ポコアポコヤ

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「今はちょっと、ついてないだけ」伊吹有喜 感想

2017-01-09 | 小説・漫画他
「今はちょっと、ついてないだけ」
伊吹さんの本は、これが初めてでしたが、とても読みやすく、面白かったです。
温かい気持ちを持った方なんだろうなあーと言うのが小説から感じられました。

まずは、この本のタイトル「今はちょっと、ついてないだけ」という言葉に惹かれますねー。
内容を全く知らないで読んだのですが、メインの登場人物が、自分と同じくらいの世代の立花と宮川たち、バブル時代に20代前半を過ごした人達でした。また、30代の瀬戸さんや40代の佐山さん、お笑い芸能人の会田等がからんできます。
全体的に、今はちょっとついてない時期にいる人達が、がんばってみよう!と奮起する内容で、後味も良かったです。4つ★~4つ★半

表題作含め、7つの章がありますが、全部繋がっているお話なので、短編集というわけではないですね。
やっぱり最初の章、表題作が一番面白かったし、好きでした。

★今回は、ネタバレ全開であらすじ、感想を書いていますので、注意です!!★

今はちょっと、ついてないだけ
バブル時代に人気の写真家だった立花は、事務所の社長の借金を返すために15年間、働いて来た。やっと返済が終わったものの、パチンコで時間をつぶし、入院中の母のお見舞いに毎日通っていた。
そんなある日、入院中の母と仲が良かった宮川さんという女性が退院するにあたり、写真を撮影してもらいたい・・という話になっていたが、その息子の宮川という男に、無神経な物言いをされてしまうのだった。
この15年間、カメラから離れていたものの、なにげなく携帯で撮影した写真が、思いがけなく良く撮れていて、また写真屋さんで、宮川さんを写した写真を加工するにあたって、色々相談しているうちに、やっぱり自分はこういったことが好きだ、と再認識するのだった。

パチンコ屋でもらった、ちょっと豪華なチョコレート、メリークリスマス& HAPPY NEW YEARと書かれているものを手土産に病院に行くも、母にキツイ事を言われる(はっぱをかけられ)も、母から郵送で、そのチョコが再送されてきて、この前はキツイ事を言ってしまったけれど、母は息子の事を誇らしく思っており、借金を返して偉かったと、先日のキツイ物言いのお詫びと、励ましの言葉が書かれていた。
もう一度東京でがんばってみようという決意をするのだった。

朝日が当たる場所
宮川は、幼い頃、水商売をしながら養ってくれた母と、そのアパートの記憶を今も持ち続けている。
結婚し婿養子の様な暮らしの中、段々母をないがしろにするようになってしまった。

病院退院後、施設に入った母は、年末年始の忙しい時に具合が悪かったが、スタッフさんを煩わせたら申し訳ないと、黙っていたことで、結局あっけなく亡くなってしまった。
母が亡くなる前のわずかな期間、立花が母を訪ねて写真をプレゼントし、また宮川の娘(彼女の孫)のバレリーナは、祖母の紹介から、立花に写真を依頼し、交流を持つようになる。
宮川は自宅に飾ってある、退院の時に無意識に撮られた、優しい母の表情と自分の写真を、よく眺めていたのだった。

宮川は、テレビ等の番組を作る仕事をしていたものの、リストラ要員になり、結局仕事を辞めてしまう。その後妻とうまくいかなくなり、家を出て行くことになる。
娘が出演している劇場を見に行った後、具合が悪くなった彼を、背負って自宅まで運んでくれたのは立花だった。

薔薇色の伝言
ヘアメイクなどの仕事をやってきた瀬戸。これから先の仕事の事、人生の事、色々悩んでいる。
シェアハウスで一緒の立花と、途中から入って来た調子の良い宮川、彼らが撮影で連れて来た、佐山という女性に、ちょっとだけメイクを付け加えた事で、人生が急展開することになる。

そして、道で声をかけてきた謎の女性。とても口が上手くて、のせられて色々話してしまう。
そして、やっぱり勧誘だったのね・・。

甘い果実
佐山智美さん、リゾラバのお話。
えっつ!!チェックアウトの際に、スペシャルマッサージ7日分として・・って、それ、お仕事だったのね?お金を請求されるのね?と、茫然・・・。なのに、それを解った後も延長する・・・うわーー!!すごい割り切りだ!!
そして、この後の章で、一旦日本に戻った後も、英語を勉強したり、また彼に会いに行くのを楽しみにしているらしい佐山さんを知って、切ないというか・・・なんだか微妙な気持ちになりましたよ・・・。

それにしても、婚活で知り合った商社マンの鈴木には、腹立ったわー!
「コンビニ人間」でも、こういった失礼極まりない発言を相手に言える男が登場してきたけど、私がこんな事言われたら、凄く落ち込むわー。

ボーイズ・トーク
立花の大学の同級生だった岡野が、懐かしく思って接近、また仲良くなる話

テイク・フォー
売れなくなった芸能人の会田。マッチョになった体を武器にして、再浮上を狙う。

羽化の夢
みんなが暮らしていたナカメシェアハウス、出て行かなくてはならなくなって

映像化するなら、立花には、ちょっと疲れメイクをした福山雅治かな・・いや、風間トオルで。
伊吹さんの他の本も読んでみたくなったので、「四十九日のレシピ」を次に読んでみようと思います!

今はちょっと、ついてないだけ 2016/3/17 伊吹 有喜
内容(「BOOK」データベースより)
かつて、世界の秘境を旅するテレビ番組で一躍脚光を浴びた、「ネイチャリング・フォトグラファー」の立花浩樹。バブル崩壊で全てを失ってから15年、事務所の社長に負わされた借金を返すためだけに生きてきた。必死に完済し、気付けば四十代。夢も恋人もなく、母親の家からパチンコに通う日々。ある日、母親の友人・静枝に写真を撮ってほしいと頼まれた立花は、ずっと忘れていたカメラを構える喜びを思い出す。もう一度やり直そうと上京して住み始めたシェアハウスには、同じように人生に敗れた者たちが集まり…。一度は人生に敗れた男女の再び歩み出す姿が胸を打つ、感動の物語。

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6 コメント

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Unknown (苗坊)
2017-01-10 22:18:15
こんばんは。
TBとカキコありがとうございました。

伊吹さんは「王様のブランチ」に何度か出演されたことがありましたが、凄く綺麗で、落ち着いていて言葉を大事にされている方だなという印象を受けました。

この作品はまずタイトルが良いなと思って読みましたが、内容もやっぱり良かったです。辛いなとその時は思っていても「今はちょっと、ついてないだけ」って思うだけで少し頑張れる気がします。
立花を始め周りを取り巻く人たちもみんな良かったです^^
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苗坊さん☆ (latifa)
2017-01-11 17:01:15
苗坊さん、こんにちは!
なんと!王様のブランチに出演されていたことがあったんですね?
知らなかったー。見たかったなあ・・・。
そのころは、伊吹さんの存在を知らずにいたので、もしかしたら、見ていたのに、記憶に残らずにいたのかも・・・もったいないー。

そうですね!誰しも「今はちょっと、ついてないな」って思う期間ってあると思います。
そういう共感できるようなタイトルが、まずは、ナイスです。
内容も勿論良かったです!

良い本を教えて頂けて、感謝です!
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中年のリスタート (日月)
2017-01-22 23:45:01
ナカメシェアハウスの面々が

宮川も最初はヤなやつだな、と思ったのに、親孝行だったり、立花に協力したり、いいやつなところもあって意外だったけれど、人間、その時々の気持ちで印象が変わったりしますものね。

「BAR追分」の宇動くんもそうでしたが、伊吹さんて、人によって印象が違うキャラクターの書き方がすごく上手い人だと思います。
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日月さん☆ (latifa)
2017-01-23 17:20:58
こんにちは、日月さん
そうなんですよね、宮川は最初の章で、とんでもない嫌なヤツって思っていただけに、次の章での母親への愛情とかを見せられると、ね・・。

その後の章での彼の印象が、どんどん変わって行ってしまって、

「BAR追分」は、未読なんですよー。
この作家さんの本、近々読んでみようと思っているところです!
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Unknown (みど)
2017-05-18 21:56:51
こんばんわ。実はかなり昔にこちらにお邪魔していたこともあったのですが、遠のいていて・・・ふと検索したらまだバリバリ書いてらっしゃる!
しかも相変わらず詳しく!
と喜んで読んでしまいました。
この、今はちょっと・・・、私も最近読んだんです。ポコアポコヤさんは1月、ちょっと前ですみません。でも、よかったですよね!私の今の心境にぴったりな本でした。宮川の、初めの慇懃無礼な態度に眉をひそめたけど、後半ほんとにいいやつになっていって。しかもオヤジギャグが結構ツボ。同世代~という親近感。
今度映画化される、ミッドナイト・バス、これから読みます。楽しみです。
ではまた伺わせてくださいね。
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みど(みどりさん^^) (latifa)
2017-05-19 13:42:39
わーーい!みどさん(もしや、みどりさんかなー?)
お久しぶりの訪問、とっても嬉しいです
バリバリではないのですが、いまだに、まったりと、のんびりペースで続けておりますです。

これ、読まれたのですねー、タイトルも内容も良かったです。
みどりさんの今の心境に合ったとのこと。
同じ内容でも、自分のその時の体調やら心境で受ける印象って全然違ってくるんですよね。そういう点でもナイスタイミングだったようで、何よりです。

そうそう、宮川さん。
最後まで読んで、こんなに印象が変わるキャラも珍しいかもしれませんね。

ミッドナイト・バス
おお、映像化されるのですね、知らなかったです。
私も近く読んでみたいと思います!
キャストを見たら、原田泰造さんが主演なのね? 
少し前に、伊吹有喜さん原作の「四十九日のレシピ」を、映画→小説の順に見た・読んだところだったのです。
映画では、ヒロインの夫役が、泰造さんでした。すごく嫌な奴の役なのだけれど、泰造さんが憎めない印象があるので、映画から受ける印象は小説よりマイルドでした。

みどりさん、またお気軽に立ち寄ってくださいましー
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