東日本大震災から昨日で1年が経った。あの日、東京でも携帯電話が長いこと使えなかった。今また、首都直下型地震の発生が危惧されているが、それ以前に平常時でさえ危ない状況が続いている。
東京都心で1月25日、NTTドコモの携帯電話の音声通話やメールが約4時間40分にわたりつながりにくくなり、最大で252万人が影響を受けた問題はまだ記憶に新しいところだ、そのときの原因は、「スマートフォン(高機能携帯電話)の急増に伴う通信量の増大」が原因としていが、実際には新型パケット交換機に切り替えた直後に発生した。その新型パケット交換機は、同時接続数を倍増させたものの、制御信号の処理能力は半減しており、見積もりが甘かったと謝罪していた。
なぜ、見積誤りをしてしまったのか?その一番の要因が無料通話アプリの急増だった。無料通話アプリの普及率が、スマホ利用者の間で半数を超える勢いだ。ドコモのスマホ販売台数は2011年度末で約850万台だが、2010年度末には300万台程度だった。そのときには無料通話アプリの普及率は相当低かったため、この1年間でいきなり100万台超の無料通話アプリが増加したことになる。
無料通話アプリは、音声データをパケット(小包)形式でインターネットを通じて送信して通話するため、無料や割安で利用できる。データとは別に、通話可能かどう
かを確かめたり、現在位置を知らせる制御信号を一定間隔で送り続けるなど、端末からパケット交換機に制御信号を3~5分ごとに1回送信するため、パケット交換機の処理量も飛躍的に増える。それなのに新型パケット交換機の制御信号の処理能力は旧式の半分だった。新型交換機を設計した1年前には「それで十分」と判断したが、無料通話アプリ普及の勢いはドコモの予想をはるかに上回り、障害発生時には無料通話アプリの利用者比率は20%に達していたようだ。実際、NHNジャパン(東京都品川区)が11年6月に提供を始めた無料通話アプリ「LINE」は、国内の利用者が今月2日に800万人に達し、世界のダウンロード数は2000万件に達した。
ドコモは障害対策として、4月中に制御信号の処理能力を高めた新型交換機40台を設置。8月までに既存交換機の信号処理能力も引き上げる。
スマホはさらに増加し、14年度には5000万台に達する見通し。そのうち、半分がユーザー同士が無料で音声通話などを利用できる「LINE」や「スカイプ」など無料通話アプリを利用するわけだ。
急膨張する制御信号を抑制しなければ設備投資は膨らむ一方。 KDDIやソフトバンクも対策を急ぐが、ドコモの場合、接続が途切れたときにスマホの基本ソフト(OS)から送信される再接続信号の抑制やサーバーの処理能力増強などすべての対策が完了するのは、年末までかかる見通しだ。それに加え、首都直下型地震の発生が危ぶまれている。自然災害への万全の対策も強固な通信基盤構築には欠かせない。文部科学省の研究チームは東日本大震災で地震活動が活発化して地震の発生頻度が高まり、マグニチュード7級の首都直下地震がいつ発生しても不思議ではないと警告している。この予測にも対応した対策が急務となり、安定した通信基盤作りは、スマホ急増と自然災害への対策といった両面の対策が必要になってくる。安定した通信基盤作りはこれからだ。