黒猫洞

黒音呼夜の爪とぎブログです。
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ブラックホーク・ダウン

2009-12-06 00:56:26 | MOVIE
大好きな映画の1本。
監督は、リドリー・スコット。
ソマリアでの、米軍と民兵の市街戦を描いた作品。
戦争映画としては、間違いなく歴史に残る傑作だと思う。
 
まず、カメラワークと画面構成がイイ。
立体的な画面作りは、さすがリドリーさん。
どのシーンも、不思議と奥行きの感じられる。
空間認識能力が高くないと、あの映像は撮れない。
多彩なカメラアングルと、巧みなカメラワーク。
要所々々での、カットやアングルの速い切り替え。
”静”と”動”の瞬間的な使い分け。
リドリー監督お得意の、光と影の描写も見事。
芸術的でありながら、どこまでも凄絶。
舞い上がる土煙りや、飛び散る破片。
細かい演出にも手を抜かない完璧主義。
飽きがこず、最大限の臨場感を生み出してくれる。
 
メイキングを見たけれど、撮影風景もさながら戦場。
本物の米軍兵士が、本物の装備でスタントを担当。
リアルなのも納得。
撮影前に軍事訓練を受けた俳優陣も、非常に良い。
厳しい訓練を共にした分、兵士の”絆”が自然に表れている。
 
そして、ジマーの音楽。
ほとんど効果音と一体化していて、音楽だけだとよく分からない曲も多い。
米軍兵のシーンでは洋楽を。
民兵のシーンではアフリカの民族音楽を。
芸の細かい使い分け。
戦闘シーンでも、シンセサイザーと民族音楽を融合させた曲が多い。
現代戦争の機械的イメージと、舞台である東アフリカの雰囲気。
そこに、特有の煽り立てるようなパーカッションが絡む。
激しい戦闘の所々に、物悲しい旋律も混じる。
これが、効果絶大。
激しさの合間の哀しさ。
この作品の”リアルさ”を際立たせていると思う。
 
リアルな戦闘描写は、やっぱりショック。
マシンガンを持った子供が撃ち殺されたり、
死んだ父親に覆いかぶさって泣く子どもがいたり……
先進国じゃ考えられないけれど、やっぱりそれは現実。
 
 
愛する女(ひと)…君は強い
立派に生きていける
君と子供たちを愛してる
すばらしい日々を過ごしてほしい
つらくても笑顔で
希望を捨てずに
君に お願いがある
今夜 子供たちを寝かせる時に
パパが愛してると伝え
抱きしめてやってくれ
そして僕からのキスを…

エンドロールと共に語られるメッセージ。
それは、遺された家族への想い。
エンドロールで、涙腺が熱くなった。
本編中は張り詰めていた気持ちが、弛んだからかもしれない。
でもそれは、感動したからじゃない。
Based On An Actual Event
(この映画は事実に基づいている)から。
―ソマリア人1000人以上
米軍兵士19人が死亡した―
―2週間後クリントン大統領は
ソマリアから兵を完全撤退させた―
 
楽しくないし、幸せな気分にもなれない。
それでも、素晴らしい映画だと思う。