どもども。
前回までは大学入試問題が続いていたので,今回は高校入試問題を
取り上げてみようかと思います
この春に少し話題になっていた長野県の公立高校入試の数学の試験。
全体的に難易度が高めで例年と比べてあまりに異常で,長野県教職員組合は
県教育委員会に抗議する声明を発表したとのことです。
記事に拠れば当日は試験場で泣き出す生徒まで居たなどという話もあるほどで,
受験生たちにとっては思いがけず調子を狂わされテンパった状態で
残りの社会,理科,英語に挑む羽目になったことでしょう。
さて,実際の問題を見てみるとパッと見は意外と普通の問題内容なんです。
1つ1つの問題は受験問題にありがちな応用問題で,
一見した瞬間から明らかに異質なオーラを発してるのを感じる問題は
無いような気はします。
しかし,全体としてみてみると50分で解くにはあまりにも問題数が多いです
余裕を持って時間内に解き終わるためには,途中で一切躓かないことが
ほぼ必須となりそうで,ペンが止まった問題をいつまでも固執して
悩み続けてたりしたらもう時間は足りません。
この問題は厄介だと判断したらその問題は一旦捨ててどんどん先に進んで,
確実に取れる点数を着実に取っていくという作戦を取らないと
大変な目に遭ってしまうかもしれません
あと出題の順序が不親切かもしれない印象を部分も幾つかありました
(第2問の(1)3番とか第3問の(1)2番とか)。
問題と解答はこちらから見られます。
http://www.pref.nagano.lg.jp/kyouiku/kyougaku/koukounuusi/index24.htm
そんな長野県入試から第3問と第4問を取り上げてみます。
今回は第3問をやります。
高校入試の関数の問題としては鉄板の動点問題ですね
動点問題は多くの場合,
・速度や動く方向の異なる複数の動点が出てくる
・時間経過に応じて状況が変わってくる
といった条件がついてきます。パニックになることなく冷静に理路整然と
各場合において起こる現象を解析できるか,を試されてるわけです。
今回の問題は速度も動く方向も異なる2つの動点PとQが出てきます。
また円周をグルグル回るので時間経過に応じて何周目を走っているかという
状況が変わります。
親切なことに動点Pの運動の様子を表したグラフが問題文で与えられて
います。これをヒントに動点Qの運動を表すグラフを描いて考えれば
だいぶ複雑さは軽減されるはずです
さて,動点Pは毎秒2cmの移動,動点Qは逆方向に毎秒acmの移動をします。
問題文で何やらゴチャゴチャ書いてますが,早い話が真上から見たとき
AとBが重なるんで,同じスタート地点からPとQがそれぞれ逆方向に移動する
という状況を考えるのと特に変わりはありません。
(1)1番
APが円の2回目に直径になる場合を考えなさいという問題です。
円周の長さが12cmなので弧APが6cmになっています。
2回目に直径になる場合ですから,これは2周目で起こります。
このとき点Pはトータルで12+6=18cm移動しています。
1秒で2cm進むのですから 18÷2=9 よりこれは移動を始めてから9秒後の
出来事であることが分かります。従って座標は (9,6)になります。
半周6cmの移動にかかる時間は 6÷2=3(秒) ですので
それが3個分で 3×3=9(秒) として(9,6)を求めるのもアリです。
算数的な考え方はシンプルではありますが,冷静に分析してる余裕のない
試験場ではとにかく方程式を立てて解いてしまうことの方が多そうです。
何も考えず真っ先に6≦x≦10のときのyをxの式で表すことを試みる人が多いと思います。
これは点(6,0)を通る傾き2の直線なので y=2(x-6)=2x-12 ですので
2x-12=6 を解いて x=9 を求めると良いでしょう
(1)2番
もうこれは上で求めてしまいましたね
こっちの問題が先にあったほうが良かったかもしれないです。
x秒間に進んだ総距離2xcmから1周分の12cmを引いて
y=2x-12 と求めても良いでしょう。
(2)1番(ア)
点Qの方は移動した距離ではなく1周回るまでの残りの距離をyとしています。
Pと逆方向に動くのでそのようにおいた方がグラフを描いた時見通しが良いわけです。
まずはa=3の場合を考えるようです。
点QがBの位置にあるときは y=0 とします,などと書いてて混乱するかも
しれませんがグラフを描いてみれば分かるように点(0,12)を通る傾き-3の
直線が求めるものです。
点Qは1周するのに 12÷3=4(秒) かかるので2点(0,12),(4,0)を通る直線として求めてもいいと思います。
あるいは,点Qがx秒間に移動した距離3xcmと1周するまでの残りの距離ycmの
和は当然ながら1周分の距離12cmに等しいわけですから 3x+y=12 という関係式が成り立つ!として立式してもOKです。
求める答えは y=-3x+12 です
(2)1番(イ)
線分PQとABが平行になるというのは真上から見たときにPとQが重なる時を指します。グラフでいうとPの運動を表すグラフとQの運動を表すグラフが交わる
時を指しています。
グラフを見れば分かりますが4回目に交わるのは10秒よりちょっと手前の辺りで,点Pは2周目を,点Qは3周目を走っている時の出来事です。
8≦x≦10においてyをxの式で表してみましょう。
点Qは1周に4秒かかるので2周するのには8秒かかります。
従って点(8,12)を通る傾き-3の直線を求めればよいことになります。
あるいはx秒間に進んだ距離3xcmと3周目の残りの距離ycmの和が
12cm×3(周分)=36cmですので 3x+y=36 としてもよいです。
計算するとy=-3x+36 です。
点Pの方のグラフは,6≦x≦10で y=2x-12 でしたから,
-3x+36=2x-12 を解いてx=48/5(秒) が求まります
点Pは1秒間に2cm,点Qは逆方向に3cm動きます。
ということは,真上から見た図で考えると,
1秒間に5cmずつ両者の距離(始点A(B)を含むほうの弧PQ)は
開いていくことが分かります。
移動を開始して両者が初めて出会うとき,この弧PQの距離は円周1周分である
12cmになっていますのでそれは 5x=12 を解いて 12/5秒後の出来事である
ことが分かります。
その後も同じ速度で2点は動き続けるので,2点は12/5秒ごとに出会うわけです。
4回目に出会うのは 12/5×4=48/5(秒) なわけです。
次のような考え方も出来ます。
点Pが動いた総距離と点Qの動いた総距離の和が円周4周分の48cmになるときを
求めれば良いので 2x+3x=48 を解いて 48/5(秒) とすることもできます。
(2)2番
今度は点Qの速度が分かりません。PとQが3回目に出会うのが
7秒目であるようにaを定めなくてはなりません。
いくつかグラフを描いてみてQの方のグラフがどうなればよいかを
考えてみるのが良いです。
点Qが6秒目以下の時点で円周を2周してしまうと,必ず6秒目の時点で
3回以上2点は重なってしまいます。
よって,6秒目の時点ではまだ点Qは2周目を走っている状況を考えればよいです。
点Qは1周するのに12/a秒かかるので2周目分のグラフの式は
点(12/a,12)を通る傾き-aの直線を考えればよいので,計算すると
y=-ax+24 になります。
点Pの方のグラフは y=2×7-12=2 より(7,2)を通ります。
y=-ax+24 もまたこの点を通ればよいので
2=-7a+24 を解いて a=22/7
前の設問にならって別の考え方もしてみましょう。
2点の距離は毎秒(2+a)cmずつ開いていきます。
移動を開始して最初に2点が重なるのは
(2+a)x=12 を解いて 12/(2+a)(秒目) の出来事です。
12/(2+a)秒毎に2点は重なるので3回目に重なるのは
12/(2+a)×3=36/(2+a)(秒目) です。これが7秒目だというので
36/(2+a)=7 を解いて a=22/7
点Pが動いた総距離と点Qの動いた総距離の和が円周3周分の36cmになるときが
7秒目だということなので,
2x+ax=36 に x=7 を代入して 14+7a=36
これを解いて a=22/7 とすることもできます。
…というわけで,工夫次第では要領よく解ける問題ではあるのですが
工夫とか考えてる暇のないくらい追い詰められていた受験生がきっと
多かったことでしょう
特に厄介そうな図形の第4問が先に待ち構えていますからね
心中お察しします
前回までは大学入試問題が続いていたので,今回は高校入試問題を
取り上げてみようかと思います
この春に少し話題になっていた長野県の公立高校入試の数学の試験。
全体的に難易度が高めで例年と比べてあまりに異常で,長野県教職員組合は
県教育委員会に抗議する声明を発表したとのことです。
記事に拠れば当日は試験場で泣き出す生徒まで居たなどという話もあるほどで,
受験生たちにとっては思いがけず調子を狂わされテンパった状態で
残りの社会,理科,英語に挑む羽目になったことでしょう。
さて,実際の問題を見てみるとパッと見は意外と普通の問題内容なんです。
1つ1つの問題は受験問題にありがちな応用問題で,
一見した瞬間から明らかに異質なオーラを発してるのを感じる問題は
無いような気はします。
しかし,全体としてみてみると50分で解くにはあまりにも問題数が多いです
余裕を持って時間内に解き終わるためには,途中で一切躓かないことが
ほぼ必須となりそうで,ペンが止まった問題をいつまでも固執して
悩み続けてたりしたらもう時間は足りません。
この問題は厄介だと判断したらその問題は一旦捨ててどんどん先に進んで,
確実に取れる点数を着実に取っていくという作戦を取らないと
大変な目に遭ってしまうかもしれません
あと出題の順序が不親切かもしれない印象を部分も幾つかありました
(第2問の(1)3番とか第3問の(1)2番とか)。
問題と解答はこちらから見られます。
http://www.pref.nagano.lg.jp/kyouiku/kyougaku/koukounuusi/index24.htm
そんな長野県入試から第3問と第4問を取り上げてみます。
今回は第3問をやります。
高校入試の関数の問題としては鉄板の動点問題ですね
動点問題は多くの場合,
・速度や動く方向の異なる複数の動点が出てくる
・時間経過に応じて状況が変わってくる
といった条件がついてきます。パニックになることなく冷静に理路整然と
各場合において起こる現象を解析できるか,を試されてるわけです。
今回の問題は速度も動く方向も異なる2つの動点PとQが出てきます。
また円周をグルグル回るので時間経過に応じて何周目を走っているかという
状況が変わります。
親切なことに動点Pの運動の様子を表したグラフが問題文で与えられて
います。これをヒントに動点Qの運動を表すグラフを描いて考えれば
だいぶ複雑さは軽減されるはずです
さて,動点Pは毎秒2cmの移動,動点Qは逆方向に毎秒acmの移動をします。
問題文で何やらゴチャゴチャ書いてますが,早い話が真上から見たとき
AとBが重なるんで,同じスタート地点からPとQがそれぞれ逆方向に移動する
という状況を考えるのと特に変わりはありません。
(1)1番
APが円の2回目に直径になる場合を考えなさいという問題です。
円周の長さが12cmなので弧APが6cmになっています。
2回目に直径になる場合ですから,これは2周目で起こります。
このとき点Pはトータルで12+6=18cm移動しています。
1秒で2cm進むのですから 18÷2=9 よりこれは移動を始めてから9秒後の
出来事であることが分かります。従って座標は (9,6)になります。
半周6cmの移動にかかる時間は 6÷2=3(秒) ですので
それが3個分で 3×3=9(秒) として(9,6)を求めるのもアリです。
算数的な考え方はシンプルではありますが,冷静に分析してる余裕のない
試験場ではとにかく方程式を立てて解いてしまうことの方が多そうです。
何も考えず真っ先に6≦x≦10のときのyをxの式で表すことを試みる人が多いと思います。
これは点(6,0)を通る傾き2の直線なので y=2(x-6)=2x-12 ですので
2x-12=6 を解いて x=9 を求めると良いでしょう
(1)2番
もうこれは上で求めてしまいましたね
こっちの問題が先にあったほうが良かったかもしれないです。
x秒間に進んだ総距離2xcmから1周分の12cmを引いて
y=2x-12 と求めても良いでしょう。
(2)1番(ア)
点Qの方は移動した距離ではなく1周回るまでの残りの距離をyとしています。
Pと逆方向に動くのでそのようにおいた方がグラフを描いた時見通しが良いわけです。
まずはa=3の場合を考えるようです。
点QがBの位置にあるときは y=0 とします,などと書いてて混乱するかも
しれませんがグラフを描いてみれば分かるように点(0,12)を通る傾き-3の
直線が求めるものです。
点Qは1周するのに 12÷3=4(秒) かかるので2点(0,12),(4,0)を通る直線として求めてもいいと思います。
あるいは,点Qがx秒間に移動した距離3xcmと1周するまでの残りの距離ycmの
和は当然ながら1周分の距離12cmに等しいわけですから 3x+y=12 という関係式が成り立つ!として立式してもOKです。
求める答えは y=-3x+12 です
(2)1番(イ)
線分PQとABが平行になるというのは真上から見たときにPとQが重なる時を指します。グラフでいうとPの運動を表すグラフとQの運動を表すグラフが交わる
時を指しています。
グラフを見れば分かりますが4回目に交わるのは10秒よりちょっと手前の辺りで,点Pは2周目を,点Qは3周目を走っている時の出来事です。
8≦x≦10においてyをxの式で表してみましょう。
点Qは1周に4秒かかるので2周するのには8秒かかります。
従って点(8,12)を通る傾き-3の直線を求めればよいことになります。
あるいはx秒間に進んだ距離3xcmと3周目の残りの距離ycmの和が
12cm×3(周分)=36cmですので 3x+y=36 としてもよいです。
計算するとy=-3x+36 です。
点Pの方のグラフは,6≦x≦10で y=2x-12 でしたから,
-3x+36=2x-12 を解いてx=48/5(秒) が求まります
点Pは1秒間に2cm,点Qは逆方向に3cm動きます。
ということは,真上から見た図で考えると,
1秒間に5cmずつ両者の距離(始点A(B)を含むほうの弧PQ)は
開いていくことが分かります。
移動を開始して両者が初めて出会うとき,この弧PQの距離は円周1周分である
12cmになっていますのでそれは 5x=12 を解いて 12/5秒後の出来事である
ことが分かります。
その後も同じ速度で2点は動き続けるので,2点は12/5秒ごとに出会うわけです。
4回目に出会うのは 12/5×4=48/5(秒) なわけです。
次のような考え方も出来ます。
点Pが動いた総距離と点Qの動いた総距離の和が円周4周分の48cmになるときを
求めれば良いので 2x+3x=48 を解いて 48/5(秒) とすることもできます。
(2)2番
今度は点Qの速度が分かりません。PとQが3回目に出会うのが
7秒目であるようにaを定めなくてはなりません。
いくつかグラフを描いてみてQの方のグラフがどうなればよいかを
考えてみるのが良いです。
点Qが6秒目以下の時点で円周を2周してしまうと,必ず6秒目の時点で
3回以上2点は重なってしまいます。
よって,6秒目の時点ではまだ点Qは2周目を走っている状況を考えればよいです。
点Qは1周するのに12/a秒かかるので2周目分のグラフの式は
点(12/a,12)を通る傾き-aの直線を考えればよいので,計算すると
y=-ax+24 になります。
点Pの方のグラフは y=2×7-12=2 より(7,2)を通ります。
y=-ax+24 もまたこの点を通ればよいので
2=-7a+24 を解いて a=22/7
前の設問にならって別の考え方もしてみましょう。
2点の距離は毎秒(2+a)cmずつ開いていきます。
移動を開始して最初に2点が重なるのは
(2+a)x=12 を解いて 12/(2+a)(秒目) の出来事です。
12/(2+a)秒毎に2点は重なるので3回目に重なるのは
12/(2+a)×3=36/(2+a)(秒目) です。これが7秒目だというので
36/(2+a)=7 を解いて a=22/7
点Pが動いた総距離と点Qの動いた総距離の和が円周3周分の36cmになるときが
7秒目だということなので,
2x+ax=36 に x=7 を代入して 14+7a=36
これを解いて a=22/7 とすることもできます。
…というわけで,工夫次第では要領よく解ける問題ではあるのですが
工夫とか考えてる暇のないくらい追い詰められていた受験生がきっと
多かったことでしょう
特に厄介そうな図形の第4問が先に待ち構えていますからね
心中お察しします
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