住む本邸は、歩いて10分ほど離れている。
気候の良い時はウロウロと周囲の草花を見たいから、私が1人だと10分以上歩いてしまう。
だけど今日みたいに寒い日は、ちょっと急ぎ足で歩いた方がいいかも。
のんびりしていたら、晴己君の耳に入って、後で小言を言われちゃう。
コートを着て、マフラーを首に巻いて。
雪が本格的に降る前に、本邸に移動しなきゃ。
この10分の距離に、外気温に左右されないように別邸と本邸を繋ぐ大きな廊下を作ろうと、そんな話を真剣に計画しようとしていた晴己君は、変だと思う。
この庭は、多くの人達の手によって作り上げられた庭。
そして、毎日毎日、丁寧に手入れされている庭。
訪れる人が賛辞を述べてくれる自然があふれる庭に、突然妙な通路が出来るなんて、変だわ。
もちろん、晴己君が“私達”の為に計画してくれた事だと分かっているけれど、この庭の景観を損ねることはして欲しくなかった。
お腹に宿る命を驚かせないように、防寒に気をつけて私は本邸に向かった。

◇◇◇

並んでいる料理を見て私は首を傾げた。
今日は、クリスマスイヴで、むつみちゃん達と食事をする事になっている。
今日の事を提案したのは晴己君だから、むつみちゃん達の事を素直に認めてあげればいいのに。
どうして、テストの結果が良ければ認めてあげる、なんて言ったのかしら?
むつみちゃんが橋元君を好きなことは、見ていれば分かる。
引き返す事など、無理だと思う。
だけど、私も複雑な想いを抱えているのは事実だ。
どうして、むつみちゃんが涙を流すの?
悲しい思いをするの?
もっともっと、あの子には笑って欲しい。
泣かないで悲しまないで我慢しないで。
それに、むつみちゃんの愛情が彼1人に向かっていて、ちょっと悔しい、かも。
むつみちゃんの料理を美味しそうに食べていた姿は、彼がむつみちゃんを独り占めしていることを表している気がして、ちょっと寂しくなっちゃう。
再び料理を見渡して、足りない物が何か、ようやく分かる。
「クリスマスケーキ…かぁ…。」
甘い物を禁止されている私に見せない為に、どこかに隠しているのかしら?
橋元君にも見せる訳にはいかないから、ケーキはどうするのかしら?
私だって、ケーキを目の前にして食べられないなんて、精神的に悪いけれど、クリスマスにはケーキが大切な存在で。
どうしよう?
まさか、まさか?
私と橋元君が原因で、今夜はケーキがない、とか?
それは、他の皆様に申し訳ないし、とっても寂しい。
うーん、どうしよう?
1人で考えていても楽しくないし、難しい。
むつみちゃんなら、晴己君が許してくれるケーキを考えてくれるはず。
早く来て欲しいな。
会いたいな。


                    ◇涼◇へ続く



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