令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

坂上郎女編(13)飲みての後は

2010年04月09日 | 坂上郎女編
【掲載日:平成22年4月30日】

酒杯さかづきに 梅の花け 思ふどち
           飲みてののちは 散りぬともよし



坂上郎女いらつめは 厳しい説諭せつゆを受けていた
一同集められての訓戒くんかいあと
「大伴家本流は  今や 佐保大納言家 
 跡取りは家持じゃ 
 しかるに いまだ若年 後ろだてとて思うに任せず
 老いけたわしでは 如何いかんともし難い
 頼むは  そなたじゃ
 今後の 家刀自いえとじの役目 そなたに託す
 しかるべき人物とのよしみを築き 一族をたばねることが肝要ぞ」
石川内命婦いしかわのうちみょうぶの言葉に 身を固くする郎女

〈先ず  一族融和を図らねば〉
佐保大納言邸  
連日の 一族結束図りのえん
仕切るは 家刀自坂上郎女いらつめ

「さあ 皆の者 うたげじゃ えんじゃ 
一族縁者えんじゃの 固めのえんじゃ」
軽口を 飛ばして 郎女がうた

かくしつつ  遊び飲みこそ 草木すら 春は咲きつつ 秋は散りゆく
《草木かて 春に花咲き 秋は散る 飲んで遊んで たのしに暮らそ》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻六・九九五〉 

〈そうそう 大宰府での 梅花うめはなうたげにあったぞ
 『酒杯さかづき梅』に 『散りぬともよし』〉

酒杯さかづきに 梅の花け 思ふどち 飲みてののちは 散りぬともよし
梅花うめはなを 酒杯さかづき浮かべ 友どうし 飲んで仕舞しもたら 散ってええやん》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一六五六〉 
つかさにも 許したまへり 今夜こよひのみ 飲まむ酒かも 散りこすなゆめ
《おかみかて かめへんてる 宴会や 酒のみ明かそ 梅散らさんと》
                         ―こたふる人―〈巻八・一六五七〉
〈よしよし 風紀紊乱びんらんにより 宴酒うたげざけは禁じられておるが 身内酒は 許されておる〉

「駿河麻呂殿 
 そなた  家持と同じ年ごろ
 友に 見込みある人物もの 誰ぞあるか
 後ろ盾無き家持のため  友を選んでおきたい」
「それならば 似つかわしい御仁ごじんが 
 葛城王かつらぎおう〈後の橘諸兄たちばなのもろえ〉の御子息 奈良麻呂殿
 若年ながら 才気さいき煥発かんぱつ人物ひと
「おお  橘三千代様のお孫か 高みじゃのう」
「何を 小母おば様なら
 虎穴に入らずンばですよ」 

山守やまもりの ありける知らに その山に しめひ立てて ひのはぢしつ
《山番が るの知らんと 山はいり しるし付けたで 恥ずかしことに》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻三・四〇一〉 
山主やまもりは けだしありとも 吾妹子わぎもこが ひけむしめを 人かめやも
《山番が ってもええで あんた来て 付けたしるしや 誰ほどくかい》
                         ―大伴駿河麻呂―〈巻三・四〇二〉 





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