覚書あれこれ

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『トロイ・ザ・ウォーズ』感想(1)

2007年04月04日 | 映画

全体的に…

『トロイ』は公開時に見たのですが、今回こうして『トロイ・ザ・ウォーズ』の方と見比べてみて、なぜか”『トロイ』の方が『イーリアス』らしい”と感じてしまいました。設定等変更になった点が多々あるし、神々も出てこないのに…。
おそらく、『トロイ』の方が、全てを最初から最後まで描くのではなく、テーマを持ち、そのテーマにそってエピソードを効果的に配置する、という手法が多少なりともとられていると感じるからだろうと思います。また、『トロイ』が群像劇で、あえてアキレウス一人に絞らずにヘクトールやパリスなどの方にも重点を置いたのは、そのことによりアキレウスの放つ個性がより一層輝くからだと思うのです。物語そのものよりも、ストーリーを媒体にして、それぞれの登場人物の存在や内面を浮き上がらせるのが『トロイ』の描き方ではないかと。
 対して、『トロイ・ザ・ウォーズ』の方は、より話の筋そのものを表現する事に力が入れられているように感じました。原題の「HELENofTROY」のとおり、ヘレンという女を中心に、トロイア戦争の最初から最後までをざっと紹介する一作、というか。当時の観念や哲学などを画面で説明するのは大変なので現代風に分かりやすい解釈を加えつつ(トロイ侵攻の理由とか、パリスがヘレネーをかばう理由とか)簡単にまとめてみました、といった感じ。トロイア戦争関連について全く何も知らない人は、こちらを見たほうが全体を把握しやすいかも。(後半になるにつれ大幅にずれていくんだけど)


とまあ、かしこまった事はこのあたりにしておいて、まずわたしは声を大にして叫びたい

あのアキレウスはなんじゃーー!!!!!

(アキレウスの扱いに関しても、『トロイ』の方が『イーリアス』っぽい!イマイチ登場人物が全体的に精彩を欠く叙事詩の環にしたって、ここまでひどくないぞ!!)

初登場時、画面中央にぬっとあらわれたハゲを見て、あたしゃびっくりして目をむきましたよ!
事前に『スキンヘッド』という情報は得てましたが、それにしたってごつすぎる!
でも、この時点ではまだ「いくらハゲでもアキレウスらしく振舞ってくれるなら別にいい」と、割合寛大な心でおったのです。
しかーし!!物語が進むにつれ、目立つ粗野な言動!単なる野蛮人のようなものの考え方!!ヘクトールを殺すシーンにいたっては…(絶句)(本物ならあんな不意打ちでやるもんかー!)

お前、ホントはアイアースだろ?!製作のアメリカ人が名前間違ってるんだよな??怒らないから、正直に言ってごらん?

と、何度心の中でツッコんだ事か。
そりゃまあ、原作の方でだって結果的に残忍な振る舞いに及ぶこともあるアキレウスですが、あれは本人の理想と、正義感と、激しい気性に裏打ちされているのですよ!単なる血に飢えた人じゃないんじゃい!
それとも、『イーリアス』に史実があるなら、実はこんなだったんだよ?というコンセプトを目指して、わざと大幅に人物設定を変えてあるの??どうなんだ、コラアメリカ人!

…失礼、あまりのハゲマッチョのショックに少々取り乱してしまいましたが、ほんと、人の解釈は万別だなあ、としみじみ感じ入った映画でございました。

とはいえ、メネラオスやアガメムノンの造詣は面白かったの。

 メネラオスは『トロイ』より断然こちらの方が好意的に描かれてました。兄の影から逃れたいといつも思っている永遠の片思い男(気の毒に…)。でも、彼の愛は純粋だ。

 ヘレネーの造詣は、…『黒の李氷』シリーズで見た楊貴妃がこんな女だったな…などと思い出してしまいました。洋の東西を問わず傾国の美女というとそういうイメージなのかしら。本人の意識しない媚態に男どもが狂わされていく、というか。無邪気な娘だったヘレネーが愛を知り徐々に強くなっていくところなどはとてもよかった。

 パリスは、…アメリカ人の好きそうな主人公像だなーと…(それだけかい!)
 
 しかし!散々なことをいってきましたが、全てを帳消しにしてもいいくらい愁眉だったのが

アガメムノン

彼でございます!

…素敵だったわ…。

多分、この映画で俗に言うところの悪役に当たると人だと思うのですが、『トロイ』のようなただの悪い人でなく、ヘレネーに対する屈折した根深い欲望や、愛する娘を手にかけた自責の念など、(←思い切りそれって自業自得なんですが、それでも悲嘆の念は本物なのです。)心の揺れが良かった。
しかし自分の弱さを認めることの出来ないアガメムノン。自己を責めたらもうこの人の精神、土台から揺らいでしまうので、憎しみを周囲へと転嫁してしまうのですよね。
ヘレネーはその標的にされてしまったようなところがあって、パリスとヘレネーやパリスとメネラオスより、この二人の関係が一番こゆくてスリリングでした。

そして、妻のクリュタイムネストラー。最後の最後は圧巻でした。彼女の行動が初めて無理なくすんなり納得できた。これまでの”アイギストスと浮気して云々”は、イマイチ説得力に欠けていて、『あほな女やなあ』ほどの印象しかなかったのですが。
あの夫婦の最後の場面、物凄くどきどきしました…。
カッサンドラーとクリュタイムネストラーはこの映画における
精神的なギリギリ度上位ランキングのツートップでしょう。


お遊びで、以下、『イーリアス』の登場人物たちによる『トロイ・ザ・ウォーズ』の自分の役に対する感想。

メネラオス


アキレウス



パリス



オデュッセウス



ヘクトール



アテナとアポロン

 

以上。お目汚しはご容赦くださいませ。

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