slice of life

ヒト科 2人

イヌ科 2人 日々成長中!

祈り

2012-09-27 07:08:27 | Weblog
眠れない夜。
人工呼吸器の音は、しんとなるはずの病室に 規則的なリズムで鳴り響く。

泣いたり、堪えたり、念じたり。

そう時間をあけずに、点滴のブザーが鳴る。

堪えたり、溢れたり、呼びかけたり。

一人で側にいるというのは、
辛かった。
呼び掛けても返事があるはずもなく
触れれば、『体動を検出しました』と警告音が鳴る。本当に念じる事しか出来ない。

せわしなく動く看護師さんに
『この状況から、元気になったりする可能性ってあるんですか?』と尋ねると、言葉のかけようがないという感じで、そっと首を横にふった。

午前4時。
病棟ロビーがざわついてきた。
嗚咽をもらす若い男性、遺影を選ぶ段とりをしている男性、葬儀社へ電話をかける女性…。

血圧は上がらない。

病室はナースステーションの横にあり、病棟ロビーから近い。聞きたくなくても聞こえてくる。
堪らず、病院の外へ出た。
『B1』と『専用』の案内が点灯し、扉が開いたままのエレベーターを見て、あぁ、霊安室は地下なんだなと 思いながら。


待っても、待っても夜が明けない。
ふと、母は今、何かを感じているのかな?夢を見てるのかな?等と考える。
もしかしたら、目がみえて、きちんと歩けて、兄弟や娘達と ショッピングでも楽しんでる夢を見ているかもしれない。
稲刈りをしたり、泳いだり、トウモロコシ畑でかくれんぼしたり、私が幼い頃は、不自由はあっても元気だった。
その頃の夢を見てるかもしれない。

色んな思いが交錯するボーッとした頭で、目をさますよりそっちの方が幸せかなぁと思いだした。
まさか、夢の中まで盲目という事はないはずだ。目が覚めて暗闇よりも、楽しいかもしれない。

そんな事を考えながら、血圧を測りにきた看護師さんに
『人工呼吸器をつけてても、もしもの場合は気付いてあげれるんですか?』と聞いていた。
例えば心臓が止まってしまっても、
ついているのは呼吸器だ。
気付かずに、無駄に空気を送りこむのか、私には全く分からない。
看護師さんは、『わかりますよ。酸素飽和状態が悪くなりますし、直ぐにわかります』と言った。もう少し説明してくれたけど、覚えてない。
自発呼吸も20%位はされてます と教えてくれた。
そういえば、つけるときに、自発呼吸もありますからと言われた気もする。
『血圧は60ですね』と看護師さんが言った。

私は、何も答えることができず
ただうなずいた。

妹が到着するまで、9時間もある。

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