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風来雑記帳

時事社会・国際問題からスポーツまで、幅広い話題をごにょごにょと考えます。

●6カ国協議~どうなる北朝鮮

2007-02-08 20:20:14 | 世界やぶにらみ(国際問題あれこれ)
6カ国協議が再開される。
もちろんこの協議自体は外交実務担当者の顔合わせであって、ここで何か大きな物事が決まるとか成果が得られるという訳にはいかないのは、重々承知である。
北朝鮮としては、ただただ当面の食糧と燃料を得るための交渉を始めるだけのつもりかも知れないし、本気で核開発の放棄やアメリカへの譲歩を考えている訳では無かろう、と思う。
当たり前である。
金日成時代から数十年かけて必死で開発を続けてきた核兵器を、ようやく目途が立ったこの時点で何が哀しくて放棄するのか、ド素人でも分かる理屈である。
北朝鮮が本当に核を放棄するのは、余程の事でもない限りあり得ない。少なくとも金王朝が続く限りその可能性はない。アメリカや日本が本気で北朝鮮から核を排除したいのであれば、北朝鮮のレジウム・チェンジが必要なのである。少なくとも金正日政権相手に核放棄交渉をしたって時間の無駄でしかない。

で、今回の6カ国協議は、またも堂々巡りの時間稼ぎに終始して時間切れ中断、というのが関の山だろう。ただし、北朝鮮を巡る事態が確実に動いているのは確かだと思われる。
その理由は北朝鮮の事情ではなく、その支援国である中国と韓国がそろそろ焦れてきている事にある。

韓国は南北融和を掲げる左翼民族主義者(W)盧武鉉大統領が、さすがに任期1年を切り、次の政権を自分の勢力に継承させるために、この辺りで大きな政治的イベントを必要としている事が最大の理由である。南北統一を政治日程化し「朝鮮民族統一」というスローガンで反米反日を煽る事で排外的民族主義を掲げた次期政権擁立を図ろうという訳である。支持率10%台と低迷する支持率など、民族主義の風が吹けばすぐに取り返す事が出来る、と考えているのであろう。
南北統一への具体的なスケジュールが決まれば、民族統一へ向けた意識高揚キャンペーンによって、日米との友好や経済関係重視を掲げる保守派を圧倒する事が出来る。
丁度、在韓米軍による女子高生殺害事件によって反米感情が燃え上がり、それを追い風にした盧武鉉が大統領となった前回を踏襲しようとするのは間違いない。

中国の場合は、北朝鮮状況が懸案の東北地区開発に大きな障害となっている事にある。
中国にとって東北部の安定した繁栄は国家基盤に直結した重要課題である。中国の歴史に於いて、歴代王朝の危機は常に東北部からやって来た。東北部からの侵入者が中国中原を制して王朝を建てた事もある。
戦前、日本の膨大な投資によって近代工業都市として開発された中国東北部(旧満州)は、さすがに60年が過ぎて病弊してしまった。沿岸部先進地域とは比較出来ないほどの格差が出来てしまっている。多くの課題を抱える中国だが、東北部の近代化開発は他にも増して緊急の課題なのである。その東北地区開発に於いて最大の障害が「北朝鮮」なのだ。
中国東北部の開発は、朝鮮半島との一体化が何よりも重要。日本海へ出る設備の整った港湾と、朝鮮半島を縦断して日本に至る鉄道網が、内陸部東北地区の開発の成否を握っているのである。
中国にとって、自分たちのコントロールの下、韓国と北朝鮮が統一され東北部と一体化した開発が可能になる事が望ましい。
今まで全面的に支援してきた北朝鮮金正日政権だが、今のままでは中国にとってメリットはほとんど無い。国際社会の非難を受けながら支え続けるには、あまりにも政治的リスクは大きくなっているのである。

南北朝鮮がどういう形にせよ統一されるのは、恐らく歴史的必然なのだろう。遅かれ早かれ北朝鮮が崩壊するのは時間の問題であり、その時、結局韓国が同民族国家としてババを引くしかない。
それが果たして5年後なのか10年後なのか、それとももっと先に延ばされるのか、様々なケースが考えられるが、先に延ばせば伸ばすほど両国が共倒れして悲惨な結果に繋がるのは間違いないだろう。朝鮮統一は一刻も早いほうがリスクが分散できることは間違いないのである。
今なら、日本に統一資金の大部分を負担させる事が出来る。4兆円とも8兆円とも言われる日本からの援助資金を梃子に、北朝鮮の基盤整備を一気に行い、それを中国東北部開発に繋げる事で、中国東北部~朝鮮半島~日本海~日本に繋がる一大工業地帯が生まれる。
中国にとっても、北朝鮮にとっても最も良い形で国造りが進むのである。

日本にとって北朝鮮の基盤開発に資金を提供するのは、もちろん名目は何であれ戦後賠償でありある種の謝罪である。しかしそれは同時に大きな先行投資となる。
その良い例は南朝鮮「韓国」である。戦後、日本は韓国に国交回復以来、戦後賠償代わりの膨大な資金援助や技術支援を通じて、韓国の産業を育て経済状況を改善させてきた。それは同時に日本経済圏への組み込みを意味し、今や韓国は毎年1兆円を越える貿易黒字を日本にもたらす「鵜飼いの鵜」国家となった。韓国を発展させる事で日本はそれ以上に潤っているのである。
同じ事を北朝鮮と中国東北部に行う訳である。
4兆円程度の資金負担で、将来その数十倍以上の収益を日本にもたらすのであれば、安い買い物ではないか。もちろんリスクは十分に検討し、万全の対策を講じておく事である。しかし、日本にとってこの地域の経済的発展と政治的安定こそが何よりの国益なのは間違いない。

結局、北朝鮮を巡る数あるシナリオの中で、一番建設的なのが「中国主導による北朝鮮政権への引導と南北統一」となる。そしてそれは「統一後の開発資金を日本が提供し、アメリカは朝鮮半島から手を引く」という形になるだろう。
何だか中国だけが得をするようにも見えるが、それは数十年以上経って見ないと実際は分からない。意外に得をするのは日本のような気がする。
韓国は気の毒だが、どんなシナリオでもほとんどの場合大きな経済的損失と政治的犠牲が見込まれる。盧武鉉政権が中国やアメリカの意向を無視して統一を焦った場合は、壊滅的な損失を被るかも知れない。相当数の経済難民や脱出者が出るだろう。どのシナリオでも韓国として得をするケースはない。しかし悲願の民族統一が実現するのだから、愛国心溢れる朝鮮民族なのだから甘受すべきであろう。

今回の6カ国協議に期待する事はほとんど無い。
日本だけが乗り遅れる、とか、協議の相手にされない、とか、そんな事は気にしなくて良い。
それよりも水面下でも良い、そろそろ「金正日政政権のレジウムチェンジ」を主張すべきである。
「拉致問題を始め懸案事項を解決する気のない金正日政権ならば、日本として政権の転換や体制の転換を求める」と。
武器は日本国内に巣くった北朝鮮支援組織の壊滅である。日本の公安当局が長年マークし続けてきた組織を、この際壊滅させてしまうと言えばよい。もちろん最近の朝鮮総連系施設への強制捜査はその一環であり、北朝鮮当局へのメッセージであろうが、それを徹底するだけの事である。
日本が北朝鮮のレジウムチェンジを主張する、と言う事は、日朝平壌宣言を破棄する事。北朝鮮から破棄するよう誘導して「では金正日政権相手にせず」という形に出来れば日本外交の勝利である。
日本としては北朝鮮問題は中国が相手である。中国と「その後」の朝鮮半島と東北部開発の青写真を調整しておく事が、6カ国協議より重要な外交課題であろう。