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深淵のふち クルーグマン アメリカ経済の悲惨さ

2008年10月03日 22時00分56秒 | ポールクルーグマン

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クルーグマン、ミクロ経済学

深淵のふち PAUL KRUGMAN 2008.10.2

つい三週間前までは、アメリカ経済の状況は、そりゃいいとはいわないが、破滅的とまではいえなかった。金融システムには圧力がかかっていたが、完全に崩壊してはいなかったし、ウォールストリートのばたばたもメインストリートまでは、それほどインパクトを与えていなかった。

でもそれはすでに過去の話だ。

先月中旬からの金融・経済のニュースは、とてもとてもひどいものだ。そして本当に怖いのは、貧弱で混乱したリーダーシップのもとでこのようなひどい危機に突入していることだ。

悪いニュースの連鎖は、9月14日に財務省長官のヘンリーポールソンが、投資銀行のリーマン・ブラザーズを破産させても大丈夫だと考えたところからはじまった。リーマンの破綻で、投資家は苦境におちいった。タイムズの記事の表現によれば、リーマンは「ウォールストリートのごきぶりホイホイ、一度はいったら出てこれない」になったとのこと。金融市場に混乱をもたらし、日を追うごとにどんどん悪くなっていった。金融の問題を示す数字は、体温にすれば42度にはねあがり、金融システムの大部分は機能停止してしまった。

金融危機がメインストリートまで広がっている証拠は、増えている。中小企業は資金調達に苦しんでいるし、信用枠も収縮している。雇用や生産の両方の先行指標が急速に悪化しており、経済は昨年から低調だったが、リーマンが破綻する前でさえ、崖からころがり落ちていたことを示している。

どれほど状況は悪いのだろうか? ふつうのちゃんとした人たちが、終末だと訴えている。火曜日には債券トレーダーでブロガーのJohn Jansen が、現状は「フランス革命の恐怖政治時代と同じやつの金融版だ」と言っている。それにマクロ経済の評論家Joel Prakken は、経済が「深淵のふち」にいるようだと語ってる。

ただ危機のふちからわれわれを救い出すべき人たちが、正気の沙汰とは思えないことをやっている。

下院はたぶん、7000億ドルの救済策の最新のものを金曜日に可決するだろう。もともとはポールソンのプランで、それからポールソン・ドッド・フランクのプランになり、今や僕が思うにポールソン・ドッド・フランク・ポーク(豚)のプランになっている(月曜日に下院が否決してから、ご機嫌取りの内容が増えたのだ<英語表現は、豚の脂が増えた→ポークプランとしゃれになっている>)僕はもう、可決されることだけを祈っている。というのも、われわれはまさに金融パニックのさなかにいるからだ。もう一回否決されたら、パニックは手に負えなくなるだろう。でも言い方をかえれば、経済はまさしく財務省の大失敗の人質になっているといえよう。

実際に出されたプランはくだらないもので、というか最悪と言ってもいいくらいだ。金融システムは、もう一年以上も厳しい状況下にあった。市場が崩壊したときに備えて、じっくり練られたコンティンジェンシープランが出てくるべきだったのだ。明らかに、そんなものはなかった。ポールソンのプランは、大急ぎの混乱の極みででっちあげられたものだ。財務省の職員は、このプランがどのように機能するのか、明確な説明を未だにしてないし、まぁその理由も自分たちが何をやってるのか全然わかってないといったところだろう。

それにもかかわらず、僕は前にいったようにこのプランが可決されることを祈っている。理由は、否決されたら、市場のパニックはますますひどいものになるからだ。でもこのプランでは、せいぜいが危機の本当の解決にいたるまでの時間稼ぎにすぎないだろう。

そして当然のことながら、こういった疑問が頭にのぼる。本当にそんな時間があるのだろうか?

この経済悪化への解決策は、はるかによく考えられた金融システム救済策で始められなければならなかった。その救済策には、明らかに、スウェーデン政府が1990年代初頭にやったように、アメリカ政府の企業を配下におさめ、一時的な所有を行うことが含まれているべきだった。でもブッシュ政権がそういう方法をとるなんて、想像すらできない。

また、われわれには消費と雇用の落ち込みに対して、刺激を与える経済プランもどうしても必要だ。それに今回は、減税マジックに頼るのではなく、使うべきところにお金をつぎ込むまじめなプランがなきゃだめだ(財政運営が苦しい州や地方政府の救済も、まさしく最悪の時にはすばらしいお金の使い方で、優先すべきことだ)ただブッシュ政権が、政権末期の数ヶ月で、新しく機能する政権になるなんてことはまったく考えられない。

だからわれわれは次の政権ができるまで待たなくてはならないし、次の政権が正しいことをきちんとしてくれる可能性は高い。ただそれも、選挙の結果が不透明なところをみると絶対とはいえない(僕はポールソンのことをかってないけど、それでもフィル・「不平をこぼすやつらばかりの国」・グラムよりはずっといい)

そして、選挙は32日後に迫っているというのに、次の政権が職務に就くのは四ヶ月後だ。四ヶ月で状況が悪化する可能性はあるし、それもかなり高いだろう。

一つ確かなことは、次の政権の経済チームは仕事を開始する準備をしなければならないということだ。なぜなら一日目から、大恐慌以来、最悪の金融・経済危機に対処していかなければならないからだ。

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