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風呂雑感

我家はマンションなので、はめ込み式のいわゆるユニットバスである。やや長方形の浴槽では、その対角線上に体を沈めたとしても、膝はまっすぐに伸びることがない。
体を折り曲げ、体育座りのような姿勢で膝をかかえてじっと浴槽に浸かっていると、屈葬されたミイラの姿を想像してしまい、いつも苦笑してしまう。

昨年末、10日間ほど実家に滞在したのだが、その間の最大の楽しみは、なんといっても一日の最後を締めくくるお風呂タイムだった。7年ほど前にリフォームした風呂は、なんといっても快適だ。足をまっすぐ伸ばしても、まだ十分に余裕がある。
浴槽の周囲に色とりどりのアロマキャンドルを配して、火を灯したら、まさにハリウッド映画によく出てくる憧れの入浴シーンが実現することになる。
残念ながら、実家では仏壇用の白いカメヤマろうそくしか調達できそうもないので、ジュリア・ロバーツになりきるのは即刻諦めた。
さらに、実家の風呂は給水穴からジェット水流が出てくる。細かい空気をいっぱい含んだ泡の水流は、一日の疲れなんかこっぱ微塵の泡沫状態にして吹っ飛ばしてくれる。
シャンパングラスを片手に、ジャグジー風の泡立つお湯に浸かったら、これまた洋画のゴージャス&リッチなシーンで見られる展開になりそうだ。
残念ながら、実家にはシャンパンなんて洒落た飲み物は常備していないので、アンジェリーナ・ジョリーになりきるのも渋々諦めた。

諸般の事情でいろいろ断念せざるを得ない苦境にいたわたしだが、花王のバブ(ゆずの香り)を入れるのだけは決して忘れなかった。
最初は大きな浴槽の底でジュワジュワしていたバブが、次第に小さく薄くなってふわっと湯面に浮かんでくるのを見届けるまで、決して湯から出なかった。
遠い昔、湯冷めしないように、肩までお湯に浸かりながら、「イ~チ、ニ~、サ~ン」とゆっくり10まで数えさせられた記憶がぼんやり蘇ったが、天井についた冷たい水滴が顔にポタポタ落ちてきて、そんなノスタルジックな感傷なんかいっぺんに飛ばしてしまった。

そして、家に戻ったわたしは今夜も膝を曲げながら入浴し、屈葬のミイラをイメージしながら苦笑することになるのだ。
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