【掲載日:平成22年7月13日】
昔こそ 外にも見しか 吾妹子が
奥つ城と思へば 愛しき佐保山
葬儀 初七日と 日は過ぎる
多忙の紛れに 隠れていた悲しみが 蘇る
かくのみに ありけるものを 妹も我れも 千歳のごとく 憑みたりけり
《こんななる 運命やったに 二人して ずっと長生き 出ける思てた》
―大伴家持―〈巻三・四七〇〉
家離り います吾妹を 停めかね 山隠しつれ 精神ともなし
《この家に 居らす様するの 出けへんで 死なして仕舞た 情けないがな》
―大伴家持―〈巻三・四七一〉
世間は 常かくのみと かつ知れど 痛き情は 忍びかねつも
《世の中は こんなもんやと 分かるけど 辛い気持は 耐えられんのや》
―大伴家持―〈巻三・四七二〉
佐保山に たなびく霞 見るごとに 妹を思ひ出 泣かぬ日はなし
《佐保山に 棚引く霞 見る度 お前思うて 泣かん日ィない》
―大伴家持―〈巻三・四七三〉
昔こそ 外にも見しか 吾妹子が 奥つ城と思へば 愛しき佐保山
《気にせんと 見てた山やに 佐保山は お前の墓と 思たら愛し》
―大伴家持―〈巻三・四七四〉
索漠の思いの日が 過ぎていく
〈恋に現を抜かし
穏やかな幸いが 何事もない日々にあること 気付かなかった〉
若気の 移り気
手痛い しっぺ返し
佐保の山を 望むたび
妾への思い 家持の胸に 深く染み入る
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