背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

冬は、スポ根 【1】

2009年01月25日 05時10分57秒 | 【図書館危機】以降

「球技大会をやる」

玄田の第一声に、特殊部隊の面子はぽかんとなった。

「は? 隊長、今なんと……」

堂上が聞き返す間もなく、

「球技大会だ。種目はバレーだな。うん、バレーボール大会を主催するぞ。紅白戦だ」
「え? 仰っている意味がよく……」
「堂上、お前紅組の監督やれ。俺は白な。
メンバーは後で勝手に俺が割り振っとくから」
「ち、ちょっと待ってください。なんですか、俺が監督って」
「ん? なんだお前も選手で出たいのか。だったら監督兼選手でもいいぞ。フルタみたいにな。【代打、オレ】って、あれやってみろ」
わはは。豪快に笑う。
かつてのセ・リーグの雄。ヤクルトの球団のことを知ってる輩はほとんどいないだろう。内心そう突っ込みつつ堂上は椅子から腰を浮かしかけた。デスクに両手を突く。
「そう言うことを言ってるんじゃありませんっ。なんでいきなり球技大会でバレーなんですか。広報部からお願いでもあったんですか」
「いや。そんなもんはない」
あっさりと玄田は否定。
「じゃあなんで?」
「ま。簡単に言や、思いつきだな」
「――」
絶句する堂上。
お構いなしに玄田は、「最近身体を動かすでかいヤマもないし、お前ら、なまってるからなー。それに、運動は気分転換になるしな」と言って筋骨隆々とした腕を組んだ。
「開催は一週間後な。体育館、使用許可取っておけよ、お前」
「~~~隊長~~~」
「ん? なんか不満か。ああそうか、大会って銘打つからには、なんか賞品がねえと燃えないもんな。
しようがない。じゃあ優勝チームには、とっときの副賞を与えよう!」
玄田は豪語した。そして……


「……そう言う訳だったの」
帰寮の道すがら、郁と一緒になった柴崎は、話を聞き終えようやく合点がいったというように頷いた。
「だからウチの上司、月曜の夜、予定空けておくようになんて言ったんだ。なるほどね」
郁は幾分猫背気味に歩きながら、道端の石っころを蹴った。
「副賞が業務部の独身女子との合コンセット、って隊長が言ったらさー。俄然みんなノリノリなんだよ。いきなり、それはいい、是非やりましょう、とか言ってさ。どういうんだろ、あれ」
口を尖らしている。
柴崎は忍び笑いを漏らした。
「仕方ないわよ、男なんて単純だもの」
「堂上教官は違うよ、それでも食ってかかってたもん」
「あーはいはい、そうね。あんたの教官は合コンでつられるほど安い男じゃないもんね」
「いやそう言う意味じゃなく……っ。
大体、うちの男連中のお目当てはあんたなんだからね、柴崎」
「えーあたしィ?」
「そうだよ、業務部ってことは合コンに柴崎さんも来ますよね、来るンですよね、来ないと許しませんよってみんな隊長に詰め寄ってたもん」
ジト目で柴崎を掬い上げる。
郁のほうが身長があるせいで、それは難しい仕草となったが。
柴崎はかったるそうに頬にかかった髪を後ろに払った。
「あーマジでうざいかも。そういうの。
お声はかかったけど、パスって選択肢、ありだわよね」
「それだとみんなのモチベーション下がるよ。もうすっかり乗り気だもん」
「だってあたし行けるなんて回答してないし? 大体業務命令でもないんでしょ?合コン出席は」
「そりゃそうだけどォ……」
「でも、面白そうな話ではあるわよね。タスクフォースのバレーボール大会自体は、見たいっていうか、応援に行きたいかも」
きらん、と黒目勝ちの目が光る。
「あんただって出るんでしょ、その身長をあますところなく生かすチャンスだもんね」
「悪かったな! まだ誰がどのチームか隊長から振り分け出てないから、出るかどうかは分からないよ」
「あたしが監督だったら、出すね、絶対。
あんたスポ根、むちゃくちゃに合いそうだもん」
「そうかなあ」
「レギュラー獲れるといいわね、笠原」
にっこりと誰もが見とれる笑みを浮かべる。郁は思わず吹き出した。
「だから、スポ根モノのマネージャーみないなこと言わないでって」
そのとき、あ、と柴崎が何かを思い出したかのように小さく言った。
「どうかした? 柴崎」
「ううん、なんでもない」
柴崎は首を横に振った。が、頭の片隅に浮かんだことを、心の中で反芻した。
そうか、……特殊部隊ってことは、当然あの男も出るわよね。
あれだけの運動神経と、身長を誇るやつだもの。
……。
「来週の日曜だったわよね。あたし、応援行こうかな」
ぽつんと呟く。
「ってことは、合コンも?」
「出てもいっかな、ぐらいにはなってきた」
もちろん玄田隊長の財布から参加代は出るんならね。と如才なく付け足しながら。
郁はどういう風の吹き回し? と怪訝そうな顔で柴崎を見やる。
それを上手にあしらって、片目を優雅に瞑ってみせる。
「だって面白そうなんだもの。一見の価値アリ、でしょ」
「物見遊山か」
「まあ、そんなとこね」


かくして、業務部の華、柴崎の合コン参加が表明されるや、完全に特殊部隊の若手の面々はいきりたった。まだ割り振りもされていないのに、打倒白組、赤組と連呼して、トレーニングに出て行く始末。
後日玄田から出された紅白戦、チーム割の主だったメンバーは以下の通り。

赤組 堂上監督

手塚
進藤
緒形

以下血気盛んな大会当日非番の男子部員複数。



白組 玄田監督

小牧
笠原

こちらも同じく、当日非番の男子部員複数名。

むろん、監督は選手を兼ねてもいいということで。
自軍ピンチの際は、堂上の投入もじゅうぶんにありえた。
そして、奥の手ちゅうの奥の手、白組では玄田監督の投入さえも……。

ある意味、部隊を超えて、図書隊に勤務する者の注目を集めに集めて、
第一回、玄田盃・親睦バレーボール大会の開催が決定した。

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3 コメント

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なんでバレボーかというと、、 (安達)
2009-01-25 06:23:25
管理人がそれなら(それしか)ルールが分かる種目だからです。笑
あとは細かいところ、分からんデス。。。
返信する
春は花粉症、 (MIO)
2009-01-25 13:31:56
冬はスポ根(笑)。
お題がリンクしてて、「あださん版枕草子だ~v」とニヤニヤしちゃいました。
アチラの新連載も気になりますが(ついにあの人がッ)、コチラのバレーボール大会も目が離せません!どう転がってくのかがホントに想像つかず、ワクワクしてますv
片手を袖から抜いて猪熊コーチ&鮎原ごっこをした世代として(←今なら規制入りそうなキャラだったな)、あんなノリの堂郁が見てみたい気がしますが、敵チームかあ。あ、玄田がモロそれか(笑)。
うーん、手柴がメインのあださんサイトでこの材料をどう料理されるのか、全く読めません☆
続きが非常に楽しみですvvv

返信する
そうなんです。 (安達)
2009-01-26 04:38:37
枕草子をもじってタイトルつけたんです。気がついてくださって有難うございます。
なんだかおばかみたいにみんなでわいわいやる話が書きたくなってこんな分野に着手してしまいました。ある意味、新境地です(って自分で言うな)。笑

裏連載ともにお楽しみいただけたら光栄です。
アタック○○1は、残念ながら見てないのですが。。。。バレーモノなら、りぼんの佐々木潤子さんの「エース!」とかかなー(古)
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