渡辺謙さん庵かず4見聞録

渡辺謙さん庵管理人かず4が謙さん作品始め、映画、ドラマ、本などの感想を投稿する予定(予定は未定)

謙さんを訪ねて三千里~NY『王様と私』弾丸観劇ツアーレポ

2016-04-17 01:37:40 | 渡辺謙舞台

(注意 三千里=11781.82km ニューヨーク⇔京都間の距離 11,077km)

発端。2015年NYブロードウェイでの『王様と私』公演の頃から、趣味と実益を兼ねて観劇に馳せ参じたいと思いながら日程的にも無理で断念していたところ『王様と私』が好評を博し、上演延長が決定。

謙さんも再登板されると知り、なんとしてもこの再登板期間に見に行けないかと目論んでいた。再登板に向けて準備をされる謙さんの動向、再登板期間の報道に注目していたところ、2016年謙さんの再登板は3月1日から4月17日までと判明。早速なんとかNY観劇が叶わないか日程を模索。

年度末の3月末と新年度の4月上旬からGWにかけては例年忙殺されるのであきらめかけていたが、次年度や昨年度のこの時期なら日程的に不可能だったし、ましてや謙さんが公演される期間はこれを逃すとないだろうし、行かなければ絶対後悔すると思い、一念発起して日程を調整し、3月下旬の三連休に一日休みをプラスして強行軍ながら航空券、舞台チケット、ホテルを手配し、ゆたちんさんと見に行くことが決定。

 

決行までにネット上のミュージカル台本を印刷して読んだり、ユル・ブリンナー版『王様と私』を見たり、購入後聴けていなかった "The King and I 2015 Broadway Cast Recording" CDをiPhoneに入れて予習体制は万全に。(機械音痴なものだから結局iPhoneへの音楽の入れ方を四苦八苦して理解し、落としたのは出発直前でしたが。)

 ミュージカルやNYにお詳しい方からの情報収集も入念に。劇場売店以外に、ミュージカルグッズを扱っているお店があること、NYブロードウェイのミュージカルではステージドア付近で待つと役者さんたちが気さくにサインや写真に応じて下さることなど貴重な情報を教わる。

 

2月9日、謙さんの胃癌報道に動揺。早期発見、早期治療が叶い、短期で復帰されるとはいえ、不謹慎ながらチケットをおさえた日に謙さんのご復帰が間に合うのか、間に合わなかった場合渡米するのか否かを逡巡。謙さんの『王様と私』を生で見たいのはやまやまだけれど、謙さんの健康第一。いざという時は謙さん不在の『王様と私』のカンパニーの仕事っぷりを見届けるためにも渡米することを覚悟(その場合は東京国際フォーラムでの『北の零年』完成披露試写会で謙さん不在だった感じを想像)。

 

2月12日、英語版謙さんのツイッターにて3月17日から復帰のお知らせに安堵しゆたちんさんと共に歓喜。予定通り渡米準備を進める。

 

ゆたちんさんと観劇以外の滞在時間をどのように過ごすか相談する中で、メトロポリタン美術館やエンパイアステートビル、ロックフェラーセンターの展望台などの話が出たが、出発前に謙さんがNYの本屋さんで参加されたイベントに関する記事と、既に渡米されていた謙さんのツイッターにて謙さんがニューヨーク近代美術館(MOMA)に行かれたことを知り、そこを訪れることが決定。しかもMOMAはほぼ時を同じくして行くので常設展だけでなく企画展も謙さんと同じものが見られる。

もう少し滞在時間が長ければ、これまた謙さんも観劇された"Fun Home"とか 『屋根の上のバイオリン弾き』とかも見てもよかったかもしれないけど・・・粗筋予習してないときつかったと思うけど。

 

3月19日、自宅から伊丹へ、伊丹から成田でゆたちんさんと合流。JALでNYへ。海外へ行くときは大抵海外の航空会社だけれど、今回は乗り継ぎ、待ち時間の関係でJALに。JALといえば『沈まぬ太陽』思い出しちゃうけど不吉なこと考えたらアカンね。

 

機内で『ラスサム』があったので久々に鑑賞。字幕がなかったので英語で鑑賞したけれど何度も見ていたので結構台詞を覚えていた。ツッコミどころは多々あるけれど現在の謙さんのご活躍に至るきっかけのような『ラスサム』は感慨深かった。


そしてあわよくば現地で謙さんに直接お渡ししようと便箋を機内で取り出して、ファンレター熱筆。二人で示し合わせたわけではないけれど、ゆたちんさんも機内に便箋を持って来られてて、二人で黙々と書いてた時間あり。笑

 

無事NYのJFK空港に到着。まったく現地でのwifi環境等調べないで着いたけれど、ゆたちんさんのおかげでsoftbankのiPhone6sユーザーなら日本国内と同じ料金プランでスマホが使用できるアメリカ放題設定方法を教えてもらい導入。おかげさまでなんとも快適な環境で滞在期間を過ごすことができた。

 

ホテルはミッドタウンのど真ん中。室内インテリアも近代的でなかなかよかった。荷物を置いて、「翌日スムーズに会場に行けるように下見も兼ねて」と称して到着日舞台は見れてないけどステージドア前にて謙さんの出待ちをしようとリンカーンセンターへ向かう。


思えばサインしてもらいたくてもサインしてもらえそうなものを自分は何も持って来ていないことに気付く。あわよくば現地に向かうまでに何かゲットできたら、と思っていたら、ホテルを出てすぐ偶然シアターショップを発見。入ってみるとミュージカルグッズが売っているけれど『王様と私』関連グッズがなさそう。

店員さんに聞いてみると、もう一店舗すぐ近くにあることを紹介される。行ってみると店舗は小さいながらなんとか『王様と私』のプログラムが販売していて、マグネットも売っていたので一緒にお買い上げ。あとでリンカーンセンターについてみると、プログラムはたやすく入手できたわけではなさそうだったので本当に事前に教えてもらっていてよかった!もちろんこのプログラムにサインをお願いした次第。

 

飛行機は夜6時過ぎに到着したけれど、税関や空港からの移動などでリンカーンセンターに着くころには結構いい時間に。当日見たわけでもないのにステージドア前で出待ちすることは可能なのかびくびくしてたけれど、意外とすんなり係りの人に案内してもらって、出待ちすることに。


まもなく劇場内から歓声が聞こえて舞台が終了したことがわかる。段々とステージドアでキャストが出てくるのを待つ人だかりが・・・
謙さんを待つ間に他のキャストも出てくる。私たちは謙さん一筋で、本編も見ていないものだからメインキャストっぽい人が出てきても反応できず。一部「僕のサインはいいの?」的なリアクションをされ忍びない空気感しばしば。笑 しかし思えば、本編を観劇出来た20日は皇太子役と第一夫人役の役者さんが普段と違う方たちが演じてらしたので、19日に書いてもらっておくべきだったのか・・・?


男性がステージドアを開ける度、謙さんかと思ってドキドキ。本当に謙さんが出てこられた時は出待ちしている人だかりも「きゃーっ!謙さんっ!!」と黄色い歓声があがる。(あ、その言葉は日本人ファンの声か)

 

ステージドアの前はスロープと手すり越しに段差があって、ちょうどプレミアのときのファンとキャストを隔てる柵みたいになっている。

 

謙さんは丁寧にその場で待っているファンにサインしたり、写真を撮ったり優しい。私たちは最初の方でサインしてもらった。ステージドアが開いてファンのサインに応じ始めると視線が落ちるのか、サインされておられた謙さんに


かず4「謙さん、庵仲間のゆたちんさんとはるばる日本から来ましたよ!」と声をかけると顔をあげて下さって


謙さん「おぉ!」とリアクション。名前入りでプログラムにサインを頂いた。(本名でお願いしたはずなのに「to かず4」で帰ってきたw)


かず4「舞台は明日拝見します!」と伝えると


謙さん「明日なの?」機内で熱筆したファンレターを忍ばせた京都からの土産のお菓子の紙袋(ちなみに「阿闍梨餅」)を渡しながら、


かず4「ご復帰おめでとうございます!」と声をかけたら、にっこり笑ってうなずいて下さった。ゆたちんさんも渡されると手をあわせて


謙さん「ありがとうございます。」

 

サインに応じながら移動され、写真撮影に応じられる謙さんに「あぁ写真もお願いしてもいいんだ!」と衝撃!待っている間近くにいた年配の女性と会話していて(私たちがシアターショップでゲットしたプログラムを持っていたので「それどこで売ってたの?」と声をかけられた)謙さんのこのミュージカルを見るためにはるばる日本から弾丸でやってきたことを伝えると信じられないと大層驚かれたのだけれど、そのご婦人が「あなたたちも写真撮ってもらったら?」と言って下さる。スマホをその方に託して撮ってもらおうとしたけれど、謙さんサインしながら遠方へ。他のファンの方に対応されている謙さんの元へ行くのが忍ばれて躊躇しているとそのご婦人に「あなたたち遠慮しすぎよ!」って言われた。笑

 

このまま帰るわけにはいかないと、帰路に向かわれる謙さんを追いかけてダッシュする私たち。


かず4「謙さん、写真もお願いします!謙さんの自撮りで!」後ろに「NYまでせっかく来たんだから」って言葉隠れてたと思う。笑
謙さんに自分のスマホ触れてもらって(悦)、謙さんの撮影で2ショット写真、3ショット写真を撮ってもらう。なんと贅沢な!謙さんスマホの自撮り慣れてらっしゃるw 途中謙さん、手がつりそうになってらっさいましたが。3ショット写真に関しては
かず4「3人でもお願いします!」って半ば強引に依頼。笑 

ゆたちんさんがゆたちんさんのスマホでも撮影をお願いされたら
謙さん、私のスマホを指し「これでいいでしょ。あとでシェアして。」笑


最後に「ありがとうございました!」とお礼申し上げて夢心地で帰ろうとしたところ、気が付くと謙さんにお渡ししたはずの手紙入り土産袋を私が持っている。自撮り写真をお願いしたときに無意識に預かったのか。とっさに走って追いかける、かず4。ゆたちんさん思わず遠くから大きな声で「謙さん!!」と呼ばれると謙さん立ち止まって下さる。もう一度駆けつけて紙袋をお渡しし、この日は本当にお別れをする。
謙さん「また明日ね」とスポーツトレーナーの大高さんとご一緒に会場を後に。

 

私たち、限られた時間でめっちゃ謙さんと会話したと思う。でも3回に分けて謙さんにアクセスしたのはわざとじゃないですよ。笑


余韻に浸りながら、定期的にニヤニヤしながらホテルへ。軽い機内食で小腹がすいていたのでサンドイッチを買ってホテルの部屋でゆたちんさんと半分こして食べました。

 

二人ともご満悦で、サインを頂いたプログラムを枕元に置いて寝るという乙女ぶり。笑 長くて濃い19日が終わり、20日の朝に。


朝食付きで予約したけれど、海外のホテルでもビュッフェ形式が多いのでパン、飲み物、果物それぞれひとつずつなんてアメリカとは思えない質素な朝食。帰路のシャトルタクシーを予約しようとコンシェルジュを待つこと30分以上。チェックインの時でもこの時でも、NYでは待ち時間が長かった気がする。


当初の予定では『王様と私』販促イベントが行われた住宅街の書店に行った後MOMAからリンカーンセンターへ向かうつもりが、予想以上のコンシェルジュ待ち時間や地下鉄で迷ったりしたため、MOMAから直接リンカーンセンターへ向かうことに。

MOMAとはMuseum of Modern Art、ニューヨーク近代美術館の略。メトロポリタン美術館と並んでちょうど行ってみてみたかった美術館のひとつだったので、謙さんのツイッターでの情報発信に感謝。
絵画作品としても、ピカソ、マグリット、セザンヌ、ゴッホ、クリムト、マティス、シャガール、ダリと有名画家の作品がずらり。階段で倒れている人(しかもゆっくり動く)展示もあって流石近代美術館。面白い。そして謙さんがツイッターでMOMAに行かれた理由として紹介されていた伊東豊雄さんの展示A Japanese Constellation を見る。
http://www.moma.org/calendar/exhibitions/1615

もちろん謙さんの自撮り写真と同じアングルでも撮る。(マニアック)K-portの設計も伊東さんが手がけられたということでますますK-portへ行ってみたくなった。
MOMA内のカフェレストランで昼食。実はNY滞在中の唯一ちゃんとした食事で、一番美味しかった!ミュージアムショップで散財した後、タクシーでリンカーンセンターへ。

出発前に『沈まぬ太陽』に登場する動物園がNYのブロンクス動物園と知り、謙さん縁の地巡り兼ねて行こうかという話も一瞬出たのですが、結構郊外だったみたいなので、行かずにこのルートで大正解だった・・・(ちなみに設定はNYのブロンクス動物園だけど、実際のロケは大阪の天王寺動物園だったらしい。大阪だったら日本で十分行けるやん!)

MOMAを堪能した後はタクシーでリンカーンセンターへ。
会場に着いて、日本で予約した座席をチケットに変えてもらう。そもそも国内でも舞台などチケットは人に取ってもらうことが多いので詳しくはわからないけれど、予約確認書で座席はLogeA-Cとあったので超前方のいい席で、首痛くなるよ、という話をしてたのに、実際座席についてみると残念ながら一階席最後部座席だった~まぁ確認書にも「当日劇場でチケットを引き換えていただくまで座席番号はわかりかねます。」とあるので仕方ないけどだいぶ期待してしまったので少し座席にがっかりしてしまったのは事実。(ぬか喜び)
そしてその席に着いてから「しまった!」と思ったのが、オペラグラスを忘れたこと。一応持ってるのに観劇慣れしていないものだから二人ともトランクに入れるの忘れてた。結果的にはオペラグラスを通してアップで見ることはできなくても、終始生でミュージカルを観られたのでよかったけれど。

劇場に入ると係りの人にplay billをもらう。play billとは作品出演者の顔写真、プロフィールが掲載されているA5サイズの無料冊子。シアターショップでゲットしたプログラムほど写真はないのでやはり事前にプログラムをゲットしておいてよかった。
play billにはブロック付箋くらいのサイズの白い紙が二枚はさまれていて、王様の第一夫人役と王様の皇太子役の役者さんがオリジナルキャストではないことが判明。前夜サインもらっておくべきだったかー?でもそんなの事前にわかんないしなぁ。座席は同じサイトで日本から申し込んだ人が固まっているらしく、一列日本人ぽかった。会場全体として、初NY、初ブロードウェイミュージカルなので他のNYブロードウェイミュージカルと比べてどうなのかわからないけれど、春休みだからか日本人は多かった気はする。春休みからこのミュージカルを見る為にはるばる来ている日本人なのか現地にいる日本人なのかはわからなかったけれど。

着席するとオーケストラピット(オケピ)が見えている。開演前に劇中で歌われる曲がメドレーのように演奏される。
始まって、アンナと息子たちが船でシャムにやってくるシーンで、船が舞台とともにせり出してきてオケピが覆われる。

つくづくユルブリンナー版で予習し、英語脚本も目を通してきてよかった。粗筋やなんとなくの台詞がわかっていると本場の英語の台詞も聞き取りやすい。けれど、ケリー&謙さん(バートレット・シャー演出)版『王様と私』でアレンジされたり、アドリブっぽい台詞はところどころ聞き逃してしまった。

意外だったのが、『王様と私』ってこんなにコメディだったっけ?というくらいドッカンドッカン受けてたこと。それはもう吉本新喜劇か?とツッコミたくなるほどの・・・
謙さんの王様がユル・ブリンナー版王様より、威厳がありつつも、嫉妬深く、悩む姿などお茶目でかわいくて人間らしく感じられた。
個人的には『ラスサム』の勝元も、『仕掛け人藤枝梅安』の梅安さんも、『北条時宗』の時頼様も謙さんの坊主姿は麗しく色っぽいので、是非とも今回もsexy坊主な王様謙さんにお目見えしたかったのですが、ご復帰前のコメントでも実際のご復帰の動画などでも坊主姿ではなかったので、返す返す去年多少無理してでも坊主な王様謙さん愛でに馳せ参じられればなぁと思いつつ2016年版王様を堪能しました。この髪ありバージョンの王様謙さんの難点は、謙さんのお茶目で人間味あふれる愛すべきキャラクターづけに加え、髪があるものだから時折「シャムの王様」じゃなくて「ちょっと派手な衣装来てる渡辺謙」に見えてしまいそうになったこと。(こらこら)
でも謙さんの気持ちもわからないでもない。ただでさえ『ラスサム』の時の勝元のsexy坊主っぷりに世界が「ユル・ブリンナーを彷彿とさせる」と騒いだように、一度目はユル・ブリンナー版へのオマージュというのもあったのかな。実在したラーマ4世の写真、坊主頭というわけでもなさそうだし。
バートレット版王様のキャラクターは謙さんバージョンだったとしても、初演時、外面的にユル・ブリンナー版を踏襲し、ユル・ブリンナー版ファンへの礼儀は尽くしたと。再登板の二度目は、内面的にも外面的にも「渡辺謙」を意図的に出してこられたのかな、と。

いやぁ、でも謙さんはやはり殿様や将軍、首相など、威厳や権力、カリスマ性、リーダーシップのある役がお似合いで、バートレットが謙さんに「僕が求めているのは歌手でもダンサーでもない。”王様”だ。」と言ったというのも納得。贔屓目なしで見ても、謙さんじゃない王様とケリーの『王様と私』プレビュー映像、王様に謙さんほどの威厳、カリスマ性や色気を感じなかったもの。
しかし、プレゼンでも講演会でもお芝居でも同じだろうと思うのは、もちろん演者のパフォーマンスもさることながら会場の空気感や一体感も大事で、会場のリアクションによってその後のお芝居のノリも変わったりするのだろうということ。
謙さんの『王様と私』を観た方のブログやレビューなど読んでいても、演者、会場全てが最高だった時のパフォーマンスと一体感、満足度は推して知るべし、で、これだから同じ公演期間中に何度も観劇する人がいるのだろうと思う。一回一回が生もので一度として同じ『王様と私』はない。本当に今回強行軍のせいで一度しか見られなかったのが残念だった。

謙さんの英語について様々な評価があるみたいだけど、この作品の王様の存在意義的に、英語が母国語ではない王様を演じるのだから、アクセントや発音が多少違ってもそれでいい、むしろペラペラで完璧な英語を話す王様の方が不自然だと思う。
とはいえ私、一応英語を生業にしているけれど明らかに『ラスサム』からの10年強で完全に謙さんに英語力抜かれた自信ありますよw
英語が母国語ではない、といえば『王様と私』の脚本を読んでいて気づくのが、王様も含めてシャム側の登場人物の英語がところどころ冠詞が抜けたり、人称や語形変化を伴っておらず、日本人の英語学習者によくある間違いのある英語台詞が多々見られること。これもあえての母国語話者じゃない者の英語の台詞にしているんじゃないかな。

『王様と私』の他の方のレビューを読んでいて再認識したのが、このお話が「異文化理解」や「異文化との遭遇」がテーマでありまさに謙さんがそれを目の当たりにし、体現されているなぁということ。この作品のシャムの王様は近代化の一環で自分の王室に英語教育を取り入れようとしながら、アンナを通して異文化に学び、感化されていくけれど、謙さんは「母国語ではない英語で、異国の地でミュージカルという新ジャンルに挑戦」されており、それって「異文化との遭遇」以外の何物でもない。
残念ながら、日本のファンが「是非とも日本でも凱旋公演を!」と望んでも謙さん以外のキャストが変わってしまえばそれはバートレット版『王様と私』とは全く別物になってしまうし、日本で日本語でやると作品の意図が上手く伝わらない。
そういう意味では、例えばロンドン公演とか、いっそのことタイで英語での凱旋公演はありだとしても、日本で日本語での『王様と私』はありえないとも思える。(調べてみると、タイでは『王様と私』これまで上映禁止なんですね。あらら。そりゃ、英国人側から描いてるからかなぁ。)

謙さん@王様の歌声は"A Puzzlement"で聴くことができる。予習用にiPhoneに入れたキャストレコーディングCDで予習していたがCDに収録されている謙さんの声は少し高い。日本人の声って総じて海外の人より声質高いよね。でも収録から何度も公演を重ねられた後のためか、舞台で聴く謙さんの声はもっと低く、重厚でより素敵だった。そして文字通り王様の困惑する様子が伝わる。一国の王様といえど、ただの男に過ぎない脆さ、人間らしさ。

そしてやはりお茶目だなぁ、かわいいなぁと思ってしまうのが、「頭が高い!わしより頭を高くしてはならぬ!」のシーン。
アンナが王様より頭を低い位置にするために、王様と同じように地べたに座ったり、寝そべったり・・・これがホントの「王様ゲーム」か・・・!!! 最後王様@謙さん、足バタバタさせてたよw
あと英国からアンナの友人が来た時に、その英国の友人ではなく自分と腕を組ませるようにするしぐさもお茶目!
また、アンナに家を与える約束を拒み続けてきたのに、仏様に願をかける体で「この英国女に家を与えます」と約束してあげるシーンも微笑ましい。うん、それぞれユル・ブリンナー版にもあるシーンだけれど謙さん@王様の方がお茶目さ、かわいさ5割増し。

それにしてもユル・ブリンナー版は昔見たことがあったはずなのにラストシーンを忘れていて、久しぶりに見た時に結末に驚いた(だってユル・ブリンナー@王様それまでそんな兆候ないのに突然死の床についているんですもの!)のですが、逆に謙さんはいつも絶命シーンや死に様でも魅せてくださるので、楽しみにしてしまいました。
驚いたのが、前のシーンとラストシーンの間に3~4キロ減量されたのかと見紛う、やつれ感が王様@謙さんにあったこと。
確かに謙さん@王様、血管切れるんじゃないかと心配してしまうほど前半怒鳴りまくりなんだけど・・・
でもラストシーンへの伏線か?と思うような胸を痛めるしぐさが前半にあるのは気のせい・・・?
しかし、謙さんはよく「俳優は役を通して生きる」、って仰るけど、公演が続く限り、公演回数=謙さんが王様として生きた回数になるのね。
白い衣装が白装束っぽくて・・・

そうそう、もちろんこの作品、衣装も豪華で謙さんコスプレキングとしてもご健在。金を施した白っぽい衣装も素敵ですが、やはりShall we dance?時の臙脂色の衣装もお似合い。臙脂色がお似合いなのは斬様やら泰衡様やら昔から実証済ですね。

キャストレコーディングCD封入のブックレットで何枚か劇中写真が掲載されていて、それも麗しいのですがやはりプログラムにしか載っていない写真もあるし、大きいので可能なら是非入手してほしいところ。私はこちらにサインしてもらいましたw 残念ながら劇場では売っておらず、現地会場付近に住んでいる方も入手先をご存じなかったくらいなので是非Theatre Shops (Theatre Circle か One Shubert Alley)をチェックしてから向かって下さい。

ユル・ブリンナー版ラストシーンでは病床の王様が事切れる時、パサっと手がベッドから落ちたのでそのシーンのことをゆたちんさん「パサー」と命名。謙さん@王様が絶命シーンで舞台が終わり、拍手喝采。そしてカーテンコール。帰国して動画など見てみると、去年の謙さん最終公演の日は5分くらい拍手なりやまず、もう一度カーテンコールに謙さんが出て、お礼の言葉述べられたようですね。これもタイミングとかその時の盛り上がりによるんだろうな。

終演後は謙さんに直接感想をお伝えしないとね、と言い聞かせてまたもや前夜も待っていたステージドア前で出待ち。
今夜はケリーが先に出てきた。せっかくなのでサインを頂いて写真も撮ってもらった。ステージではそうは見えないのに結構小柄でかわいい。実は今回のミュージカルチケットを取る時、事前にケリーが3月中の何日間か不在の上演回が告知されていた。他キャストはともかく「謙は私の王様です!」とトニー賞授賞式に謙さんへ賛辞をくれたケリーと謙さんの共演は絶対に見逃したくなかった。『王様と私』見てみると、贔屓目はおいておくとやはり主役はアンナだと思わされる歌唱力と存在感。流石トニー賞受賞女優!

その後まもなく謙さんも出てこられたので、早速感想をお伝えする。
かず4「謙さん!もう~めちゃくちゃかわいい王様ですね!」
謙さん「かわいいって・・・笑」
かず4「また感想書きます!」
ゆたちんさんが「やっと見れました!」とおっしゃると
謙さん「来た甲斐あったでしょ?」
ハイ、そりゃもう、ここまでそのために来たんだもの。

ここで謙さんチェック。謙さんは二日ともグレーの帽子をかぶっていらして、たいそう素敵であらしゃいました~
一日目は出国時記者会見された際に着ていらした濃紺デニム地のジャケットに中はグレーのパーカーと黒い襟つきのシャツ。プラダのショルダーバッグを斜め掛けされてました。
二日目は黒いジャケットの中には柄のあるマフラー、そしてグレーのバックパックスタイルであらしゃいました。
ゆたちんさんがマジックペンを持参してくれてましたが、謙さんはサイン用自前マジックを持ってらっしゃいました。

ここで我ながら「もう二日目もサインもらうのって謙さんと喋る時間を確保したいだけだな」と気づきましたw
サインと写真を頂いた後、また他の観客の方たちのサインや写真に応じていかれる謙さん・・・
「ハッ!握手してもらいたかったのにしてもらってない!」このまま日本に帰るわけにはいかないと、またしても二度目に謙さんに突撃するゆたちんさんとかず4。

かず4「すみません!握手お願いします!」
ゆたちんさん「明日帰っちゃうんで最後のお土産に!」
またしても笑いながら握手して下さるジェントルマンな謙さん。
そしてもうひとつ確かめたかったこと。
それは謙さんの胃癌手術報道があった直後、ファンレターに同封してお送りしたお守りが謙さんの手元に届いたかどうかということ。

かず4「謙さん、お守り届きましたか?」
謙さん「はい。届いてます。ありがとうございます。」
渡米時期などを考えると謙さんの手元に届いているのか心配だったのですが、届いていてよかった!
人間関係、健康、お金、の人間が生きる上での三大苦労を除いてくださるお守りらしいので謙さんにご利益がありますように。
謙さん「気を付けて 帰ってね」最後は私たちの帰路の無事を祈ってくださいました。

感無量で帰ろうとすると人だかりの渦中の謙さんを知らないアジア人らしき人から
「あの人誰ですか?」と聞かれ思わず
「渡辺謙を知らないの?『ラストサムライ』とか『インセプション』とかにも出てるハリウッドスターですよ!」
と半ば説教口調で答えてしまった。ゆたちんさんに諭される。

春休みだからか、日本人のファンも結構出待ちしていたようです。謙さんの自伝『誰?』を持参してサインしてもらっていた男性もいた。あとはキャストレコーディングCDのブックレットにサインしてもらう人も。
日本だと出待ちするのもファン道として邪道な気がして、『永遠』や『ホロヴィッツ』の時にも私は出待ちはしていないのだけれど、ブロードウェイでは出待ちしてサインしてもらっていいものなんだと知人に教えてもらっていたことで心置きなく並んで、謙さんに会えた日には限られた時間で喋りたいこと喋らせてもらった。ありがたい。
中にはステージドアを開けておそらく楽屋まで入って、中でサインをもらってくる猛者もいたけれどさすがにそこまではできなかった。ステージドアが結界な気がして。

でも思えば今ではハリウッドスターたちが来日してレッドカーペットでプレミア試写会、当たり前になりつつあるけどこれって日本では『ラスサム』以来の文化だと思う。レッドカーペットでキャストが練り歩く中でもファンのサインや写真に応じるという欧米スタイルの日本伝来。

3時からの上演回だったので終演は6時過ぎ。余韻に浸りながら、いっそのこと謙さん縁の地で晩御飯食べようかと思いきや残念ながらそのお店、日曜日はお休みで断念。次NY行く機会があればリベンジしたい。
午前中断念した、『王様と私』キャストレコーディングCD発売記念イベントが開催され、謙さんも来店された書店BARNS&NOBLEへ行くことに。残念ながら写真やサインなど謙さんたちが来店した痕跡を示すものは見つからず。
でもお店の方は覚えてらしたのでそれだけで満足。関連商品は見つからなかったものの、外国の書店も興味津々で楽しかったのでよしとする。書籍だけでなくデザイン性のある文房具などもセンスがよくてテンションが上がる。

しかしたまげたのは天気ですよ。いくらNY寒いといったって3月下旬に雪ってどうよ?
しかもやむ気配なく吹雪くし。頼むわ~雨男謙さん。まさか『王様と私』に「雪」という概念を学ぶシーンがあるけどだから雪が・・・?!(んなこたぁない)

というわけでせっかくNYに来たんだし、とロックフェラーセンターの展望台に上がったのですが吹雪いててあまり見えないんでやんの。これも次来る機会あればリベンジを・・・!うろ覚えだけど、『人間の証明2001』ラストでロックフェラー周辺も棟居@謙さん歩いてたような気が・・・ここも縁の地といえば縁の地?

ヘロヘロになりながらホテルへ戻り、NY最後の晩餐を近くのカフェダイナーで。パスタを注文したのだけれど量は多いわ、味は不味いわでどうしようかと。結局NYで一番美味しかったのはMOMA附属カフェレストランのランチだったという・・・

翌朝はホテルからシャトルで空港まで。無事搭乗して日本へ。
幸いだったのは、機内3人席のうち1席空いていたのでゆたちんさと二人気兼ねなく思い出話に浸ったりマニアックなことして過ごすことができたこと。また日本に着くまでに長文感想ファンレターをしたためたりもしましたが、今までやったこともないマニアックな行為としては、ゆたちんさんと二人で『ラスサム』を同時再生して鑑賞したこと。笑
今回は二人で日本語版を視聴。そしていずれかがトイレなどで離席する時は同じシーンで停止するという徹底ぶり。

さすがに行きも帰りも映画は『ラスサム』一本しか見ないで、こんなマニアックな機内の過ごし方したことないです。爆 しかも最初はお互いツッコミ入れながら見てたのに、段々黙って凝視して最後泣いてるし。こんな過ごし方初めてだったけど、文字通り謙さんづくしのNY謙さん弾丸ツアーでした。また謙さん行脚で飛行機で駆けつける時はこんな風に過ごしたい。

帰国後の余談としては、私は成田から伊丹への乗り換えだったのだけれど、海外乗継の感覚で伊丹まで自動的に荷物は運ばれると思いこんでいて果てしなく遠い搭乗口まで移動してから、放送で呼び出され、荷物も税関を通さないといけないということで30分くらいかけて往復するはめに。帰国してからが大変でした!(自分がドジなだけなんですが)徒然草でも木登りの達人でも一番気をつけなければならないのは降りる時だ、みたいな話があったけどまさにそんな感じですな。
そのあとあまり間をおかず、しれっと職場復帰しましたが月末倒れました。爆 でも多少無理してもNYまで駆けつけたことは全く後悔してません。今後も可能なスケジュール、範囲で謙さん追いかけようと思います。

惜しむらくはこのレポもっと早く書きあげていれば、公演期間中に『王様と私』観劇される方の何かのお役に立てたかもしれないのに、帰国後の忙しさや体調崩してたせいでアップがこのように謙さんの登板終了間近になってしまったこと・・・
半分以上は自分の記憶の記録として書いているとはいえ、読んで頂いた方にはせめて私たちの興奮が伝われば嬉しい。

改めて謙さんの挑戦しつづける姿には励まされます。並々ならぬ偉業、頭が下がるとともにファンとして誇らしいです。
今後もご活躍楽しみにしております。また近いうちにお会いできますように・・・脱稿

追記:2016年4月17日(土)22:00放送の『SWITCH山中伸弥×渡辺謙(後編)』を見てみると、放送日の数日前である13日に山中教授がNYまで謙さんの『王様と私』を見に行かれる様子が映っていた。このSWITCHという番組、前編も内容が濃く面白いなぁと思っていたけれど今回も変わらず内容が濃く素晴らしいものだった。この対談を通じて謙さんはもとより山中教授への親近感や好感度が増していたのだけれど、なかでも観劇後謙さんの楽屋を訪ねられた山中教授が謙さんのお芝居に涙ぐまれている様子に益々山中先生が好きになった。
そして「やはりトップの人は孤独なんだ」という言葉にこのミュージカルを見て記録し忘れていた、もしかしたら感じそびれていた王様の姿に気づかせてもらえた。SWITCHの感想も改めて書きたいとは思ったけれど先延ばしにしているといつになるかわからないのでこの投稿に追記することにしました。これからのお二人のご活躍にも期待したい。