ポコアポコヤ

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「からまる」「おとぎのかけら 新釈西洋童話集」千早茜

2011-04-16 | 小説・漫画他
「魚神」で印象的だった千早茜さんの本2冊。半年くらい前に「おとぎのかけら 新釈西洋童話集」を読んで、その後最近「からまる」を読みました。
前2作がそれぞれファンタジックな昔話だったのもあって、「からまる」はとても新鮮でした。初の現実的なリアルなお話ですが、凄く良かったです。

「からまる」
登場人物が少しずつ繋がっている連作短編集。それぞれのお話に、無脊椎動物が登場してきます。それらの生き物が、お話のスパイス役になっています。

「まいまい」かたつむり
武生は地方公務員。たまに猫の様にふらりとやって来る女がいる。女は寝床から見上げられる天窓のあるこの部屋が好きだった。仕事場で自分に気があるらしい田村という女性と、つい一晩過ごしてしまった。運悪くその朝、いつもの様に女はやってきたが、田村のパンプスを見て黙って立ち去ってしまった。

「ゆらゆらと」 くらげ
(武生にふられた)田村は、失恋すると必ず華奈子という美しい友達に会って慰めてもらう。田村はいつも男にふらふらしている自分と正反対の、凛とした自分というものをもっている華奈子が好きだ。

「からまる」イソメ
(武生の温厚な上司である)男。妻から不倫したと告白された。釣りに出かけた先で、「高遠」という名前の女子高生が話しかけてきた。妻の不倫した男の娘だった・・。

「あししげく」ムカデ
(武生の姉)の恵の19歳だった時、息子の蒼真を身ごもった頃のお話。
水商売でバイトをしていた恵は、客の篠田という男が嫌いだったが、一度くらいいいか・・と思って寝てしまう。

「ほしつぶ」バクロギプシナ・スファエルラタ
(武生の甥であり恵の息子)蒼真は金魚を殺した一件で、学校でも家でも大問題に・・。
殺した理由は、幼馴染の気の弱い斉藤が金魚の世話を一人押しつけられながらも律儀にやり続けているのを横で見ているといらいらしたからだった。
両親と海にドライブに行った先で、見知らぬおじいさんと会話し、美しい星の砂も、元はというと海に漂っているゴミみたいな虫であることを聞く。

「うみのはな」ヒドラ
(田村の友人、蒼真の家庭教師)の華奈子。田村とのエピソードで、すっかりレズだとばかり思っていたが、実は隠された事実が。
実は、ある男が嫌いで女の子が好きだと周りに言っている。友人の田村はそれを本気で捉えているようだった。華奈子が男を嫌いなのは、ただ1人の男がたまらなく憎いからだった。だから、実家にもあまり帰らずにいる。

「ひかりを」
(蒼真が海で出会ったおじいさん、田村の病院に入院している)
葛月は外来の終わった診察室に1人の老人が座っているのを見かける。
ミツヤサイダー、キリンレモン、スプライト・・など、それぞれの人をソーダで分けるのが面白かった。

全編通して、水の中でゆらゆら揺れている水中花や生物の様なムードが漂っていて、独特な雰囲気。でもしっかり内容もあって、繋がりも自然で、最後の章まで読み終えた時の読後感がとても良いです。かなり素晴らしい出来の本。4つ☆半~5つ☆

登場人物の武生や、華奈子は、一見ひょうひょうとしていながらも、実は内に熱いものを秘めているところが意外でした。
若い頃の恵と、兄の前での華奈子、気の強さと強がり過ぎるところなど、にてるな^^

★以下ネタバレ 白文字で書いています★
大原さんというおじいさんが、思いがけず2人の人間に、生きる意味というか・・を教えてくれます。一人目は蒼真、もうひとりは女医さん。
最後、今まさに、役所に向かおうとする女医さんの姿が。心の中で彼女も、武生のもとに行ってみよう!という決意をしていたんですね^^
いやぁ~こうしてみると、最初の1話で武生が彼女を追ったシーンは、本当にドラマチックですてきなラブシーンだったなぁ~としみじみ思うのでした。
以上

からまる/ 2011-02-26
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「おとぎのかけら 新釈西洋童話集」
黒地に真っ赤なレース模様の装丁も素敵です。
面白かったのだけれど、以前にもこういった有名な童話の新たな焼き直しというか・・・別バージョンみたいな本を何冊か読んだ事があったせいで、あまり目新しさを感じられませんでした。千早さん的テイストは感じさせられたんですけれどもね・・。3つ★

迷子のきまり─ヘンゼルとグレーテル
鵺の森─みにくいアヒルの子
カドミウム・レッド─白雪姫
金の指輪─シンデレラ
凍りついた眼─マッチ売りの少女
白梅虫─ハーメルンの笛吹き男
アマリリス─いばら姫

おとぎのかけら 新釈西洋童話集
千早 茜 / 2010-08-26

魚神

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3 コメント

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Unknown (苗坊)
2011-04-16 20:13:41
こんばんは^^
「からまる」とても好きです。
いろんな人間関係がまさに絡み合っていて読んでいて引きこまれました。
この不思議な世界観が良いですよね。
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苗坊さん☆ (latifa)
2011-04-18 10:19:36
苗坊さん、こんにちは
千早さんの世界、とても良いですね。
もしかしたら、今までの3作の中でも「からまる」が私は一番好きかもしれません。
今後も追いかけて行きたい作家さんです。

>私がTBさせていただいてからできるって言う場合もあるみたいなのですが。
 やってみたら、みごと今度は飛ばせました
返信する
風早真希さん (latifa)
2023-07-15 10:39:01
風早真希さん、コメントありがとうございます!
とても丁寧なコメント、考査嬉しかったです。

しかしながら、これを私が読んだのは10年以上前の様で、、、
哀しい事にほとんど忘れてしまっております。
自分の感想読み返しても、蘇って来ないなんて..
ほぼ5つ☆つけたお気に入りだったのに

本当に申し訳ないです。

ちゃんと反応出来なくて歯がゆいわ
再読してみたいです。。
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