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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

トレーニング・デイ(V)

2008-08-10 22:44:30 | 映画(た)
評価点:83点/2001年/アメリカ

監督:アントワーン・フークア

デンゼル・ワシントン主演のポリスもの。

新米刑事ジェイク(イーサン・ホーク)は初めて麻薬捜査官として配属された。
相棒でありベテラン刑事のアロンゾ(デンゼル・ワイントン)に、トレーニング・デイ(訓練日)として仕事のイロハを教わる。
正義感にあふれるジェイクは街の悲惨な状況と、悪徳刑事のアロンゾのあまりの横暴ぶりに戸惑いを覚えるのだった。

▼以下はネタバレあり▼

ロスのアンダー・グランドをリアルに描いた秀作である。
デンゼル・ワシントンの悪徳刑事ぶりには、目を疑うほど完全に演じていた。
街の実態を知るには十分なのではないかと思えるくらいリアルに描いている。

ストーリーとしては新米警官の一日。
麻薬取引を抑えて、悪の巣窟である「無法地帯(ジャングル)」で裏取引をして売人と信頼関係をつくる。
たまに上司に金を工面するように言われたらその売人を逮捕(殺害)して金を得る。

当然新米刑事に感情移入する観客は、そのあまりの癒着ぶりに舌を巻く。
しかし正義と現実との葛藤が見事に描かれるため、自然にその街の雰囲気に飲まれ、怒りと矛盾に喘ぐ主人公にまた感情移入する。

これだけスリムにテーマを絞り、またエスカレートしていくアロンゾの悪徳ぶりによって、非常に完結した映画になっている。
麻薬を吸う。
愛人の家に行く。
逮捕者の金を巻き上げる。
情報屋と手を組む。
情報屋を殺し、金を奪う。
だんだんエスカレートしていく現実の重さが、ジェイクの中の正義とせめぎあう。

落ちとしては少しありきたりでそれほど、映画としてのエンターテイメント性には欠けるだろうが
それを補って余りあるほど街の情景や、その中の住人が巧く描けているために全く飽きさせない。

ただ文句をいうなら、最後の主人公の動機が少しわかりにくかった。
告発したかったのは理解できたが、アロンゾのところに行って何がしたかったのか。
彼を殺しても悪徳の証拠がないことは明白だったし、彼は黙っていてもロシア人に殺される事がわかっていた。
敢えてリスクを侵してまでも逮捕しに行く必要があったのか。
彼と対峙することはジェイクにとって、大きな意味を有するのは理解できるが、ただでさえ危険なジャングルに単身乗り込んでいく彼に、少し無茶を感じた。

何はともあれ、圧倒的な現実が正義を凌駕していく様は、迫力があったし、アロンゾの歪み方にも説得力を与えていた。
完成度は高い。

この映画を支えているのはデンゼル・ワシントンの演技だ。
英雄系の役が多くて個人的にあまり好きじゃなかった(「ボーン・コレクター」にしてやられたから)が、この映画で名誉挽回している。
イーサン・ホークも良い。

(2002/08/15)

僕がもっとも見直したくない批評の一つ。

少しだけ以下、解説を補足しておく。
この映画は多くの人が指摘しているように、「狂言回し」の話だ。
だから、イーサン・ホークが終盤デンゼル・ワシントンを止めに行こうとするのは、彼が自分の良心をかけて、悪徳警官つまり、権力の中にある不正と立ち向かおうとするためだ。
僕はそれが全然読めていなかったので、上のような批評になってしまった。
経験の浅さが露呈した批評になっている。
本当は顔から火が出るほど恥ずかしいが、記念なので、そのまま加工せずに載せた。
また、〈再読〉することがあれば、新たに書こうと思う。

トラウマになってしまって見直す気になれないのですけれども。

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