小説 「風騒ぐ街」 / 第一部

バスケット好きの大学生の青春小説 == 1にバスケ、2に友情、3、4で恋愛、5に勉強? == 

【 あらすじ : 第1部 】

 青春をつっぱしれ。つまづき、悩み、そして、立ち上がれ。北の大地を舞台に繰り広げられる 若き血潮の青春群像。【青空バスケットの大学編】

目次 1章〜20章(試し読み/Free)

第1章 狐の住む街 :  第2章 嫉妬の雪 :  第3章 黒縁メガネ :  第4章 乱入 :  第5章 ラブコール :  第6章 ばあちゃん直伝の米研ぎ :  第7章 ひげ将軍と堅い桃 :  第8章 デンダラ坊の昔話 : 第9章 戦死の連鎖 :  第10章 ロシアンルーレット :  第11章 白樺と青空 :  第12章 鬼仏表 :  第13章 大仏の念仏 :  第14章 夢と現実 :  第15章 敦煌への道 :  第16章 ダスって喋れば駄目ダスか? :  第17章 地獄のフットワーク :  第18章 なまらザンギ :  第19章 雪と桜 :  第20章 交流なき英語 :  /// ※) 作品はフィクションです。実在の個人、団体、企業、人物、また、実際の事件や事故などとは一切関係がありません。

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第1章 キツネの住む街

2014-04-06 16:22:26 | 小説

 春を待ち焦がれる人々の心に、冬が嫉妬したのだろうか。
 4月は清明の頃、微かな氷の花々が、夜空から音も無く降り続き、札幌の街は深い新雪に包まれた。
 雪の季節を通じて、地肌に塗り重ねられた天の白粉も、今年は厚化粧に過ぎた。
 美白が時代の趨勢とは云え、雲上に住んでいる化粧指導員も、流行に煽られてしまったのだろうか、暦は卯月を迎えたというのに、札幌の街にへばり付いた雪の塊は、容易に落ちそうにない。

 僕は、この春、郷里の秋田の高校を卒業し、札幌で大学生活を始めるために、10日ほど前に引っ越して来た。
 初めての一人暮らしの部屋は、大学から程近いアパートの4階にあった。
 そこからは大学の広大な農場を一望する事が出来た。
 その農場にも、雪の白粉が、たんまりと塗られていて、見渡す限り一面の白い大地だった。

 アパートは、大学農場と「斜め通」と呼ばれる街路の間に建っていた。
 この「斜め通」には、あるキツネが住んでいる。
 このキツネ、捻くれ者との悪評高く、「斜め通」を通る人をよく化かす。
 「斜め通」を理解するためには、先ず札幌の街並みについて話をしておかなければならない。

 札幌の街は、碁盤の目状に造られている。
 当然、道路も区画に沿って縦横に伸び、互いに直角に交わっている。
 札幌駅周辺の住所の基準となるのが、大通公園である。
大通公園を挟んで、北に上るに従い、北1条、北2条と云うように北の数字が増えて行く。
 逆に、南に下る場合は、南1条、南2条と云うように南の数字が増えて行く。
 つまり、大通公園が、住所の南北軸となっている。

 東西の場合、基準となるのは、市街を南から北へと流れる創生川である。
 河川を挟んで、西に行くに従い西1丁目、西2丁目と云うように西の数字が増えていく。
 逆に東に行く場合は、東1丁目、東2丁目と云うように東の数字が増えていく。
 つまり、住所の東西軸は、創生川となっている。

 そして、テレビ塔が、南北の軸である大通公園と、東西の軸である創生川が交差する場所、言い換えるなら、札幌の基準点とも云える場所に、札幌の街を見守るようにして建っている。
 札幌に来たばかりの人が、何気なく街路を歩いていると、何時の間にか方向感覚を失っていると云う事が、よくある。
 札幌の街は、碁盤の目状に造られていて、目印になるような超高層ビルもなく、10階ほど高さのビルが横並びで建っている。その為、どちらの方角を見ても同じような街の風景が広がっていて、東西南北の判別が、出来なくなってしまう。
 僕も、御多分に洩れず、札幌の街で、1度ならず2度3度、迷子になった。
 大学生になって迷子になるとは、自分自身でも思ってもみなかったのだが、見事に札幌の迷宮に迷い込んでしまった。


 何度も迷っているうちに、方向感覚を回復するためには、信号機を見れば良いことに気が付いた。
 何故なら、信号の標識には、簡単な住所が記載されているからだ。その住所を見ることで、取り敢えずは、自分の所在を知る事が出来る。
 そして、次の交差点の信号機まで行き、再び標識を確認する。そして、住所の引き算をする。
 つまり、前の信号機に書かれてあった住所から、東西南北の数字がどう変わったかを計算する。
 すると、自分が、どちらの方向に向かって進んだのかを知ることができるのだ。
 もし、あなたが、札幌で迷子になった時には、三色目玉のお巡りさんに道を尋ねるのが、一番、手っ取り早い方法だ。

 札幌に住み始めてから、半月が過ぎ、少しは街にも慣れてきた。
 しかし、今だに、見慣れぬ界隈を歩くと、未だに方向感覚を失ってしまう。
 僕の方向感覚が鈍いせいもあろうが、札幌という北の大都が、田舎者の僕を、惑わせているように思えてならない。
 

 さて、札幌の街並みについて一通り話し終わった所で、僕の住むアパートがある「斜め通」についての話に戻ろう。
 何度も言うように、碁盤の目状の構造が、札幌の街路の基本である。
 しかし、「斜め通」は、その基本から少し外れている。
 大学のキャンパスは、札幌駅の北に広がる敷地に、蒼茫たる風貌をなして君臨している。
 札幌駅北口から、北へ向かって伸びる広小路は、通称「北大通」と呼ばれている。
 キャンパスは、北8条から北15条までは、南北に沿って真っ直ぐに接している。しかし、北15条からの境界線は北西に向かって伸びている。
 つまり、「斜め」に接する事になる。
 この道が、通称「斜め通」と呼ばれている道路である。
 南北に走る街路との傾きは、角度にして、30度ほどであろうか。
 東西に走る道路から、何気なく「斜め通」に入り込むと、知らず知らずの内に、そこに住む「捻くれ者」のキツネに化かされてしまうのである。


 引っ越して間もない頃、「斜め通」を北に向かっているつもりで、道なりに歩いていた。
 札幌の住所のルールに則れば、信号標識の住所は、北の数字だけ増えていく筈だ。
 しかし、何故か、西の数字も増えている。
 自分は、北に向かっていたはずなのに、いつの間にか西に向かってしまったのか?
 僕の頭は混乱した。キツネにつままれた気分だった。
 信号の西の数字が増えたのだから、何処かで、東西の道に入ってしまったのだと思い込んだ。
 そして、北に向かうには、右に曲がれば良いんだと気付いて、「斜め通」を右に曲がった。
 だが、これこそが、キツネの思う壺だった。
 暫らく進んで行くと、片側2車線で道幅の広い、「大学通」に出た。
 そこの交差点で、信号のお巡りさんを仰ぎ見ると、
 「君は、東に向かっているよ」と、教えてくれた。
 お巡りさんの忠告で、さらに頭は混乱した。
 おかしい、自分は「北」へ進んでいる筈なのに…「東」に進んでしまっている。
 信号のお巡りさんの忠告に従い、交差点を左折して「大学通」を北に向かって歩いた。
 次の信号のある交差点に辿り着くと、お巡りさんの忠告通りに「北」の数字だけが増えていた。
 そこで、ようやく、僕が向かっているのは「北」の方向で間違いないと、安堵した。

 アパートの住所が、北23条だったので、先ずは、「大学通」を北23条まで北上した。
 そして、交差点で、再度、信号のお巡りさんに、住所を確認してから、左折した。
 「僕は、今、西に向かって歩いている。」という台詞を、呟きながら、真直ぐ歩いた。
 西に向かって歩く事、数分で「斜め通」に戻ってくることが出来た。
 僕は、車道に出て左右を見回し、「斜め通」に立ち並ぶ家々を眺めて、その一隅にあるアパートを見つけた。
 そして、小走りで、アパートに逃げ帰った。

 そんな僕の醜態を見て、斜め通に住まうキツネは、フサフサの尻尾を振りながら、ほくそ笑んでいた。
 「斜め通」、将に名は体を表し、道の方向が名前となっている。
 誰が名付け親なのかは知らないが、名前の由来は、馬鹿正直だが、そこに住むキツネは、「捻くれ者」だ。決して人に姿を見せる事はないが、札幌の街に、嫉妬の雪が降る頃、白い大地の上に、点々と続くキツネの足跡を見かけることがあるという…
 これからも、「捻くれ者」のキツネは「斜め通」に出没して、新入生を化かし続けていくだろう。

第1章 終了

 

                

〜 作者 朝比奈颯季 からのお願い 〜

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