鶏口舎な日々

木彫で招き猫、お地蔵さんなどを制作している「鶏口舎(けいこうしゃ)」です
制作過程と趣味のうなぎ飼育や日々のあれこれ

鶏口舎で用いている天然木曽檜材の解説

2016年10月09日 | 木彫の話し(道具や材料、木材について)
鶏口舎さんの天然木曽檜(てんねんきそひのき)の解説 

寄稿:ピノッキオ韮澤やすおみ

鶏口舎さんが木彫り作品に用いている、天然木曽檜(てんねんきそひのき)について解説します。
天然木曽檜(てんねんきそひのき)の全てを語ろうとすれば書籍を数冊作れるほど奥深いものです。
今回の記事は要所を語るに留めます。

僕は、鶏口舎さんが使用する木材を選定し、準備するお仕事を頂いております。
鶏口舎さんの用材ブレーンといったところでしょうか。

さて、鶏口舎さんが主な材として使用している天然木曽檜(てんねんきそひのき)。
とても素敵な存在です。今回の記事では・・・・

●そもそも天然木曽檜(てんねんきそひのき)とは?
●鶏口舎さんが天然木曽檜を主な材として選定した理由

をテーマに解説していきます。

※天然木曽檜(てんねんきそひのき)。以降読みがなを省略します。
ここで読み方を覚えておいてくださいね。


★伊勢神宮と天然木曽檜と鶏口舎の話
伊勢神宮をご存じかと思います。神社本庁の本宗です。
20年に一度建て替えることもご存じかと思いますが、その式年遷宮(しきねんせんぐう)の際に、
最も神聖な箇所には天然木曽檜を使用する事が指定されています(後半でもう少し詳しく)。
鶏口舎さんは伊勢神宮近くの「おがげ横丁 吉兆招福亭」にも作品を納めております。
そんな点と点を繋いでいくと、天然木曽檜と鶏口舎さんの関係が見えてくるのですが、
今回の記事は、点と点を結んでいく形で進んで行き、最後に謎を解く形で終わります。

では、「点」を一つずつ語っていきましょう。



★天然木曽檜。なぜ天然?
日本では、ヒノキとスギを人工的に植林して生産している山が多くあります。
いわゆる植林ものです。それに対し、種から芽が出て自然に育った実生(みしょう)
のヒノキやスギがあります。銘木(めいぼく)業界では、植林のものと、実生のものを分け、
実生のものを、天然ヒノキ、天然スギと読んでおります。
ですから天然木曽檜は、種から芽が出て自然に育ったヒノキという事になります。

★ビジュアルで知ろう♪天然木曽檜
さて、木曽の山で種から芽が出て自然に育った天然木曽檜。実物をスキャナーで読み取りました。
埼玉県飯能市(はんのうし)の山に植林されていたヒノキと比較してみましょう。





木曽の山は年間の平均温度が8度程度だそうです。寒い事もあり成長が遅いのです。
その結果、年輪の間隔が大変詰まっており、高級な木材となります。


★そもそも、ヒノキとは?ここであらためて



日本書記によると、スサノオ神の胸毛が抜けて日本の国土でヒノキになったそうです。
それが現実の出来事かは分かりませんが、しかし不思議な事に、ヒノキは日本固有の種類です(台湾に近縁種がある)。

日本固有の種ではありますが、長い時間を掛け日本各地で気候に合わせて進化し、各地により少々個体差があります。
そして、その差は、木材の品質としても現れます。ヒノキ材は産地により品質の差があるのはその為です。

★天然木曽檜の価値を知ろう
天然木曽檜の価格的な価値ですが、天然木曽檜は、国産ヒノキ材の中で群を抜いて高値で取引されております。
ここで1例を。

例えばこの天然木曽檜の一枚板。川越銘木センターさんの倉庫で撮影してきました。
推定樹齢1000年以上。節(ふし)は一切無し。幅1メートル弱。長さ4メートル以上。
この寸法で無節の天然木曽檜の一枚板は、国内での在庫はこれが最後と言われております。
節があるもの、幅が狭いものはあるのですが、ここまで極上のコンディションのものは枯渇しております。
さて、こちらの物件はお幾らくらいでしょうか?想像してみましょう。








50万円くらい?いやいやそんな訳はありませんね。じゃあ100万円くらい?
その金額では「桁」が違うかな。まあそんな価値がある材なのです。
川越銘木センターさんは良心的価格なのでその価格で決して高いという事はありません。
売主さんが違えば2000万円という事だってありえるでしょう。さらに高くても僕は驚きません。

この材を廊下の床板としてフローリングの代わりに、表面を仕上げてこのままハメ込み使うとか、
細かく分けて幅広の階段に使い、木目が繋がった階段として利用してもいいかもですね(もったいないですが)。
玄関の式台にしてもいいかも。
高級和食店のテーブルにしても良いでしょう。お店の空気が凛とするでしょう。料理が引き立ちますね。

木材としての価値について話題を変えます。
天然木曽檜の色味は、ヒノキの中では白い部類になり、建具などに用いれば美白で品がある風情になります。
赤身が強いヒノキでは赤い建具になってしまい、どうしても見劣りしてしまいます。
そのような赤身が強い材は脂分が多いので、住宅の柱などの構造材に向いております。木曽檜は化粧用の高級材というわけです。

職人や作家、加工する立場からすれば、天然木曽檜は適度に柔らかく、細かな作品を作っても割れが起こりづらく、
繊細な加工が出来るのです。極上のフィーリングです。僕も大好きです。


★鶏口舎さんが天然木曽檜をなぜ使うのか?
鶏口舎さんが、天然木曽檜への思いを、時々言葉にしているので、
それらを僕の中で集約し、ここで代弁してみます。

「私の作品は物理的に小さなもの。その中に、最大限の何かを籠めたい。
だから、出来る限り素晴らしい材から彫り出してあげたい。
すると、小さな作品たちが、ちょっぴり誇らしげな顔になる。」

「利益を考えたら、ぜったいに天然木曽檜を使えないと思う。
でも、お客様に可愛がってもらいたい。嫁いでいく作品に私がしてあげられる事は、
最高の材から彫り出してあげる事」

「最高の材とは?日本人にとって伊勢神宮は特別な場所。その、伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう)で
、最も神聖な箇所である、ご神体を安置する御樋代木(みひしろぎ)は、
天然木曽檜を材とする事が指定されている。それをもって最も神聖な材と言える。
日本人である私が、木彫り作家として天然木曽檜を主な材とする事に、特別な意味を感じる。」

「天然木曽檜を彫るときは気持ちが高まる」

このような理由が鶏口舎さんのマインドにあるようです。僕はその思いに共感し、材を集めています。




ちなみにですね、天然木曽檜にも多少のバラつきがありますが、鶏口舎さんは、
それらの個体差をズバりと見抜きます。経験数十年の名大工さんもそういう個体差を見抜くわけですが、
名大工さん並みの感性を持っております。びっくりする事に気づくのです。
いつか別の機会で詳しく語りたい逸話があります。鶏口舎さんがある事を指摘してきて、
僕は木曽の製材所に問い合わせし、「よく気づきましたね・・・」と驚かれた事があります。
ふつう、気づかないらしいです。どうして気づかれたのですか?とのことで、
そう感じたそうです、と僕は返答しておきました。

天然木曽檜を極めんとする作家。僕はそう鶏口舎さんをリスペクトしています。


★鶏口舎さんへの製材
今回の記事の最後になりますが、こんな風に僕が準備をして、鶏口舎さんに送っているんだよ、
という現場からのレポートです。

まず、僕はいくつかの仕入れ場所を確保しています。それらの場所の中で、
鶏口舎さんのお目にかなうレベルの天然木曽檜を探します。

各仕入れ場所にて、最初は、うるさいやっちゃな〜と煙たがられました。
しかし最近では僕(と鶏口舎さん)の熱意に負け、良さそうなものを取り置いておいてくださるように。
そして、僕と鶏口舎さんのところは厚い信頼関係がありますので、たまには先に買っておき追って連絡することも。
現在、2018年の春くらいまでの分は確保できていると思います。

鶏口舎さんが使用している天然木曽檜は樹齢300年程度の材です。
天然木曽檜は、基本的にはそれくらいの樹齢のものが計画的に出荷されています。
樹齢100年くらいの木曽檜は細すぎますからね。
300年でやっとそこそこの太さになります。

植林ヒノキが30センチの太さになるには60年程度と言われておりますが、
天然木曽檜が30センチの太さになるには200年程度掛かります。














★今回の記事まとめ。三行で簡潔に。
一・伊勢神宮の20年に一度の式年遷宮で、最も神聖な箇所に天然木曽檜の使用を指定されている。神聖と言える材。

二・美白で木目が詰まった材。高級品には最高。職人や作家が繊細な加工が出来る極上の材。しかし超高価。

三・鶏口舎さんは小さな作品の中に最大限のモノを籠めたいという思い。必然的に天然木曽檜を用いる事に。



★資料 日刊林業新聞社 銘木要覧より
・天然木曽檜は銘木中の銘木
・名古屋営林局付知営林署の天然木曽檜出荷台帳によると、明治神宮、出雲大社、
法隆寺金堂、熱田神宮、白鶯城心柱、皇居用材などの記録もある。


★オマケ情報。盆栽としてのヒノキ
盆栽としてのヒノキ。有名な品では皇居で培養されているヒノキの盆栽は樹齢100年を越えています。



こちらは鶏口舎さんが育てているヒノキの盆栽です。
こんな大きさですが、15年程度の樹齢と推測されます。津山ヒノキと呼ばれる種です。

まだまだ小さな品ですが、樹勢が良く、今後が楽しみな盆栽です。


以上です。今回も最後までお目通しいただきありがとうございました。
ピノッキオ韮澤やすおみ

★その他の材も解説しております。
※鶏口舎で用いている一位材の解説(クリック)
鶏口舎で用いている台湾檜、台湾紅檜材の解説(クリック)

*鶏口舎追記*
天然木曽檜の記事を読んだお客様から、こんなメールをもらいました。
『神社検定に合格したところ、認定証が伊勢神宮の遷宮に使われる
木曽の檜を使ったもの(小さい盾状)という説明付きで送られてきて、
とてもいい記念になっています。
名前と合格認定番号は焼き印風になっています。何だか厳かな感じ。。』

木曽檜は、神社検定の認定証としても使われているというお話に
とても嬉しくなりました。
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