ー『次回、７/１６（金）は、通院の為お休みします』ー
先月末、母にとっては苦痛の、私にとっては念願の通所リハビリテーションが始まった。
念願といっても、何も家から追い出したいとか、母がいない時間が欲しかったとか、そういう気持ちではなかった。
ただ、ただ、じっとベットに座り、娘の顔色を伺うだけの生活をおくらせるのが忍びなかっただけだ。
勿論、私だって居心地が悪い。
どんなに 献身的になろうとも、なんの気兼ねもいらない実の親子では 限界がある。時にはひどく辛くあたってしまう事もあるし、逆に、そんなふうに言わなくても…と 心底悲しくなる言葉を投げかけられる事もある。
何かが、誰かが、間に入らなければいけない。
母と新たに暮らし始めて３年弱、少し遅いスタートだったかなとも思う。
当事者は、『行きたくない』と言うものだ。
７６歳になる義理の母は、２年前に癌を患い、近頃は関節痛で思うように動けない。７０歳まで現役で働いた同じ年の義理の父が、慣れないながらもコツコツ家事に勤しんでいる。端から見れば老々介護だ。友人は、年齢と病歴を考えれば、訪問スタイルのヘルパーを迎えるべきだと言い、私も そうだよな と思う。
しかし、そんな状況でも本人は、私の母に関して まるで他人ごと、『かわいそう』呼ばわりだ。 同じような状況で悩んでいる方に言いたい。
悩んでも答えは出ない。誰しも 老いる事を然るべきタイミングで受け入れる事などできないのだ。
『デイサービスにでも行こうかしら？』なんて言葉は、期待しないほうがいい。『誰か、やってくれないかしらね』そう言ったところで、実際、家に他人がくる事を、簡単には受け入れない。
こちら側で、背中を押してやるしかないのだと、私は思う。
実際、あれこれ悩まずに さっさと事を進めていれば、リハビリテーションを早い段階で受けられた母は、今も 歩けたかもしれないのだから。
それに、何よりも望んだのは、話し相手だ。このまま、娘とだけ、日に数回必要事項を告げるだけの生活は、あまりにもおかしい。
そうだ、おかしい。
幸い、若い方達に送り迎えをしてもらい、少し 声が弾むようになってきたような気がする。
今日は あれをした、これを食べた等、親子の会話だって増える。一番恐れていた『痴呆』も、少し遠退いたようで嬉しい。
これで、よかったんだなと 思った。
先週までは…。
■毎回、通所の際は『連絡帳』に 様々な情報を書き込む。内服薬に変更はないか、朝食時は変わりなかったか、熱は？具合は？血圧は？等。 そして、帰宅時は 施設での様子が書き込まれて戻ってくる。
その連絡帳に、
『次回、７/１６（金）は、通院の為お休みします。』
そう書いた瞬間に、幾度となく訪れた葛藤の点と点が、線で繋がった気がした。
やはり、子供に戻るのか…。
私は、子育ても真っ最中だ。
保育園の連絡帳に、何度 同じような文面を書き込んだことか…。
そういう事なのか…。
子供に接するようにと。
そういう事なのか…。
ここにきて 繋がった線は ぐちゃぐちゃに絡まってしまった。
あの優しかった母の大きさは？
あの怖かった母の威厳は？
あのとてつもなく頼りになった母の尊厳は？
何よりも、６５年という母の人生は？
悔しくて、
虚しくて、
寂しくて、
何も考えられなくなった。
受け入れるべきだと、母に 何度も話しておきながら、自分は 何一つ 受け入れる事が出来てない。
老いる事。
何も 当事者だけが 受け入れる事柄ではなかったんだ。
母の老いを、私も、受け入れなければいけないんだ。
いや、私が 受け入れなければならなかったんだ。
ここ数日、そんな事ばかり考えている。
少し 進んで、
完全に 立ち止まってしまった。
なんだか、辛い。
だけど、また数日、また数日と 時間が解決していくのだろう。 そう思うしかない。
老いる。
ありふれた解決策だけど、受け入れる ということの 積み重ねなのかもしれない。
私にも、そして例外なく 誰にでも 老いは忍び寄る。
辿り着いてしまえば単純な事なのか、まだわからない。
ーそして、母は
今日も できる限りの身支度をした。
先月末、母にとっては苦痛の、私にとっては念願の通所リハビリテーションが始まった。
念願といっても、何も家から追い出したいとか、母がいない時間が欲しかったとか、そういう気持ちではなかった。
ただ、ただ、じっとベットに座り、娘の顔色を伺うだけの生活をおくらせるのが忍びなかっただけだ。
勿論、私だって居心地が悪い。
どんなに 献身的になろうとも、なんの気兼ねもいらない実の親子では 限界がある。時にはひどく辛くあたってしまう事もあるし、逆に、そんなふうに言わなくても…と 心底悲しくなる言葉を投げかけられる事もある。
何かが、誰かが、間に入らなければいけない。
母と新たに暮らし始めて３年弱、少し遅いスタートだったかなとも思う。
当事者は、『行きたくない』と言うものだ。
７６歳になる義理の母は、２年前に癌を患い、近頃は関節痛で思うように動けない。７０歳まで現役で働いた同じ年の義理の父が、慣れないながらもコツコツ家事に勤しんでいる。端から見れば老々介護だ。友人は、年齢と病歴を考えれば、訪問スタイルのヘルパーを迎えるべきだと言い、私も そうだよな と思う。
しかし、そんな状況でも本人は、私の母に関して まるで他人ごと、『かわいそう』呼ばわりだ。 同じような状況で悩んでいる方に言いたい。
悩んでも答えは出ない。誰しも 老いる事を然るべきタイミングで受け入れる事などできないのだ。
『デイサービスにでも行こうかしら？』なんて言葉は、期待しないほうがいい。『誰か、やってくれないかしらね』そう言ったところで、実際、家に他人がくる事を、簡単には受け入れない。
こちら側で、背中を押してやるしかないのだと、私は思う。
実際、あれこれ悩まずに さっさと事を進めていれば、リハビリテーションを早い段階で受けられた母は、今も 歩けたかもしれないのだから。
それに、何よりも望んだのは、話し相手だ。このまま、娘とだけ、日に数回必要事項を告げるだけの生活は、あまりにもおかしい。
そうだ、おかしい。
幸い、若い方達に送り迎えをしてもらい、少し 声が弾むようになってきたような気がする。
今日は あれをした、これを食べた等、親子の会話だって増える。一番恐れていた『痴呆』も、少し遠退いたようで嬉しい。
これで、よかったんだなと 思った。
先週までは…。
■毎回、通所の際は『連絡帳』に 様々な情報を書き込む。内服薬に変更はないか、朝食時は変わりなかったか、熱は？具合は？血圧は？等。 そして、帰宅時は 施設での様子が書き込まれて戻ってくる。
その連絡帳に、
『次回、７/１６（金）は、通院の為お休みします。』
そう書いた瞬間に、幾度となく訪れた葛藤の点と点が、線で繋がった気がした。
やはり、子供に戻るのか…。
私は、子育ても真っ最中だ。
保育園の連絡帳に、何度 同じような文面を書き込んだことか…。
そういう事なのか…。
子供に接するようにと。
そういう事なのか…。
ここにきて 繋がった線は ぐちゃぐちゃに絡まってしまった。
あの優しかった母の大きさは？
あの怖かった母の威厳は？
あのとてつもなく頼りになった母の尊厳は？
何よりも、６５年という母の人生は？
悔しくて、
虚しくて、
寂しくて、
何も考えられなくなった。
受け入れるべきだと、母に 何度も話しておきながら、自分は 何一つ 受け入れる事が出来てない。
老いる事。
何も 当事者だけが 受け入れる事柄ではなかったんだ。
母の老いを、私も、受け入れなければいけないんだ。
いや、私が 受け入れなければならなかったんだ。
ここ数日、そんな事ばかり考えている。
少し 進んで、
完全に 立ち止まってしまった。
なんだか、辛い。
だけど、また数日、また数日と 時間が解決していくのだろう。 そう思うしかない。
老いる。
ありふれた解決策だけど、受け入れる ということの 積み重ねなのかもしれない。
私にも、そして例外なく 誰にでも 老いは忍び寄る。
辿り着いてしまえば単純な事なのか、まだわからない。
ーそして、母は
今日も できる限りの身支度をした。
