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めやす賃料表示

2010年09月13日 | 建築現場日記
大阪高等裁判所で賃貸住宅の更新料を無効とする判決が相次いでいる。
表示ルールの改定や更新料の減額や廃止。
最高裁判所での判決確定を前に、賃貸業界でも動きが目立ってきた。
法律の規定もない“慣習”に基づき続いてきた更新料。
その変化の動きを追った。

2010年10月賃貸住宅の新たな賃料表示制度が始まる。
不動産会社の店頭やインターネットでの物件募集広告や重要事項説明書などの記載項目として
従来の物件情報に加え「めやす賃料」が表示されるのだ。

めやす賃料とは、1ヵ月当たりの実際の負担額。
仮に同じ条件で4年間住んだ場合の費用(賃料・共益費・敷引金・礼金・更新料など)を
合計し1ヵ月当たりの額に割り戻したものである。

賃貸住宅を取り扱う不動産会社1167社が加盟する
最大の業界団体日本賃貸住宅管理協会(日管協)が全国の会員企業に導入を呼びかける。

当然ながら、めやす賃料は従来の賃料より高く表示される。
業界団体が一見貸手側に不利に見えるこの表示制度の普及を進めるのは
「借主と貸主の理解不足によってトラブルが多発している。
今業界が動かなければ賃貸市場に対する信頼感が失われる」(三好修・日管協会長)との危機感からだ。
トラブルのなかでも最大のものが更新料の無効訴訟である。

更新料とは賃貸借契約の更新時に家賃の1~2ヵ月分を払うもので
首都圏や京都などの一部地域で“慣習”として普及している。

ところが従来は受け入れられてきた更新料が「無効」とされる判決が最近相次いでいる。
この5月までに、大阪高等裁判所で3件の無効判決と1件の有効判決が出た。
判決のうち3件が上告中でこれらの最高裁判所の判決が今年度中にも出ると見られる。

一部地域にしか存在せず法律の規定もない更新料。じつはそのルーツは戦前にまでさかのぼる。

当時東京では人口が増加し住宅不足に陥っていた。
そこに物価統制令が出て、家賃の値上げを禁じられた大家が契約を更新する際に
居住継続と引き換えにカネを借主に要求することが横行した。
この“ヤミの権利金”が更新料の起源といわれる。
いわば貸手優位の市場で生まれた慣習だ。

だが現在の環境は当時と180度異なる借手市場だ。

総務省によると全国の賃貸住宅の空室率は18.7%
供給戸数は2183万戸で共に過去最高を記録した(08年)。

当然、家賃相場も下落する。大手不動産ポータルHOME'Sの調査によると
07年12月を100とした首都圏の1坪当たり平均賃料は
今年6月に94、平均礼金は71に下落した。
最も住宅の需要が高いはずの東京都ですらかつて2ヵ月以上あった平均礼金は
この7月には0.63ヵ月まで落ちた。
地盤がずるずると崩れるなか業界では次は更新料も消えるのではという見方が広がっている。

「顧客が退去した後部屋が埋まるまでの期間が長期化し
同じ賃料を維持することも難しくなってきた。
退去を防ぐため、更新料の値下げや無料化を検討する貸主が増えている」

首都圏のある大手不動産会社では取扱物件の約2割が更新料なしになっている。
最高裁の判決前でも市況悪化で更新料を取れない状況が生まれつつある。

「更新料はもともと一部地域の特殊な慣習だ。
中期的にはすべて家賃に一本化するのが消費者にとっても自然。
めやす賃料はそれを睨んだ制度」とも言う。

大家には礼金や更新料を賃貸経営の前提にしている者も多い。
今後更新料を取れなくなれば利回り設定や銀行への融資返済計画の見直しを
余儀なくされる大家も出てくるだろう。

更新料は不動産会社の収入源でもある。
更新料の一部は「更新事務手数料」という名称で不動産会社にも渡るからだ。
不動産会社の経営にも少なからぬ影響が出ることは想像に難くない。

今最高裁判決を待つ貸主が最も懸念しているのが賃貸住宅版の「過払い訴訟ブーム」だ。
大阪高裁ではすでに支払った更新料をさかのぼって借主に返還を命じる判決が出た。
この判決が最高裁で確定すれば大家側が過去の更新料を利子を付けて
借主に返さなければならなくなるケースも出てくる。

じつは訴訟の動きを注視しているのは賃貸住宅の貸主や借主だけではない。
「消費者金融の過払い金返還請求ビジネスで暗躍した法律事務所が
次は更新料返還請求に目をつけている」という動きも出てきている。

すでに回収した更新料から成功報酬を受け取るなどの料金体系を決め
依頼者募集を始めた法律事務所も現れた。

ただ賃貸経営の大家は消費者金融のような大企業ばかりではない。
サラリーマン大家や市況悪化で賃貸経営に苦慮する個人大家もいる。
更新料返還の訴訟が相次げば資金繰りに窮する例も出る。

一連の更新料無効裁判の根底にあるのは「消費者契約法による信義則違反」だ。
つまり「弱い借主を強い貸主が騙したり搾取してはならない」という前提だ。

だが本当に借主は弱者なのか。
じつは「現在の日本の借地借家法は借主の権利のみを厚く保護している」と弁護士は言う。
例えば実勢の賃料水準と乖離した安い家賃で入居している借主の家賃を値上げしたい場合だ。
貸主は契約の更新時に借主と新賃料での契約を結び直さなければならない。
ところが借主はこの契約更新に応じなくても家賃を払い続ければ
そこに旧賃料で住み続けることができる。
借主が契約の更新をしない場合旧契約の内容が続く
「期限の定めのない契約」に自動的に移行することになるからだ。

この契約を打ち切り借主を退去させるには借主・貸主の両方で物件を明け渡す
正当な理由があると裁判所に認められるか借主に立ち退き料を払わなければならないのだ。
収入が減るのを恐れ現代の事情にそぐわない更新料を維持してきた貸主側にも非はある。

だが法的な保護も薄く市場も軟調。
さらに更新料返還訴訟のリスクが加わるなど貸主への圧力は強まり続ける。
これは長い目で見れば借主にもマイナスだ。

「貸主が賃貸経営に行き詰まったり物件を良質な状態に維持・管理する余力を失えば
市場に出回る賃貸住宅の質は下がる」からだ。

業界の耳目は最高裁判決に集まる。
借主を優遇し過払い訴訟の続発を招く判決が出され貸主がさらなる苦境に立たされるのか。
借手と貸手のバランスを取り賃貸市場の安定化が図られるのか。

「更新料すべてが無効とはならず事例ベースで悪質なものを
無効とする判断になるのではないか」と弁護士は読む。
最高裁判決は、今後の日本の賃貸住宅市場の
将来像を決める“一石”となることは間違いない。


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