南英世の 「くろねこ日記」

利己的な遺伝子

 

500ページを超える大著(2006年)である。

もともと利己的な遺伝子という考え方はダーウィンの考え方である。「われわれは生存機械ー遺伝子というのあの利己的な分子を保存するべく盲目的にプログラムされたロボット機械なのだ」。しかし、その一方で利他的な行動をすることもある。

たとえば、働きバチがひたすら女王の子孫のために働くのはその例である。働きバチは遺伝的には雌であるにもかかわらず、自ら卵を産み育てることをせず、もっぱら妹の養育に専念する。しかも、ひとたび巣が危険にさらされると、働きバチたちは自らの命を投げ出して巣の防衛にあたる。刺すという行為で針と共に内臓がもぎ取られてしまう。こうした利他的な行動はなぜ進化しえたのか。

人間も動物であるが、人間はほかの動物と違って文化によっ利他的に行動することを学習する。最近、民族主義や愛国心に反対して、仲間意識の対象を人間の種全体に置き換えようとする傾向が出てきた。どのレベルでの利他主義が望ましいのか。家族か、国家か、人種か、それとも全生物か。

動物が子孫を残す仕掛けには「ハーレム制」「一夫一婦制」「乱婚」などいろいろある。通常一頭の雄は莫大な量の精子を簡単に作るから、雌100頭くらいのハーレムを作ることもできる。実際にゾウアザラシは、4%の雄が交尾例の88%を達成しているという。

人間は通常一夫一婦制である。しかし、男はよく浮気をし「乱婚」もどきの行為に及ぶ。これは、男は毎日莫大な数の精子を作るので、できるだけ多くの性交渉を行うことで大いに利益を上げることができるからである。一方、女は限られた数の卵子をゆっくり作り出すので、やたら性交渉を重ねても利益はない。

面白い本である。

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