令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・青春編(一)(14)醜(しこ)の醜草(しこくさ)

2010年07月16日 | 家持・青春編(一)恋の遍歴
【掲載日:平成22年7月16日】

忘れ草 わが下紐したひもに 着けたれど
             しこ醜草しこくさ ことにしありけり



〈可哀想をしたが  いまが千載一隅やも知れぬ
 この時期  
 いかな家持  他への妻問いもなかろう
 早速に  呼び出さねば〉
坂上郎女さかのうえのいらつめの 勘気かんきに触れ 
出入り差し止めとなっていた  竹田の庄
大嬢おおいらつめとの逢瀬おうせは 途絶えていた

家持とて 大嬢をいとうていた訳ではない
おみなめとの同棲
多くのおみなとの 恋の遍歴
若気の至りと云えば  それまでであるが
家持なりの  人成り道ではあった

坂上郎女からの  誘い
心躍る  家持
足は  自ずと軽くなる

玉桙たまほこの 道は遠けど はしきやし 妹をあひ見に 出でてぞ
《遠い道 苦にもせんとに いとおしい 叔母あんたに逢いに 出かけて来たで》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六一九〉 
あらたまの 月立つまでに まさねば いめにし見つつ 思ひそがせし
《ひと月が ってもあんた んよって 夢にまで見て 待ってたんやで》
                         ―大伴坂上郎女―〈巻八・一六二〇〉 

大嬢との  交情復活
大嬢は 喜びを 稲穂のかずらに託す

わがれる 早稲田わさだの穂立ち 造りたる かづらそ見つつ しのはせわが背
《家の田の 早稲穂わせほで編んだ かずらです 見るたびうちを 思い出してや》
                         ―大伴坂上大嬢―〈巻八・一六二四〉 
吾妹子わぎもこが なりと造れる 秋の田の 早穂わさほの蘰 見れど飽かぬかも
《お前ちゃん 作ってくれた 秋の田の 早稲穂わせほの鬘 見飽きんこっちゃ》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六二五〉 
秋風の 寒きこの頃 下に着む 妹が形見と かつもしのはむ
《秋の風 寒いよってに もろ下衣ふく あんたやおもて 着てみよ思う》
                         ―大伴家持―〈巻八・一六二六〉 

止む無く裂かれた仲 
家持は その間の苦渋と 二人しての喜びをうた

忘れ草 わが下紐したひもに 着けたれど しこ醜草しこくさ ことにしありけり
《恋心 消す云う草を けたけど 名前倒れや このアホ草は》
                         ―大伴家持―〈巻四・七二七〉 
人もき 国もあらぬか 吾妹子わぎもこと たづさひ行きて たぐひてをらむ
《人誰も 居らへん国が 在ったら お前連れ立ち 一緒行こかな》
                         ―大伴家持―〈巻四・七二八〉 

初めての 歌わしから
六年が  経っていた


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