《母と子》
1974年 釧路新聞社蔵
母一人子一人の幼少期を送った米坂にとって母子像は大切なテーマでした。その制作は生涯に及び、表現にも大きな変化が見られます。
本作の10年前に作られた母子像は、子どもに独立した存在感があり、母子共に遠くを見据える、たくましさと意志を感じさせる造形でした。一方、この作品では、母親は幼子を懐に包み込むように抱きしめ、うつむき加減に顔を寄せています。子どもは母親の一部となったかのようです。
米坂の記憶の中にあるイメージが、聖母子像のように優美で、より普遍的な形へと昇華されたのでしょう。晩年になると母子像はすっかり一つの固まりと化しています。
投稿者：T.M.
