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この激動の時期に思うこと(1)

2009年02月04日 | 仕事とか堅苦しい話
日本での動向を掴むために、日々ウェブ経由ではあるもののニュースをチェックしている。その中で、不況の煽りか、「派遣切り」や「ワークシェアリング」というキーワードが出てきている。

私の知り得る限りでは、「金融恐慌」というフレーズが飛び出した瞬間に、経団連が「ワークシェアリング」という言葉を持ち出してきたような印象を受けている。経団連が、今か今かと待ち続け、ようやく「ワークシェアリングって言うなら今だよな」ぐらいのタイミングで。



事の経緯を自分なりに考察していくと、そもそもは「企業がコスト削減のために派遣社員を推奨していた」ところも事の発端に寄与しているのではないかと考えている。

派遣社員というものは、本来は「何か専門性がある人をスポット的に扱う制度」のことを指すと自分なりには理解している。例えば、特定のプロジェクトで専門性が足りないから、どこかから期間限定で斡旋してくる、もしくは正社員の単価に見合わないような業務(例えば事務処理だとか)をお願いするだとか。

ところが、結果としてそれがコスト削減につながるだとか、正社員の遊休労働を穴埋めするために利用するなどなど都合の良いように解釈されてしまい、さらにはその点に気付いた買い手側(つまりお客)がそれをネタに、売り手にコスト削減を要求してくるようになった。

企業体が利益を追求する団体なのであれば、それは売り手、買い手共に「なるべくしてなった」ことなのかもしれない。

その一方で犠牲になったものもたくさんある。
例えば品質。派遣社員には、ある意味で業務遂行の義務はあるものの、アウトプットに対するコミットは無い。なので、出来の悪いアウトプットが出てきた時に責任の所在がどうしても不透明になってしまう(というか責任の押し付け合いが始まる)。さらには、いつ辞められても、いつ辞めさせてもおかしくない不安定な契約であるが故に、そこには強い信頼関係というものが芽生えにくい。どこかでお互いに一線を引いて、踏み込んだ話が出来ないような状態になってしまう。

さらに辞められてしまうと、またどこからか人材を登用をして、一から教え直すという極めて非生産的な業務が強要される。誰かを雇って、鍛えて、辞められて、また誰かを雇って・・・この無間地獄をひたすら繰り返すだけ。その未曾有の中で「こんなアホみたいなことやってられるか」という空気が蔓延し、チームの雰囲気は最悪になり、辞職をさらに加速させてしまい、非生産性は増すばかり。自分も何度かこの状況を経験した(というか火消しをさせられた)が、あんなにも辛い状況は二度と経験をしたくない。

で、今回の世界同時不況。今まで「派遣社員を良いように使う」という方法を採りながら、不況が来た途端に「じゃあ派遣を切ろうかね」という企業の安直な判断。さすがに筋が通っていないのではないだろうか。

企業というものを株価だとか売上高だとか、そういう数字だけで捉えるのであればそれも止む無しなのだろう。私自身もその性質を受け入れてしまった一人ではある。

しかしながら改めて気付かされる。
企業というものが数字だけで成り立っているわけではないということに。

人は城、人は石垣、人は堀。
情けは味方、仇は敵なり。

そこには生身の人間がいて、そこには感情があり、その集合体が企業を形成している。そこから感情を抜いてしまえば、城の地盤は緩み、液状化現象で瓦解を待つのみとなり、今回はその世界同時不況が「地震」として作用したということなのではないだろうか。

いずれにしても、「うち、今やばいから派遣契約満了で」という都合の良い解決方法について、もう少し何か他の方法があるんじゃないか、もしくは「方法はあったし、気付いていた人もいたけれども、誰もそれをやろうとはしていなかった」なのではないだろうかと思ったりもする。



この「派遣切り」と同じくらいのタイミング出てきた言葉が「ワークシェアリング」。
ワークシェアリングをものすごく単純に説明すると、「今まで10の社員に1ずつ払っていた給料が7しか払えなくなったから、7の給料を10人で割ろう」といったところだろう。

実はこのワークシェアリングという言葉はイギリスでも最近よく聞く。

骨子としては:
(1)雇用は確保する。
(2)不況により絶対的な仕事量が減っているので、その分労働時間も給料も削る。
(3)削減された労働時間については、他の仕事(例えばバイト)をしても良い。
(4)その他、収入減を考慮して何かしらの補助制度を設ける。

というものだ。

日本で発表されているものの多くは(3)と(4)が抜けているような印象を受けるのだがいかがだろうか。中には、(読んでいる限りでは)しっかりとした制度を作っているところもあるみたいだが、多くは小手先のその場しのぎでしかないような気がする。

(続く)
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