某の警備員としてのキャリアは終わりました。
正直実感はない。
こういうシチュエーションでは自分は絶対どこかで泣いているはずなのだが、
泣かないって事は本当に実感が伴っていないと自分で言える。
なにしろここまで長きにわたり何かに専念してきた、同じ人と共にしてきた(相方以外と)という経験自体が無いので、
それをやらなくてよくなる事への実感もまた湧いてこないのは自然なのかも知れん。
ともあれ、現実はもう制服を着る必要もないし、
発報出動やATMの障害対応や地下の汚水槽を覗きに行く事もない。
好きだった機械警備の仕事だが、
企業経営の現実は自分の理想を許さなかった。
それにたいする残念な気持ちはあっても、
機械警備そのものへの思いや、やりがい、誇りは失われてはいない。
確かに自分は機械警備をやってきたし、
今なお機械警備の仕事が好きである。
これが現時点で自分が受け容れている現実。
しかし、
すでに過去に触れているが、
機械警備は犯罪の変化(スピード化、巧妙化、複数犯行化など)
に伴って大きな曲がり角を迎えている。
「機械警備に意味はあるのか?」
という厳しい声も耳にする。
そもそも機械警備システム(警報駆けつけというスタイル)自体、
出発点は省力化、常駐警備の代替手段として始まっているわけで、
低料金と効率性で市場に受け容れられたこのシステムだが、
「即応性に欠ける」という防犯防災上の致命的な弱点を抱えている。
これは、このスタイルを続ける以上はどうしようもなく避ける事の出来ない課題。
そしてこの時代はまさにそのシステムの有効性を問われている。
例えば、法改正の話で所要時間の短縮云々が言われているが、
法定到着所要が25分が20分になるところで実質的な意味があるのだろうか?
機械警備は今後どうあるべきか。
自分もずっと考えてきたけど、明確な自分なりの考えは見出せなかった。
思うに侵入警戒の機械警備については、
昔ほどの有効性は既に失われている。
なにしろ今の相手は唐草模様の風呂敷を背負った食い詰めの「泥棒さん」ではないのだ。
入念に下見をし獲物の内部状況を把握、
警備システムを逆手にとってリスクを最小限に押さえた行動を取る、
「窃盗ビジネスマン」なのだ。
侵入発報により警備会社あるいは警察が侵入犯逮捕、
というのは真報数比で言えば本当にわずかなもの。
私も発報現場で侵入者を見たのは7年間で一度きり(
2006/07/05参照)。
(一応断っておくと、警備会社の任務は犯人逮捕ではなく「被害の拡大防止」。
分かりづらいが、要は犯人を見かけてもとっつかまえる必要はなく、警察を呼べば義務を果たした事になる。)
“機械”警備とはいえ対処するのは人間。
侵入検知のハードウェアが日々進化向上していても、
それを運用するソフトウェアが現状に対し有効に機能していなければ…。
いずれは市場の支持を失う事にならないかと危惧している。
反面、防災や非常通報(押釦)は有効性を保っていて、
税務署など一部官公署は機械警備担当会社に対し
「火災発報は即時消防通報」
と指定する事で、重要書類などの保全を民間警備会社のシステムに依存している。
火災発報現場で動転している現地社員に替わって適切に対応した機械警備要員の話は、同じ警備員として誇りに思う。
また、強盗事案発生時などは非常押釦の押下による警察即時通報により事件の早期解決に寄与している。
要は、良い点はさらに伸ばし、
現状にそぐわない点は改善を図っていけばよい、という話である。
ただ、侵入警戒は機械警備の大看板。
この有効性が脅かされているというのが大変なところである。
「警備員駆けつけ」自体の是非も含めた大きな発想の転換が求められているのではなかろうか。
何かと規制や規則の多い業界であるが、
志ある全国の警備業務従事者(特に機械警備要員)諸氏の現状打破力に期待したい。
あれ…?
なにやら途中から時事評論になってしまったが、
そんなご託を並べられるのも最後。
捨て台詞と思って訊いてくだされば幸い。
そして…
書いてて熱くなってしまい、
この業界を辞める感じが全くしなくなっちゃった(;・∀・)
はは、ハハハハ…
(十数分後)
さてさて。
いろいろ文章並べてきたが、
要は「現場の人達あっての機械警備」ということ。
これだけは言いたいし、その思いでブログやってきた。
「警備業」「警備員」という言葉に一定の社会的バイアスが掛かっているのは事実。
これを打破するぞ!とか考えていたけど、最近は変わってきていた。
要は人に
「いい仕事だねえ」といわれるような仕事であれば、
またはそうした気持ちで取り組んでいれば、
打破するまでもなく変わっていくものじゃないだろうか。
これは個々の従事者の仕事への取り組み方もだし、
警備会社、警備業界も真剣に考えていくべきであろう。
単なるお題目で「業界の地位向上」とか「人材は人財」とか云う時代はとうに過ぎた。
「現場の人達が誇りとやりがいをいつでも感じられる仕事でありますように。」
自分はこの仕事から離れることになってしまいましたが、
現場の人達の事をいつでも、心から応援しています。
……(;_;)
さらば、警備業。
さらば、機械警備の現場よ。
さらば、「某警備員」。
おわり。