原子と表面のおかしな関係

結晶の表面の原子は、常識では考えられないおかしな挙動をする。
そんなことをつらつらと書いてみる。

シリコンのナノピラミッド

2009-05-03 12:19:35 | 日記
基板温度400℃のSi(001)表面にSTMの探針を近づけてしばらく待っていると写真のようなピラミッドが出来る。
このピラミッドは、2次元気体状のシリコン原子が探針と基板の間に発生する双極子場に引き寄せられたことによって、探針の直下に形成される。
この温度では、ピラミッドは不安定で、頂上から崩壊が始まり、脱離したシリコン原子はピラミッドの下部に吸着し、次第に平坦な島に移行する。

Siの(100)表面の魔法の島

2009-04-14 11:32:36 | 日記
Siの(100)表面は表面の2個のSi 原子がお互いに結合して並んでいる。
写真の畳の目のように見えるのが、2個の原子が結合した状態である。
この結合の方向は、1原子層ごとに90°回転しているので、この表面に形成された
1原子層の島の表面の結合の方向は基板と90°回転した方向になっている。

この島が正方形ではなくて、長方形なのは、ステップ端のエネルギーの差による。
長さの短いステップ端のほうがエネルギーが大きい。

回転する魔法の島

2009-03-01 22:00:05 | 日記
島が回転する。左の島のSTM像から1分後に右のSTM像になっている。

島が回転したように見える。しかし、本当は回転したのではない。

実際には左の写真の島の下半分が崩れて、上半分の右側にくっついて、あたかも回転したように見える。

崩れて、再びくっついても同じ形になるのは不思議なことだ。

この形が、安定な形であることの証明で、この島が魔法の島だからこのようなことが起こる。

魔法の島

2009-02-26 00:04:11 | 日記
400℃に加熱したシリコンの(111)表面にSTM探針の先につけた数万個のシリコン原子をボトンと落としてしばらく待つと美しい島が出来ることは既に話した。

更に待っていると、島はだんだん小さくなって、穴の数が1個、2個、3個、4個、7個、12個の島になる。このように安定な大きさの島が存在し、そのような島のことを魔法の島と呼んでいる。
島を良く見ると、島の端が流れているように見える。

これは、島の端で、原子が取れたりくっついたりしている為に、その原子の軌跡が見えているのである。

安定な島はこのように美しい形をしている。自然とは不思議だ。

シリコンの美しい島

2009-02-24 17:17:39 | 日記
約400℃に加熱したシリコンの(111)表面にSTM探針の先につけた数万個のシリコン原子をボトンと落として、しばらく待っていると、上の写真のような美しいシリコンの島(台)が出来る。

物理の世界(結晶成長の世界)では、これを島と呼ぶが、台でも良い。

この台は1原子層分の高さを持っている。

この台は角の取れた三角形をしているが、これは、この表面でシリコンが三角形の網目に沿って並んでいることと関係がある。

では、なぜ、三角形の角が取れているかといえば、尖っているところからは原子が取れやすいので、だんだん削れてこのような形になったと考えられる。

この台の端はステップ端とよび、正確にはこのステップ端のエネルギーが小さい(ステップの張力が小さい)部分は長くなり、ステップ端のエネルギーが大きい(ステップの張力が大きい)部分は短くなって、このような形になる。(ウルフの法則)