さよなら渓谷 (新潮文庫) | |
吉田修一 | |
新潮社 |
『私たちは幸せになろうと思って、一緒にいるんじゃない』
十数年前のある事件の加害者と被害者
心に大きな傷を抱え それでも 忘れようと幸せになろうと必死に生きてきた
でも 決して誰も忘れてはくれないし許してはくれない
きっと本当にその傷みや寂しさをわかってくれるのは お互いにその人しかいないことに気がついてて
一緒にいることで心安らぐのに でもそれは本来憎むべき相手で…
揺らぐ気持ちと心の奥の様々な葛藤
理屈の通らないことも うまく割り切れないことも 常識や理性という力で押さえつけられないことも 世の中にはたくさんある
自分の心の流れに抗えないってこともある
きれいなことも濁ったことも 混沌と 全部飲み込んで 人は生きてる
みんなそうやって 生きてる
「読後感最悪だから、気をつけて読んでね♪」と友達が貸してくれた本
確かに。。。
暗さの上に暗さがどんどん畳み掛けられていく感じで 「悪人」よりもさらに読後感はもやもやするし 正直どの登場人物にも共感できない
ただ 主人公の女性の葛藤と最後の決断は わかる気がする
『…私が決めることなのよね』
そう 何かに流されてるわけでも 言われるがままになってるわけでもない
どうするかは 自分で決めていい
自分が決める それが 閉塞を突き破って前に進む小さな一歩なんだと思う