背中合わせの二人

有川浩氏作【図書館戦争】手塚×柴崎メインの二次創作ブログ 最近はCJの二次がメイン

安心

2009年07月09日 04時42分41秒 | WEB拍手お礼SS収納庫
「あ」

堂上教官の後ろを通りかかった郁が、うっかり声を漏らす。
「なんだ?」
キャスターつきの椅子を軋ませて、堂上が振り向いた。
「いえ。たいしたことでは」
郁は、言おうか言うまいか一瞬悩んで、結局、
「その、教官……。白髪が」
一本だけ。見つけてしまった。
こめかみの上辺り。

堂上は何だ、そんなことか。と言いかけたが思い直し、台詞を変える。
深々とため息をついた。
「俺も常々苦労させられてるからなあ、局地的、限定的なメンバーに」
ぎく。
身を硬くしたのは、もちろん部下の郁と手塚。
わははは! と野太い笑い声がそこへ乱入。
「聞いたか、励めよ。お前ら。
少しでも堂上の心労を減らしてやらにゃあ、すぐに禿げちまうぞ」
「てか、隊長が一番の苦労の種なんです! 自分を棚に上げるってのはどういう了見だ。
しかも、不吉なこと言わんでください!」
「まあまあ。かっかしないで。
安心しなよ、堂上。若白髪が生えると、ゆくゆくの頭髪の心配は少ないらしいよ」
くつくつ笑いをこらえながらとりなしに入る小牧。
堂上は無意識にこめかみの上らへんに手をやる。
「あ、ああ、そう聞くな」
迷信かもしれんが。そう続けようとしたとき、
「だってよ、よかったね、笠原さん。安心だ」
にっこり。意味深な微笑み。
「え? あ、あたし?」
郁がきょとんとする。
小牧と玄田が意味深な目配せをする。
「な、なんであたしが安心なんですか? え?」
「〜〜〜なんでもないっ。お前は真面目に考え込むな! ただのからかいだ、流せ」
「は、はいっ」
郁があたふたとデスクに戻る。
??? なんなの、今のは。しきりと郁の頭に疑問符が浮かぶ。
つくったような仏頂面の堂上を見て、さらに上戸にはまる小牧と玄田が、ますます彼の怒りを呼んだのは言うまでもない。


これはまだ、堂上と郁が思いを伝え合う前のお話。

(2009・5・2)

※珍しく堂郁もの。柴崎さん出番なくてごめんなさい。



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