岩谷宏と一緒

岩谷宏の同居人岩谷啓子(けい子)が、犬猫まみれの官能の日々を綴る

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岩谷宏のロック論 60 自己観念

2008-11-29 09:35:57 | 岩谷宏 ロック
自己観念

19世紀の詩人A・ランボーは「自分とは一人の他人だ」と言ったし、
今世紀のロック・ミュージシャンD・ボウイーは「自分は一台の
コピー機械」と言った。

この、一見奇妙な言葉の、意味を考えてみる前に、二十世紀末の今日、
私達が置かれている一般的な思潮の質をチェックしてみよう。
−−−−−一般的な思潮とは、私達が生まれ、育ち、学び、生活して
行くこの社会環境の中で、暗黙の前提になっているような、”ものの考え方”
のことである。


それは、ひとことで言うなら、平和が叫ばれるわりには平和が得られず、
自由と平等が願われてもそれが実現しない、どうも、最初っから、
そのように”想定”しているらしい思潮である。
どこが問題なのか。

社会の物質的(経済的)条件・構造を改変すればよい、という考えが、
一部の人には広く受け入れられている。
日本でも革新勢力と言えば、だいたい、この思想を基調にする人々である。
しかし一方では、社会主義国の現状への深い幻滅感も広まりつつある。

忘れられていたものはなにか。
これまでほとんど考えられたことなく、したがって、ほとんど
原始状態のままにほっておかれているものはなにか。
−−−−私達がこれからの時代に向けて、本当に真剣に取り組むべき
課題はなにか。
それが、私の思うに、「自己観念」とその検証、変革である。


「自己観念」とは、自分とはなにか、について、
暗黙のうちに、自分で抱いている観念のこと。
これが、たとえば、通常の「物」に対する観念のように、唯一絶対、
万古不易で、変わりようのないものなのかどうか。
−−−−−「物」に対する観念なら、たとえば「とうふ観念」なら
”大豆タンパクを凝固させた白くてフワフワの食品”で、
だいたい、変わりようがない。


「自己観念」は、通常、歴史的・社会的に条件づけられ、その人の
生き方を決定する。しかし、完全に絶対的に条件づけられたまま、
ということはなくて、その人の意識の力によって、相対化することも、
改変することもできる。
そして、自己観念の変革がなくて、ただ、物質的条件の改変が
行われても、それは、必然的に元のもくあみ的な社会にしかならない。


外側については、ついに、宇宙空間や原子にまで手をつけてしまったが、
内側については、ごくごく少数の芸術家たちが、(中には、
危険あ薬や、瞑想などの手段に頼りながら)、中途ハンパに
”いじくり”の試みをしてきたに過ぎない。


もって冷静に構えて、たとえば、「変容し得る自己観念をパラメーターと
して含んだ科学」とは、どんなものになるか。



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岩谷宏のロック論 59 農業

2008-11-26 06:16:35 | 岩谷宏 ロック
日本では、たぶん今世紀の内に、農業において、資本(土地所有)、
経営、労働が分離するだろう(せざるを得ないだろう)。
農業も、だれもがアクセスできる一つの職業になるのである。

日本は工業大国とか言われるが、実は、小さな、そして山の多い島国であって、
大規模な工業には適していない。
ヨーローッパ各国も日本も、これまでは一方的に海外資源をきわめて安く
収奪できたから一方的に工業が発達したのである。
いまとなっては、はるばるインド洋の向こうから大型タンカーで原油を
運んできて、人のこみ合ったところでエチレン・プラントを
操業するなんて、まったく、アホなことだ。

農業にも、粗放な大規模生産に向いている作物(小麦など)と、
人間がいちいち自然や作物と対話しながらやらねばうまく行かない作物とがある。
日本に向いているのは当然、後者である。

地球的な規模での平和、生産技術の平準化、そして公平な為替レートを
前提とすれば、あらゆる生産は適地適物産業となる。
そうなった場合、日本では、漁業と、ある種の林業、ある種の農業は無視できない。

電気製品などと言っても、いますでに、いくつかのものは、台湾、シンガポール、
香港などで、いいものが作られている。

結局、ロックが栄えている国=先進国の人々の苦しみの原因の一つが、
工業化による都市集中、それによる、孤立した、たよるべきもののない、
プロレタリアート化にあり、またそうなった構造そのものにあるのだから、
成功して牧場暮らしをするロック・ミュージシャンの気持ちはあるイミでは
自然であり、未来を先取りしているのかもしれない。

工業的な集中や偏在がなくなり、地球的な規模での物々交換や、
余剰の贈与が円滑に行われなければ、生きていけない、ということになれば、
国家の硬直性も弱まらざるを得ないだろう。
なお、貿易は種類数も量も、いまより大幅に減るだろう。

欠乏の表明、または欠乏の代替的埋め物であった仰々しい音楽は、
もっとすっきりしたダンス音楽に変わって行くだろう。
いますでに、私自身は、都市への未練も愛着も幻想も持っていない。
都心部には、良からぬ人種、無料な人種がうじゃうじゃうごめいているだけだ。
そして、これまで、農業がうっとおしいところだったのは、
資本・経営・労働・人間関係が、不透明にゆ着していたからだ。

いまに、イモやダイコンとコンピューターの希少性(=のなさ)は、
全く同格になるだろう。いまは、要するに、地球はかたむいている。
でも、昔は、もっともっとかたむいていた。
でも、あえぎ声のブルースが力強いレゲエに変わっただけでも、
そこには進歩がある。

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岩谷宏のロック論 58 アメリカ

2008-09-10 07:33:31 | 岩谷宏 ロック
アメリカ

アメリカ人の性格は未知なるものに出会うことによって、
みずからを拡大しない。
むしろ、未知なるものはただちに恐脅、恐怖、絶滅の対象。
これら、不毛なワン・パターン娯楽映画に、今日も長い列ができる。
彼等が映画館に入りきったら、ガソリンをかけて焼いてしまおう。

上陸した清教徒たちが、原住民(インディアンという、
間違った名前で呼ばれている)に対して最初に行ったことはなにか。
答=殺した。

vulnerable、よく使われる形容詞で、良い意味を持つ。
英和辞典を引いてみよう・・・・・・傷つけられやすい、攻撃されやすい・・・・・・
これが、日本語の「感じやすい」とほぼ同じ意味を持つ。
きわめて単層的で原始的な人格概念。
感じることについての、もっと肯定的・積極的・複層的・宇宙全体包括的な
人格概念を示す一般的な形容詞はない(日本語にもない)。
要するに、(広い意味での)他者を感取する能力は、
はじめから欠落している。


日本語でも、「あの子は感じやすいタチだから」などと言った場合、
この”感じやすい”には、拡大的で積極的ニュアンスは全くない。
日本人、以外とアメリカ人に近いかも・・・・。


北米、中南米、あの広い大陸を、英語系およびスペイン語系白人が
おおいつくしている、ものすごい単調と退屈だ。


アメリカ人のメンタリティー、あるいはアメリカ的なメンタリティに対して、
はっきりと否定・否認が行われたのは、ロックの世界からだが、
不思議なことにまだ、他の分野に波及していない。
このメンタリティに、多くの黒人すらおかされていることへの警告も、
皮肉なことに白人ロック・ミュージシャン(デビッド・ボウイ)からなされた。


飛行機−−−、燃料が供給され続け、エンジンが正常に動き続けねば落ちる、
という、考えてみればおっそろしいシロモノである。
こんなものを考え出し、考えたばかりか生産し就航させている神経は
まともではない。
自然や宇宙の条件とよく調和し、うまくおり合った、
いわゆるソフト・テクノロジーの発想がないという点で、
白人は無神経は野蛮人である。


歴史のなりゆきは、まともでない神経に罰を下す。
これからは二十世紀にかけて毎年ますます、飛行機事故は増えるであろう。
ブルジョワ観光客をどっさり乗せた飛行機が、人里はなれたところに、
どんどん墜落するのは大いに結構だが。


私達が彼等をほろぼすことはできないだろう。
彼等が、彼等の愚直な志向性のなり行きの果てに、
勝手にほろんでくれるだろう。


「ロックからの散弾銃」より。


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岩谷宏のロック論 57 ストーンズ

2008-09-10 07:22:07 | 岩谷宏 ロック
IT'S ONLY ROCK'N ROLL

THE ROLLING STONES


胸にペンを突き立て
ステージを血の海に…
きみはご満足か それとも
きみの目に 私はただの
変わった男の子か?


わが身にナイフ突き刺し
今このステージで自殺すれば
きみのもの欲しげな気持はおさまるのか
きみの痛みはやわらぐのか
頭がすっきりするのか?


おためごかしのラブソングで
きみの浮気心をそそったところで
なんになる
私の孤独な癒えぬ


胸にザックリ傷を開け
血をしたたらせば
きみはご満足か それとも
きみの目に私はただの
狂った男の子か?


でも
これがロック
私はロックが好き

訳/岩谷宏


ー「guts ガッツ」昭和50年10月増刊
「ロックアイドルたち」より、23ページ

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岩谷宏のロック論 56 概念訳 ダイヤモンドドックス

2008-08-18 18:38:20 | 岩谷宏 ロック
「概念訳」●ダイヤモンド・ドッグス
DAVID BOWIE


未来の伝説

Future Legends

………そして、死が世界をおおった。
わずかばかり残った屍体がぬかるみの
路上で腐ってゆく。関りを断って貧し
くひっそりと隠れ棲んでいた者達の建
物のシャッターが、いま、ほんの数イ
ンチ開いている。また、窃みによって
生き続けてきた者達の丘、その上から
いまミュータントの赤い目が下の方に
ひろがる飢餓の都市を見つめている。




――そこにはもう自動車がなく、鼠の
ように大きな蚤が猫のように大きな鼠
たちの血を吸い、およそ一万の奇形化
人種がいくつもの小群族に分裂して、
いまや廃屋と化した摩天楼群の、一番
高いのを争っている。――また一方で
は、かつてひ弱な人間達がもの欲しげ
にうごめいた大通りで、一群の犬たち
が店々のウインドウを襲い、ミンク、
銀狐などの高級毛皮や宝石類を襲う。
毛皮は足を暖めるために、そしてエメ
ラルドやサファイアは自分達のグルー
プのバッジとして……。――いまや、
毎日がダイヤモンド・ドッグスの年だ。


「ロックなんか手ぬるいぜ。むしろ、
もうジェノサイド(みな殺し)だァ」


ダイヤモンド・ドッグス

Diamond Dogs
(よくみてごらん、犬しかいない、という
歌)

居心地のいい酸素テントから
きみはもうとっくに外に引っぱり出さ
 れているんだ
ごまかしちゃいけない
ここは戦場さ
きみだってきのうなんか
最新式の受験参考書なんか買ったじゃない
そうだよ
目をこすってよく見た方がいいよ
ここにはもう人間なんか生きてやしない
どぶ板の上をちょこちょこ走り
腐肉をあさる犬の群
生もみじめ
死もみじめ
ただただ極度に無責任に
都市を跳梁して生きるのみ
そういうふうにきみも
覚悟を決めた方がいいぜ


Sweet Thing
(女が男をセックスにさそう歌だよ)

ビルの廊下でしたって
だれもとがめはしないわ
都市ってそ〜ゆ〜ところなのよ
ドアのカーテンを破って
中の人にも見せてやりましょうよ
みんな心の底では
痛みのようなものを感じるはずよ
それはステキなことじゃない?
そう、私はこわいの
淋しいの
こうして今あなたを誘惑するのも
広場のまん中に走っていって
叫び声をあげるかわりなの。


心配しないで
とってもいいことよ


Candidate/Sweet Thing
Reprise
(未来人候補生の、みじめな現状の歌)

後悔してるの?
無茶なことしたって?
だめよ、もう諦めなさい
いまさら自分をごまかすことなんか
できはしないでしょ


そうよ
欲しいのなら
いまとりなさい
いまつかみなさい


むつかしくはないのよ
高くはないのよ
やさしいことよ


もうあともどりは出来ないのよ
気持のいいことよ
お金はいらないわ
こんなこと
お金をもらうほどのことじゃないもの


私のこと気づかってくれて
とても嬉しいわ
こんなにいいことがもしも
二人の不幸の原因になるというのなら
いいの、わたし
あなたと一緒に死刑になったって


手に手をとって
流れに飛びこんだんだから
この安っぽいたわいない望みが
私たちにとっては
唯一至上の望みだったんだから
そうよ
覚悟を決めるべきなのよ


Rebel,Rebel
(子供にむかってのアジ)

子供たちよ
反抗できるのはせいぜい
きみたちだけなんだから
はたち以上の大人は今
もうぜんぜんダメなんだから
精一杯反抗して
きみたちが
未来社会の基礎をつくるんだ
そうだよ、やるべきなのだ
学校
に対しては
登校拒否を
貨幣制度に対しては
万引を
性の観念に対しては
×××を
でもこんなこと書くと
ロッキングオンも
「未成年教唆」で
とっつかまっちゃうかなあ
ヤバイなあ
だァめだなあ


いいものはロックだけ
Rock'n Roll With Me
(ロックしか納得できるものはない、
という歌)

必然的に世をすねて
斜に構えて生きてきたぼくだけど


本当にいいものに
たったひとつ出会ったなあ


それはロックそして
いっしょにロックしてくれるきみ


そうさ
ロックの中にいるときだけは
生きてて良かったと思うんだ
きみとロックで結ばれてるときだけは
生きることは正しいと思えるんだ


優しさがなんの役にも立たない今の時代で
どうやって生きてったらいいのか
かいもく解らない世の中だけど
ロックだけはなぜか
すごくたしかな手がかりのような
気がするんだ


We Are The Dead
(なんにもできないぼくらは死人だという歌)

単に仕事の関係で知り合ったにすぎな
いけど、ぼくはふと、あなたの目の奥
をのぞいてみたい気がしたのです。あ
なたも、ぼくと同じことを考えてる人
かもしれない、という気がして。


つらい毎日。まるっきり不本意な毎日
の生き方。死んでるのと同じなぼくた
ちだ。


(でも、いつかはきっと、こんなバカ
げた世の中なんかひっくり返ると思う。
そうだよ、ぼくらの子供達を信じよう。)


ぼくらはいずれとっつかまって、牢屋
にぶちこまれ、ゴーモンを受けて、転
向させられるかもしれないけど、しょう
がないよ。いますでにぼくらは、死ん
でるのと同じなんだから。


1984
(いますでに一九八四年、世の中は凍結
してる、という歌)

ここ数年ロックびたりで
ゴキゲンなぼくらだったけど
実はすでに
一九八四年になってるのかもしれない
気をつけろ
やつらはきみをつかまえて
きみの頭の中に
空気をつめこもうとしてるんだ
さからってもムダかもしれない
あせってもムダかもしれない
あのバカな大人たちが
そのバカさかげんのすべてを
きみに強制的に押しつけようと
がんばっているのだ
だからいますでに
一九八四年だ


ああ、乗り物が欲しい
逃げ出せるための乗り物がほしい
一九六五年頃の
希望と活気にあふれていた
あの時代がもう一度ぼくはほしい


Big Brother
(メサイアの出現を希求する歌)

ゴミやバラについて語るな
自分の花をたたきつぶせ
割れ裂けよ
そして
鋼鉄のように
無機的な強さを身につけよ
罪を犯したときから
すべては本当に始まるのだ


世を救え
七つの大陸を救え
「人間」を糾弾せよ
勇敢なアポロとなって
人間を恥辱の自覚の泥沼に
全員死滅させよ


つまり、きみ自身が
絶対に肯定的な存在になれ


でもわからない
だからといってどうしたらいいのか
いまのぼくにはわからない
そんなことは
まるっきりつまらないことのようにも
思えるし
ほんとに
ど―したらいいのかわからない


がいこつ家族の歌
(ワレワレの貧相な現状をずばりうたった歌)

ぼくらは死人ですらない
もはや骸骨
がいこつになると
だれがだれだが
よく見分けもつかない
だれがだれを愛してるのか
愛してないのか
そんなこともわからない
みんな兄弟みたいで
なんだかコッケイで
なんだべさ
コレワ?
そう
ぼくらがいこつ
がいこつ家族



岩谷宏


―「ROCKIN’ON ロッキングオン」1974年11月号
13 20〜23ページより



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