kei's anex room

日々の歌日記(硲 比呂介)http://blog.goo.ne.jp/hiro5713 の別館です。

FANTSIA-FOX さんの選歌

2009-04-24 09:32:15 | Weblog
船坂圭之介さん 2009 /2005
2009
触れ得ざるもののひとつよ遥か日の美しき水玉模様のドレス
掌の上に屯ろする影 しろがねの月のしづくのごとく透明 
むらさきの冠一斉に向かしめて桔梗自生のままいさぎよし
対向車無きここち良さ→(標識)のままに進めばやがて洞爺湖
戯れ言の一つになれがかかづらふ夜は「氷室」のごとき静寂
ふゆ一夜 惑星直列なせるがに津守の宮に音消えて在り
清浄の波を鎮めて瀬戸内は一夜ひととき訝しき 静
早ばやと窓閉づごとく一枚の画像外しぬ 冬ぞいま逝く
温む田に泳ぐ音符のごとくして若き蛙の仔たちの群れは
吊るされて四肢のあるがに夕映えを拒みつつ編む蓑虫の孤高
みづからを愛(いと)しむ心 約(つづ)まりは薊(あざみ)倒れし後の夕焼け


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またゆっくりと他の作品も拝見させて頂きたく思っております。



2005

葬列へ雨降らすがに雲は寄れど死はつねに濡れたる乾電池

陥(おと)しめて母を哭かしむおとうとの掲ぐ黄薔薇にカインの殺意

たわやすく死の立ち上がる夕まぐれ十字砲火のごとく木枯らし

かすみゆく砂塵の中に隻腕の少女それのみ食(は)むパンの耳

ままならぬ夢のあまたを散らし舞う洗濯機在り春の黄昏

歌ひとつ成すくるしみに疲れたり銀月よ そこを動くな!

桔梗(きっきょう)の濃ゆき薄きをかかへ来て午後の額をひとは白くす