沢木耕太郎 深夜特急ノート「旅する力」に寄せて

2008年12月05日 | 読書
 久しぶりに沢木耕太郎氏の本を読んだ。
 20代の頃にいくつもの作品にのめりこみ、彼の文章が自分の体験のような気がしたほどだった。深夜特急のインドの香りに、カシアス内藤の目に、沢木氏のフィルターを通した表現に入り込み、自分も沢木氏のような感覚を身につけられたらと憧れた。
 
 そんな20代から30代になりいつの間にか沢木氏とは、離れていってしまった。たぶん自分の旅を探して必死だった時期だったのかもしれない。
 久しぶりに、沢木氏の文章に接して今も尚、旅を続けている氏のあの頃の気持ちを知って、また私も何か動かなければと思わされた。気持ちが体が自然に動ける20代とはちがうけれど、今だからできる何かがあるような気持ちにさせられて、少しうろたえている。

 言葉は魔物で、心は言葉によって変わることもできる。
 今、身近に居る人は、強い言葉を発する、強い心の持ち主だが、それを支えているこちらはまだ弱くてたまに押しつぶされそうになる。
 何処かへ、何かへ導いてくれた沢木氏の世界は、私の居るところとはかなり違うがその強さ、頑固さは、今身近に居る人と通じているようで、不思議である。
 憧れがもし現実になったら、また夢を追いかけられるのだろうか・・・
 あの頃と同じように走り回って、足掻いて苦しい中から何かを見つけられるのだろうか・・?