(※漫画「エースをねらえ!」の二次小説です。内容にネタバレ☆等を含みますので、一応ご注意くださいm(_ _)m)
この曲を聴くとどうしても、第一部の終わりを思い出して、胸が切なくなります
え~とですね、前にどこかに書いたとおり、わたしが今回「エースをねらえ!」に嵌まるきっかけになったのが、TVでやってた「エースをねらえ!2」でした
しかも、最初に見たのが第5話の「残された日記」の最後3~5分くらい(^^;)
言ってみれば、ある意味物語的に一番キツイところですよね
そんで、小学生くらいの頃にアニメ見てた記憶として……わたしは頭の中で、「宗方コーチは生きている!」ってずっと捏造してたというか
なんでそんなことが起きたかっていうと、たぶんあんまり幼すぎて、主人公に近しい登場人物が死ぬわけないとか、すごい先入観があったのかなって思うんですけど、実はもひとつ理由があったりもして。。。
う゛~ん。自分でもなんでそんな<記憶違い>をしてたのかとか、まったくわからないにしても、わたしの頭の中では、宗方コーチ=不治の病=何かのガンらしいっていう記憶のインプットがずっと残ってました。
まあ、白血病って、血液のガンとも言われますよね。だからそのせいかなと思うんですけど、宗方コーチはガンで手術することになった、だからひろみはひとりで渡米することになったけど、宗方コーチが手術して絶対良くなると信じ、自分は元気になった宗方コーチに勝利の報告をするため、がんばることを決意し旅立つ……というのが、わたしの中でずっと捏造されてた「エースをねらえ!」というアニメのラストでした
いえ、ほんと「えっ!?全然話違うじゃん!!」っていう話ですよね(^^;)
そんでさらに、この話には続きがあって、宗方コーチは抗癌剤治療でツルッパゲになって戻ってくるんですけど、手術は無事成功していて、アメリカから戻ってきたひろみのことを、また鬼コーチとしてしごきはじめるという……。
なんかもう、わたし、小学生の時からそんなに妄想好きな子だったの!?とか、ちょっと唖然とします
でもわたしの記憶の中じゃあ、物凄くシーンとしてはっきりくっきり残ってるんですよ。宗方コーチが「自分は手術に耐えるから、おまえはおまえのテニスをがんばれ」的なことを言う場面と、ひろみはひろみですごく不安なんだけど、でもコーチは絶対に良くなる、元気になったコーチに勝利の報告をするためにもがんばらなくっちゃ!!って思ってるシーンのふたつが。。。
人間の記憶って、本当に不思議ですねえww
そんで今回、「エースをねらえ!2」を見て、何故そんな記憶の捏造が起きたのかがわかった気がしたわけです
なんでかっていうとわたし、最初桂コーチのことを見て、宗方コーチだと思いましたから(^^;)
そんで、桂コーチが宗方コーチの遺影の前にいるシーンを見ても、まだ宗方コーチが本当にお亡くなりになってるとはまったく思ってなくて。。。
「えっと、宗方コーチ生きてるよね?これはたぶん、一度死んだと見せかけておいて、ひろみのことを精神的に強くするための作戦で……」
いや、そこまでおまえは宗方コーチの死を認めたくないのかっていう話(苦笑)
でも日記の内容などから、「宗方コーチは間違いなくお亡くなりになっている」っていうことがわかって、今回初めてわたしも宗方コーチの死を受け容れざるをえなくなりました
うん、ここからわたし、自分の中でなんであんな記憶の捏造が起こったのかが気になって、原作では宗方コーチの死はどう描かれてるんだろうとか、色々知りたくなったんですよね(^^;)
しかも、よりにもよって、なんであんな場面からアニメを見ることになったのか……自分でも「これはたぶん何かあるな~☆」と思って、次の日から引き続きテレビで「エースをねらえ!2」を見ることにしたというか。。。
まあ、宗方コーチの死が原作・アニメともに確定してる事実は悲しかったんですけど、わたしの場合<今>だからこそ宗方コーチの死をようやく受け容れるというか、受け止めることが出来たんじゃないかという気がします
う゛~んわたしが初めてテレビで宗方コーチを見た時、たぶん年齢的にまだ一ケタ代だったと思うんですけど、それから宗方コーチがお亡くなりになった年を越えている自分がいて……それだけの歳月の隔たりがあるにも関わらず、「エースをねらえ!」という漫画はまったく色褪せない名作として輝き続けているというか
いや、本当にすごいと思います。名作と呼ばれる作品の力って。。。
だって宗方コーチってほんと、実在したテニス界の名コーチとしか思えないですもんね(^^;)
そんなわけで(どんなわけだか☆)、今回捏造に捏造を重ねた記憶をさらに捏造したような夢小説を書くことになったんだと思いますww
ではでは、前文がすごく長くなっちゃったので、とりあえずこのくらいにしておきますね
なんにしても、今回の↓の本文は、宗方コーチの語りで、藤堂たんの登場ということになってます♪(^^)
それではまた~!!
Grand Stroke-2-
Side:仁
突然、かつての教え子、藤堂貴之から呼びだされて、俺は驚いていた。
岡と別れてから、おそらく半年以上になるだろうか……彼もまたプロのテニスプレイヤーとして、岡と同じく試合のために世界中を駆け回っているという身の上だった。
岡と藤堂が別れて良かった、と俺が思ったことは一度もない。何分、岡もまだ二十歳で、毎日テニス・テニスばかりでは、息が詰まってしまうだろう。そういう時に、自分の恋人と国際電話で話をするだとか、たまに会ってデートをする、そういう息抜きがあるというのは、両者にとって互いに刺激を与えあえるいいことだと思ってきたからだ。
俺はあくまで岡のテニスのコーチであり、藤堂のかわりにまではなれない……そういう自分を、よく自覚しているつもりだった。せっかくここまで磨き上げた宝石を、わざわざ自分の手で潰すほど俺は愚かではない。
そういう意味あいにおいて、岡が藤堂と別れたということは――俺にとっては残念なことですらあったといえるだろう。
「すみません、急にお呼びたてして」
「いや、構わんさ。それより、おまえも来週はイギリスへ行く身だろう?まあ、忙しいのはお互いさまといったところだな」
俺はウェイトレスにアメリカンを注文すると、煙草に火をつけて吸いはじめた。
途端、藤堂が少しばかり微妙な顔つきになるのを見て――俺はすぐに灰皿の上で火を揉み消した。
「すまん。つい、いつもの癖でな。スポーツ選手は体が資本だし、煙草の副流煙っていうのは……」
「違うんです」と、藤堂は険しい顔のまま、俺の言葉を遮った。「宗方さんにもわかっているはずだ。僕がここにあなたのことを呼びだしたのは、他でもない岡くんのことで、です」
暫くの間、微妙な沈黙が続いた。喫茶店の窓からは、夜のイルミネーションを背景にして、行きかう人々の波が見える。俺はなんとはなし、道路を挟んだ向こう側、そこにあるテニスショップのディスプレイを眺めつつ、藤堂の次の言葉を待った。
その間に、ストライプのエプロンを着た若いウェイトレスが、アメリカンを置いていく。
「僕は半年ほど前に、ここで、この席で岡くんと別れました。聞いてらっしゃるかもしれませんが、別れを切りだしたのは岡くんのほうで……僕は彼女にもう少し食い下がりたい気持ちがありながらも、男としてそんな見苦しいことはすまいという気持ちから、すぐに身を引くことにしました。何故僕がそうしたのか――宗方コーチ、あなたにならわかるでしょう?」
「ああ」
短くそう答えて、俺はアメリカンに口をつけた。
「僕は、プロのテニスプレイヤーになってから、とてもつらかった。人間というのはこんなに孤独なものだったのかと、生まれて初めて思い知るような気持ちで眠ったことが、幾夜となくあります。でもそんな時に、いつでも岡くんの存在が、僕の心の支えでした。苦しいのは何も自分だけじゃない。彼女もまた、今ごろ同じように迷いの中にあり、苦しみながら試合に臨んでいるだろう――そう思って頑張ったことが、何度もありました。でも岡くんには、僕と違ってあなたという存在がいた。僕はいつだって、岡くんの隣にあなたの存在を見てきました。彼女と別れることになった時、唯一僕がほっとしたのはその点についてだけです。これからはあなたのことを思って、胸に痛みを覚えることはなくなるだろうと、そう思っていました。でも、この間の東京の国際試合を見ていて、初めてわかったんです。岡くんは僕と別れ、そして宗方コーチ、あなたのことを選んだのだとばかり思っていた。でも彼女はたぶん、あなたに自分の気持ちを打ち明けてはいない……そうですね?」
「藤堂、おまえのいう話というのは、そんなくだらんことだけか?」
俺は再び、煙草の箱を手にとると、喫茶店のマッチで火をつけた。
「俺は、一度おまえと岡の関係を認めてからは、そのことについて一切口を出した覚えはない。もちろん、おまえと別れたとは、岡の口から聞いた。もしかして、藤堂、おまえは俺がそのことを喜んだとでも思ったのか?これで岡はテニスプレイヤーとしてテニスに集中できるだけでなく、俺のこの手で女にもしてやることが出来ると……そんなふうに俺が思ったとでもいうのか?」
少し、言葉遣いが直截すぎただろうか。だが俺も、まだるっこしく、まわりくどいのは苦手だった。むしろそんな話を藤堂がえんえんと長く続けるつもりなのであれば――今すぐにでも席を立って家へ帰りたかった。
そして、藤堂が黙りこくったまま、三分ほどが過ぎた頃、俺が席を立とうと思った瞬間に、彼は険しい表情をふと緩めていた。
「恋愛というのは、残酷なものですね」
気分を落ち着かせるためか、コーヒーを一口飲んでから、藤堂は話の先を続けた。
「僕があなたのことを責めるのは、もちろん筋違いだとは思います。でもてっきり僕はこう思ってばかりいたものですから……岡くんは僕のことではなく、テニスとテニスのコーチである宗方さんを選んだ。となれば当然、すぐにもそうした関係になっているはずだと……でもそうではなく、岡くんは師であるあなたに対する遠慮からか、自分の気持ちを打ち明けることさえ出来ずにいるのだと知った時、僕は思いました。だったら自分はなんのために身を引いたのかと。そしてそれが今日、僕があなたのことをお呼びたてした理由だったんです」
「俺は――確かに、テニスプレイヤーとしてだけでなく、岡のことをそれ以上に愛している。だが、時が熟すまで待たずに、博打を打つつもりはない。今俺に言えるのは、そのことだけだ」
先ほどのとは、また別の種類の沈黙が、俺と藤堂の間に流れた。そして俺が伝票を手にとり、席をあとにしようとした時のことだった。
「岡くんに、言っておいてください。これからも西校のOB・OGとして、あるいは同じプロのテニスプレイヤーとして、顔を合わせることというのは、何度となくあるでしょうから……その時には気まずい思いなんてせずに、普通に友達として接してほしいと。そしてこれからも同じ世界に生きる者同士として切磋琢磨していこうと、そう僕が言っていたと伝えてください」
「わかった」
俺はそう短く答えただけだったが、藤堂の顔の表情から察するに、彼には俺の気持ちが十分伝わったようだった。そう――俺は藤堂であれ他の誰であれ、岡のことをテニスプレイヤーとしてだけでなく、女としても見ているとは、口に出して言うつもりはなかった。
だが、岡がテニスプレイヤーとしてあそこまで成長したことの陰には、藤堂の精神的な支えが大きく影響している。俺はそのことに対して敬意を払い、同じ男として本当の気持ちを伝える義務があると思ったのだ。
もし、岡のことを抱いてしまえれば、どんなに楽なことだろう……と思ったことが、俺には何度となくある。だが、そのことを思い留まれたことの裏には、藤堂の存在が大きく働いていたといえるかもしれない。
(岡、おまえはまったく、こんなにいい男をふたりも手玉にとって――実際、女としても大したものだと言わざるをえない。大体、俺にしてみたところで、藤堂でもなく俺でもなく、まったく別の第三の男なんていうのが現れたら……そんな男のことは一目見るなりぶっ飛ばしているに違いないからな)
俺は歩いて帰る道の途中、電器店の店先にあるテレビの前でふと立ち止まった。
『岡選手、暑い時に体を冷やすには何がいいですか!?』
『シャキーン!!そんな時にはこれ。シャッキリスッキリ甘くて美味しい、柚子りんこ♪
柚子味の、心がときめくアイス、発売中です!!』
岡が自分のスポンサーとなっている某企業のCMに出演している姿を見て、俺は微かに笑った。実際のところ、藤堂が今抱えている気持ちを、俺が一年後に味わっている可能性というのも、否定できないと感じる。
日本人のテニスプレイヤーとして、ウィンブルドンでベスト8の快挙、またランキングを上位に保っているということは――テニス選手として、岡のことを国民的なアイドルに近い存在にまで押し上げていた。
その岡の幸せを思うなら、彼女がどこぞの御曹司と結婚しようかという時、俺はただのテニスの監督として身を引く以外にはないだろう。そしてそんなことに思い耽りながら、俺は街角の電器店の前をあとにしていた。
>>続く。