基になっているのは、言わずと知れた童話『ジャックと豆の木』。
プラス、民話『ジャック・ザ・ジャイアント・キラー』。
監督はブライアン・シンガー。
いつも不満を言うわりに、3D(字幕)で鑑賞。
ストーリーは非常にシンプルで、アドベンチャーの王道的な作品。
良く言えば分かりやすく、悪く言えば深みがない、といったところ。
肝心の映像も、取り立てた目新しさこそないけれど、非常に良く出来ている。
個人的には、少しムラと言うか、粗が気になった。
CG全盛期になって何年も経ち、技術的・映像的には常に進歩しているけれど。
空想上の世界や美麗な映像に、観客が見慣れてしまっているのも確か。
ゲームでも、ハイクオリティなフルCGムービーが惜しみなく挿入されますし。
そうした中で、『ジュラシック・パーク』や『ロード・オブ・ザ・リング』の時と同じ驚きを与えるのは、ほぼ不可能。
恐らくはそれを打開する次のステップが3Dなのだろうけれど。
現状、そこまで上手くいっていない気がする。
劇場の3D設備の良し悪しに大きく左右される点も問題。
結局、楽しみよりも”見づらさ”や”違和感”が先行する場合が多い。
今作もその例に漏れず、イマイチ世界観にのめり込めず。
そんな中、注目すべきは豪華な(助演)男優陣。
ユアン・マクレガー、イアン・マクシェーン、ビル・ナイ。
まだ若い主演男優(ニコラス・ホルト)の脇をがっちり固めている。
映像だけでは観客の心を掴めなくなっていく(であろう)以上、彼らのような実力派スターはさらに必要とされるはず。
ツクリモノの世界にホンモノの命を吹き込み、夢と現実を目に見えるカタチでつなげるのが彼ら。
もちろん、目に見えないところで夢を作り上げるクリエーターの力も偉大だけれど。
今作についてというより、映画全体に対するお話になってきたので、ここで軌道修正。
『ジャックと天空の巨人』を簡潔にまとめると、アドベンチャーであり、以上でも以下でもない。
随所に見せ場がある反面、イマイチ盛り上がりに欠けるのが残念。
ユアン・マクレガー好きなのと、なんだかんだ娯楽作には寛容なので、平均点ですが。
ファミリー層、ライトな映画ファン、気楽に楽しみたい方にオススメ。
ちょうど休みだったので、公開初日に観賞。
監督は言わずと知れたピーター・ジャクソン。
『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚にあたる物語。
個人的には、『指輪物語』より先に『ホビットの冒険』を読んでいて。
(たぶん小学生の頃かな?)
『ロード~』公開当時、なんで『ホビット~』を飛ばしたんだと不満に思っていた。
そういう意味では、10年くらい前から映画化を望んでいた作品。
例によってストーリーには触れないけれど、やはり端折ってあるところは多い。
『ロード~』もそうだったし、原作が存在する映像作品にはよくあること。
詰め込み感があるのは、仕方ないこと。
次作へと続く区切りも、だいたい予想通り。
『ロード~』の旅の仲間がホビット、人間、エルフ、ドワーフの混成軍だったのに対し、
『ホビット』の一行はドワーフ×13+ホビットという偏りよう。
種族ごとの違いを出せない分、個々のキャラクターの差別化が難しくなる。
原作ファンにとっては、それぞれに膨らませてきたイメージもある。
なので、そこが少し不安だったんだけれど。
『ロード~』ほど全員の個性が際立つことはなかったけれど、キャラはきちんと反映されていて。
トーリンをカッコ良いイメージで作りあげてくれたのは嬉しかったかも。
そして、一行には含まれないけれど、魔法使いのラダガストが妙にかわいかった。
さて、何よりこの作品に期待すべきは、その映像。
『ロード~』公開当時、その圧倒的な映像に驚かされたのは今でも覚えている。
今でこそ、多くの映画、果てはゲームですら同レベルの映像を見ることができるけれど。
その流れを加速させたのは間違いない。
で、10年あまりの時を経て製作された今作。
飛躍的に技術が進歩したこともあり、『ロード~』を遥かに上回るクオリティに。
特に必見なのは、終盤の大鷲が出てくるシーン。
『ロード~』にも登場したけれど、全く別次元の仕上がりになっている。
ワーグ(というクリーチャー)なども、よりリアルな質感と動きに。
音楽は前3部作から続投のハワード・ショア。
アレンジされたメインテーマはもちろん、大満足のスコア。
いかにもファンタジー、これこそ映画音楽という感じ。
ちなみに3D字幕版を見たんだけれど、画面の暗さ、見づらさはあまり気にならず。
ストーリー上、薄暗いシーンが多いから不安だったんだけど。
まだまだ技術に振り回された作品が多い中、さすがはピーター・ジャクソン。
きちんと空気感や遠近感を掴めているから、最先端の技術が活きてくる。
『アバター』を見て以降、ずっと思っていたけれど……
3Dは”飛び出させてビックリさせよう”という魂胆で使うものじゃないんだ、と。
大切なのは画面に奥行を与えることで、飛び出したりするのはプラスαの要素。
それを分かっていて、実現するだけの能力と資金調達力のある監督(を含む製作サイド)は少ない。
撮影機材のシステムを考案してまで、思い描く映像をカタチにしようとする。
その熱意があるから、クオリティの高い作品が出来上がる。
そういった点でも、今作は非常に高得点。
とにもかくにも、これぞスクリーンで見るべき映画という感じ。
原作ファンも、そうでない人も、どちらも楽しめると思う。
シリーズ50周年という節目の年の、23作目。
ダニエル・クレイグ主演としては3作目。
監督は『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス。
超アクション大作の007に、この監督の起用が吉と出るか凶と出るか。
不安と期待が入り混じった状態で鑑賞。
ネタバレを避けるために、ストーリーにはあまり触れないけれど。
クレイグ版ボンドになって行われてきた世代交代が、さらに進む展開。
ただキャストを交代させるだけではなく、それにきちんとした脚色がなされている。
そういった意味では、サム・メンデスの監督起用は大当たり。
MI6を”家族”に見立てた構成で、ボンドだけでなく、周囲のキャラクターも再構築されていく。
冒頭は、お約束のチェイス&アクションシークエンス。
これは007や『M:I』シリーズに欠かせないオープニング。
クレイグ版になってから、アクションがリアルさ重視になったけれど。
今作でも期待を裏切らない、畳みかけるような怒涛のアクション。
ここだけでも、映画館に行った甲斐があるというもの。
これも『M:I』シリーズと共通するけれど、世界各地でのロケによる映像も見もの。
ちなみに、日本でも撮影しているので要チェック。
ダニエル・クレイグのボンドにも、だいぶ見慣れてきた感が。
余裕のなさというか、ストイックすぎて色気がない面は、違和感あるけれど。
007は世界情勢を反映してきたシリーズであり、ボンドもまた然り。
時代に応じて変化していくのは、当然の流れ。
前2作の段階では、ただ”変わってしまった”という印象が強かったけれど。
今作では、散りばめられてきたピースと理由が結びついた感覚。
製作側が狙っていたというよりは、監督の手腕によるところが大きい気がするけれど。
悪役シルバに扮するのは、ハビエル・バルデム。
ルックスは好みじゃないけれど、さすがの演技力。
ちょっとした表情や仕草、言葉にならない”擬音”での表現が上手い。
新顔としては、他にもヴォルデモート卿(笑)ことレイフ・ファインズなど。
全てを一流で揃えられるのが、この規模の作品の良いところ。
音楽はサム・メンデス監督とタッグを組むことの多いトーマス・ニューマン。
手がけた中で有名なのは『ショーシャンクの空に』と『グリーンマイル』。
複雑で味のあるスコアは、今作のエモーショナルな要素にマッチしている。
全体的には、クレイグ版ボンドになってからは一番の高評価。
ようやく”変化に納得”できたのかもしれない。
確かに今作も「やっぱりコレは007じゃない」と言うことはできるけれど。
純粋に1つの作品として見た時に、完成度もクオリティも高いわけで。
世界も情勢もボンドも変わっていくなら、観客も変わっていくべき。
どう捉えるか、どう受け止めるか、その中で自分はどう在るか。
再構築の選択を迫られていたのは、ボンドだけではないのかもしれない。
製作ティム・バートン、監督はティムール・ベクマンベトフ。
エイブラハム・リンカーンが実はヴァンパイアハンターだった、という荒唐無稽なお話。
ベクマンベトフ監督の『ウォンテッド』がまぁまぁだったのと、バートンさん絡みなので見に行ったんだけど。
率直に言ってしまうと、個人的にはけっこうなハズレ。
多少なりとバートン風の”良さ”を期待していたのだけれど……
むしろ、バートン作品のデメリット(VFXの粗さ、突拍子のない展開など)はしっかり反映されていて。
そのデメリットを補って余りある世界観は、バートンご本人でないと作れない。
ベクマンベトフ監督が得意とするスタイリッシュさ、スピード感という要素も、イマイチ世界観と噛み合わず。
3D作品だったせいもあり、見づらさが際立ち、爽快というよりは”雑”な印象。
どうも製作と監督、2人のマイナス要素が集約されてしまった感が。
あくまでも、個人的な感想ですが。
評価を下げているもう一つの要素が、パっとしない役者陣。
リンカーン役のベンジャミン・ウォーカーを筆頭に、演技力もルックスも”まぁまぁ”な感じ。
際立った個性がない分、特殊効果満載の中で霞んでしまっている。
もちろん、リンカーンという実在した偉大な人物を演じるのは(フィクションとは言え)難しいけれど。
史実に基づいているワケではないのに、中途半端に似せたところで意味がない気がする。
若手メインでの起用は良いけれど、もう少しインパクトのある俳優なり女優なり参加して欲しかったかな。
音楽を担当したのも、ここ数年で出てきたヘンリー・ジャックマン。
今まで聞いたことなかったけど、アニメ映画を中心に楽曲を提供してきたようで。
鳥肌が立つというほどではないにせよ、なかなかセンスの良いスコア。
この作品の中では、ほぼ唯一の高得点。
プロフィールをまだ調べていないけれど、若いんだろうし、これからに期待。
そして、これは今作に限ったことではないけれど。
やはり今の段階では、3D映画を全面的に指示することはできない。
アニメ映画では非常に効果的な手法だと思うけれど、実写でやろうとすると制約が多くなってしまう。
スピーディな映像や背景が見づらくなるし、何より画面全体が暗くなりがち。
もう何年も経つのに、未だに『アバター』を超える作品は現れない。
あの作品のために開発されたシステムと言っても、過言ではないわけで。
それを前提にして、すさまじい時間と費用と熱意をもって生み出されたからこその完成度。
上っ面の技術面だけマネたところで、大した作品は生まれてこない。
本当に3D作品にする必要があるのか、3Dでなければ表現できないものなのか、考えて作ってほしいかな。
3D作品として公開したばっかりに、評価を落としたものもたくさんあると思いますし。
ということで、『リンカーン/秘密の書』は残念ながら辛口な評価になってしまいましたとさ。
この手のB級(笑)作品には寛大な僕としては、けっこう珍しいことですが。