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ネタバレあらすじ「愚者の毒」 宇佐美 まこと

2017-10-12 | 小説・漫画他

何かで紹介されているのを見聞きして、面白そうだな・・とリクエストしたはず(全然思い出せないのが恐ろしい・・)の本が図書館で回ってきました。
少し読み始めると、面白くて、先へ先へとページが進み、結構なボリュームの本ですが、2日で読み終えてしまいました。

3章から構成されており、第1章では1985年の武蔵野の生活、第2章は1965年の筑豊編、第3章は2015年の伊豆の高級老人ホームが舞台になっています。

第1章
2015年の様子が少し描かれますが、メインは1985年のお話です。
上野の職安で出会った同じ誕生日の葉子と希美が親しくなります。
2人はそれぞれ、訳ありの人生を送って来ており、苦労人です。
葉子は自殺した妹の借金の取り立て屋に追われて夜逃げし、妹の息子で、言葉を発しない達也を育てなくてはならず、生活に困っています。
そんな葉子に、希美は住み込みの家政婦の仕事を紹介してくれます。
武蔵野のお屋敷には、とても優しい先生と、亡くなった妻の子供であるユキオさんという繊維会社の若き社長さんが住んでいて、希美もたびたび訪ねて来てくれたし、穏やかで安心できる日々を送るのでした。
この先生が素晴らしい人間性でね。「博士の愛した数式」を彷彿させられる処がありました。

第二章
これが凄かった。この小説のキモかもしれない。
1965年、もう石炭から石油へと移行していく中、九州の三井三池炭鉱の事故の後遺症で人が変わってしまった父と、幼い子供の面倒を見ている希美。母は家を出て行き行方知れず、毎日食べるものにも事欠く、どん底の貧困生活が描かれる。
ここで育った同士みたいな、希美とユウ(のちのユキオ)

この炭鉱で458人もが亡くなった大事故、後遺症でずっと苦しんでいる人がいること、あまり報道されないんですね・・。日航の墜落事故のことは取り上げるのに。
恥ずかしながら私も知らなくて、この本を読んでから、炭鉱事故の事を読みましたが、ひどいですね・・・。
事故原因や責任、保証問題なども、なあなあになってしまったみたいで・・・。
あの事故に遭われた方や家族の方の悔しさは、いかばかりでしょうか。
この小説の一番印象に残る部分でした。
作家さんの思いが、この2章に込められていたのか、とても迫力のある文章でした。

第三章
年老いて老人ホームでのんびり暮らしている。
そんな中、ある事件が起きる。
最終章なので、色々まとめられています。

★以下、1から3章にわたる全てのネタバレ★
2章。娘の律子を妻と勘違いして、事に及ぼうとした父。そんな父と、あくどい金貸し屋の竹丈(実はユウの父)2人を始末してくれたユウ。(父を殺したのは竹丈だが)
竹丈は街を出て行った様に思われたが、実はユウが父の服を着て、なりすまして列車に乗ったのであって、実際は死体をポタ山に埋めていたのだった。写真に小さくユウが写っていたのを目ざとくみつけたヌケガラ。2人を脅してくる。そして2人は有り金を持って東京に身一つで出て来たのだった。あの日以来、ユウは性的不能者になってしまっていた。(「白夜行」でも、そういうのがありましたよね。ストーリーは全然違うのだけれど、この小説と「白夜行」とは何かタイプが似ています。私はこういった暗い小説は大好き。

ヌケガラが、まさか、後に、あの加藤弁護士になっているとは・・・。
こういうサイコパスみたいな人間、怖いですね・・。私も、葉子の借金取りがお屋敷までやって来た時の加藤弁護士の対応などが素晴らしかったので、加藤のこと信用しちゃいましたよ。危ない危ない・・。

東京でそれぞれ頑張って生きていた2人だったが、ある日、弁護士となったヌケガラがやってくる。
ヌケガラ(加藤)の策略で、武蔵野のお屋敷の奥様が、昔生き別れた目の側に傷がある息子を探している(実際は若くして亡くなっていた)ところに、ユウを連れて行く。
その後、先生はユウが本当の子供じゃないことも解っていたが、ユウの人となりを認めていたので、黙ってそのまま受け入れていた。

先生を殺したのも加藤。閉所恐怖症である先生が寝入った後、誰もいない家に入りこんで、先生の周りに、本やら鎌倉彫の板を上に置いたりと、計画的犯行に及んだであろう事が推察される。しかし先生は、達也に別れ際にもらった落雁を本にはさむ、という事によって、葉子は先生が殺された事が解るのだった。
でも、葉子は先生を殺したのは、ユキオさんだと勘違いしたまま、車の事故で死んでしまうのでした。また、そのことを達也に告げていたので、達也も勘違いしたまま大人になっていると思われます。

ユキオは、先生を殺したのが加藤であることに気がつき、ついに加藤を殺す決意をし、彼の車に細工をします。
ところが、思いがけず、葉子がその車に同乗してしまい、2人はブレーキのきかない車で死んでしまう。
そして、この機会に、希美は葉子になりかわって生きて行くことになった。
以前親知らずで苦しんでいた葉子に、自分の保険証を貸してあげて歯医者に行った事があって、それも疑われない理由の一つになった。
その後、ユキオと希美は結婚し、武蔵野の家を売り、都内に引っ越してきて、暮らして行ったようだ。

2015年伊豆の高級老人ホームに、渡部さんという世界各国を放浪したりしている、生物に詳しい青年が働きに来ていた。この人こそ、養子に行った達也のその後だったのだ。話せる様になり、大学院にも進んでいたのね・・・。彼はカラスの習性をよく知っていたので、それを利用して、泳げないユキオがボートで昼寝をしているところに、ナイフで穴をあけて溺死させるという完全犯罪を成し遂げるのだった。
以上

この宇佐美まことさんって、今まで知らない作家さんだったのですが、調べてみると女性だったのですね。
言われてみれば、小説内での性描写がマイルドというか(辛いシーンも多いのだけれど、どこかいやらしさ・下品じゃない)という印象を受けたので。

四国に住んで、仕事(会計関係)、子育て(お孫さんもいるんだっけな)など、何足ものわらじを履いて活躍されているそうで、凄いですねー。宇佐美さんの他の小説も読んでみたいなと思いました。

愚者の毒 (祥伝社文庫) 2016/11/11 宇佐美まこと

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