secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

1Q84

2009-06-25 23:26:15 | 読書のススメ
★ネタバレなし★

今、話題沸騰と言えば、村上春樹の新作「1Q84」だろう。
ニュースでも取り上げられて、(どんだけネタないねんという感じではあるが。)どこに行っても売り切れだということで、さらに話題になった。
僕も、本当に売っていないのか確認したくて本屋にいったくらいだ。
そして、本当に売っていなかった。

村上春樹がそこまで人気なのは、正直解せない。
彼の作品をしっかりと読んでいる読者はおそらく少ないはずだ。
なぜなら、文芸批評家からは酷評されている裏で、売れまくっているからだ。
大学教授から、「あんな作家クソだ」と言われたという友達もいる。

今年の初めに、読み直してみようと思った「風の歌を聴け」は、確かに今読んでみるとちょっと読むに堪えない内容だと感じた。
あれだけ僕の心をつかんで離さなかったのに、僕も成長したのかもしれない。
とはいえ、僕が卒業論文で取り上げてから少なくない年月が経った。

とはいえ、新作はとりあえず気になるのがファンというものだ。

前評判といわれるものは、極秘だったためほとんどなかった。
予約して買ったので、僕の周りに読んでいる人もいない。
僕はラッキーな読者だろう。
感想を少し書こう。

僕としては正統進化したな、という印象だ。
「風の歌を聴け」以来、彼がさまよってきたと考えていた〈語り〉について、僕はやはりそうきたか、という印象を持った。
僕はおもしろいと思ったが、これだけ売れるほどの内容でもないだろう。
多くの人は期待はずれに終わってしまうのではないだろうか。
あるいは、わかったふりをして「おもしろかった」と周りにこぼすかもしれない。
いずれにしても、話題だから買おうと、読もうとするのはちょっとやめておいた方が良い。
たぶん、肩すかしを食らうことになる。

僕がおもしろいと思ったというのは、彼が目指そうとしている地点が見えた気がしたからだ。
彼は英語の翻訳家でありながら、日本語に対して非常に敏感なところがある。
日本語において、小説を書く際に問題となるのは〈語り〉だ。
古くは物語という口承文学が出発の日本語では、一人称で語るのは容易だが、三人称で力あるように語るのは非常に難しい。
それは、助動詞の「だろう」や「らしい」といった推量や推定が、三人称を主語にした場合違和感を残してしまうからだろう。
いずれにしても、彼の小説はだから一人称で語れることを出発点とした。
だが、「ノルウェイ」や「カフカ」という流れは、その一人称であることから脱却するための試行錯誤だったと言っていい。

その意味で、この「1Q48」は三人称小説であることが、記念碑のような意味合いを持つのだ。
やっと自分の作品を語り始めたな、というのがこの作品を読んでの感想。

オウムや善悪、セックスなど様々な要素をちりばめてはいるが、僕には〈語り〉が最も重要な主題のような気がする。
それでもなお、「私の存在の中には愛がある」と言わしめた情熱が、僕にはうれしい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ターミネーター4 | トップ | ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序 »

コメントを投稿

読書のススメ」カテゴリの最新記事