月が好きな国がありました。
月の綺麗な夜は、決まって、お城で舞踏会が開かれます。
今夜も、国中から集まった人たちが楽しそうに踊っています。
お姫様は、その様子を見ているだけで、幸せでした。
舞踏会が盛り上がってきた頃、
お姫様は、そうっとお城の外に出て行きます。
輝く月に手を合わせ、国民全ての幸せを願うのでした。
三日月の夜。
お姫様は、嬉しそうに舞踏会の様子を見ていました。
その中に、とても . . . 本文を読む
私は、花火があまり好きじゃない。
小さな頃から、花火の音が怖かった。
音だけ聞いていると、まるで大砲を撃ったようだ。
学生になった今でも、まだ少し怖い。
今年は、学校の盆踊りに友達と行くことになっている。
盆踊りのラストは、もちろん、花火。
どうして、みんな花火が好きなんだろう?
盆踊り当日。
浴衣に着替えて、下駄を鳴らして、盆踊りを楽しんで、
屋台のリンゴ飴を食べて、ヨーヨー釣りをして・・ . . . 本文を読む
カンガルーはお母さんの袋の中で幸せそうに笑っています。
でも、ほんの少しでも袋の外に出ると、もう大変!
笑顔は、あっという間に泣き顔に変わり、
袋の中に戻れるまで泣き止みません。
カンガルーが小さかった頃は、お母さんも大目に見ていましたが、
体も大きくなり、そろそろ袋の外に出る時期が迫っていました。
「ほらほら、お友達と一緒に遊んでらっしゃい。」
お母さんは、優しく声をかけます。
「今日は、遊ば . . . 本文を読む
ミツバチは、歌が得意です。
ブンブンブン♪
れんげ草の間を歌いながら飛んでいきます。
「いつも楽しそうね。」
れんげ草は、ミツバチの歌が大好きです。
「ありがとう。」
ブンブンブン♪
「どうして、いつもそんなに楽しそうなのかしら?」
れんげ草は、少し恨めしそうに聞きます。
「楽しもう。と決めたから。」
ミツバチの答えは、シンプルでした。
「分かっているけど、出来ないの。
ちょっとしたことで、すぐ . . . 本文を読む
この店に来ると、彼は必ずキャラメルマキアートを注文する。
今日も、テーブルにキャラメルマキアートを置いたまま、
音楽雑誌を読んでいる。
「冷めちゃうよ。」
「ああ。」
彼は、いつも半分しか飲まない。
それが彼のルール。
私には中途半端に思えることも、彼の中では完成されている。
ふと浮かんだ質問をそのまま投げかけた。
「坂の途中にいます。上りますか? 下りますか?」
雑誌から目をあげ、彼がちらり . . . 本文を読む
幾重にも重なる美しい花びら、魅力的な甘い香りを持つバラ。
素直に絶賛する声もあれば、妬みや悪口だって、バラには届きます。
バラは、とても繊細で傷つきやすい花です。
醜い言葉たちはトゲとなり、バラの心に突き刺さり、細い体に飛び出ました。
バラは、トゲを振り払うことなく、静かに受け止め続けています。
ある日。
アゲハチョウが、ひらひらとバラの花に止まりました。
とても元気がない様子。
バラには、自分 . . . 本文を読む
僕の大の仲良しは、クマ君です。
いつも一緒に遊んでいます。
僕は、クマ君の秘密も知っています。
実は、クマ君・・・ロボットなんです。
クマ君は、たくさん食べるし、いっぱい笑うし、
転んだら真っ赤な血だって、涙だって出る。
だから、森のみんなは「クマ君がロボット」なんて誰も知らない。
クマ君が誰にも言わないなら、僕だって誰にも言っちゃいけないんだ!
これは、僕たちだけの秘密です。
僕は、いつもク . . . 本文を読む
我が家のお向かいさんには、とても大きな庭があります。
様々な種類のお花が咲いていて、眺めるのが本当に楽しい。
でも、計画性がないというか、まとまりがないというか・・・
花や木が、あちこちに散らばっているし、どんどん増えていきます。
「もっと、きれいな庭になると思うんだけどなあ。」
買い物帰り、思わず、心の声が出てしまった。
「豪快で良いじゃない?」
横を歩く夫は、あまり興味がない様子。
「はい、よ . . . 本文を読む
『10年後 ここで逢いましょう。』
中学の時、読んだ本に書いてあった言葉だ。
中学生の頃、後ろの席の男の子が好きだった。
正直で、爽やかで、面白い子だった。
でも、その頃の私に告白なんて、とても出来なかった。
卒業式の1週間前。
その彼が、自転車置き場に名前を書いたと聞いた。
卒業式当日。
私は、朝一番に学校に行き、彼の名前を探した。
奥から2本目の柱に彼の名前があった。
ドキドキした。
す . . . 本文を読む
春の色が大好きなカメレオンがいました。
今日は、チューリップの赤色に着替えて、
友達に会いに行きます。
「こんにちは。」
友達の桃の花です。
「ホントに、おめでたい花やな。」
カメレオンは眩しそうに見上げました。
桃の花が、キョトンとしていると、
「鮮やかな桃色は、めでたい色やから、
お前さんは、おめでたい花や。」
カメレオンは付け加えました。
桃の花は、しばらく考えた後、
「うん。いいかも! . . . 本文を読む