咲 -Saki- 感想

第75局　奪回

　扉絵。



　今回の扉絵は、制服姿の姫様とハッちゃん。

　……って、ハッちゃん、そのボゼの面、学校へも被って行ってんの？
　これはもう、中二病とか、そういう次元の話じゃないな。



　本編。

　先鋒戦は、神代の三倍満で終了だったのだそうだ。
　なので、結果は、宮守：115000点、永水：100700点、清澄：99900点、姫松：84400点。
　タコスから三倍満を直ちょくった神代が２位に浮上し、小瀬川さんは棚牡丹トップとなった。

　逆に、三倍満に放銃したタコスは、３位転落した上、原点割れ。
　タコスは、リー棒を出さなければ、放銃しても浮きの２着だったと悔やむが、アレはリーチで正解だよね。

　部長も、「大健闘」「ほぼ原点で十分」と、タコスを慰めるが、



　当のタコス自身は、納得してなさそうな様子。

　考えてみれば、部長の「大健闘」というセリフ、県予選決勝でタコスに掛けた言葉と同じなんだよな。
　でも、タコスにとってみれば、あの時と「同じ」で良い訳無いよね。
　マントを外して、涙目で胸に抱えている姿が痛々しかったので、次は活躍出来ると良いのだけど。



　一方、漫は「爆発」しないまま、トップと30600点差のラスになってしまった。
　それでも、チームメイトは漫を責めず、末原さんも「油性」の件を無かった事にしてくれそうだったのだが、



「あら～ 末原ちゃん 油性ペンがいんの～？」
「え」

　え。
　おいおいおい、「忘れてたわー」なんて、末原さんの優しい嘘に決まってんじゃねーか。
　なに台無しにしてくれちゃってんの、この監督代行（？）さんは。

　つか、そもそも、立場的には、漫への罰ゲーム自体、止めなきゃマズイだろ。
　それをどうして、加担を通り越して、エスカレートさせてんの？
　いや～、この一言だけで、末原さんが赤阪代行（？）を嫌っている理由が分かるわ。



　次鋒戦、宮守女子からは、早くも、美少女留学生、Aislinnエイスリン Wishartウィッシュアート が登場。



「シロ！」
「コータイ！」

　今までは、絵を描くばかりで、何のセリフも無かったけど、別に喋れない訳じゃないのね。


　そして、「おんぶして…」などと言うダル子さんに、エイスリンが描いてみせたのは……、



「ふざけんなってこと？」

　あら、意外とイイ性格してるな、エイスリンって。
　小瀬川さんに手を振っている時の表情も良いね。
　なお、エイスリンは、ニュージーランドの出身なのだそうだ。



　清澄高校の次鋒は、県予選同様、染谷まこ。
　という事は、清澄のオーダーは、全国でも同じみたいだな。



　ヘコんでいるタコスに対し、「今度こそ本当に」カタキを取ると言って、まこ出陣。



　他に次鋒戦に参加するのは、永水の狩宿巴と、姫松の真瀬由子。
　しかし、次鋒戦で一番の強敵は、宮守女子のエイスリンらしい。



　何と、エイスリンは、地区大会和了率全国１位。
　と言うのも、エイスリンは、門前で13巡目までに聴牌する事が異常に多いのだとか。
　なお、このサイトによると、他家が居ない場合でも、門前で13巡目までに聴牌する確率は47%程度らしい。



　チームメイトの小瀬川さんも、「どうせエイスリンが勝つしなぁ…」と余裕の発言。

　続けて、小瀬川さんが、
「エイスリンは自分の夢――　理想の牌譜を卓上に描き出す…」
　と言っているけど、Aislinnという名前には、「Vision」とか「Dream」という意味があるらしいね。



　だが、そんな前評判に反して、意外にも、次鋒戦はまこの独壇場となった――…。



　東１局　　親：エイスリン　　ドラ：不明

　　　ドラ：不明

　開始早々、まこはこの手からチー。
　安手確定の上に、でしか和了れず、先にを持って来たら、フリテンになる悪手だが、



　次巡、まこはをツモって来て、鳴き一通のみ、300・500ゴミ和了り。
　結果だけ見れば、この和了りで、強敵、エイスリンの親番を終わらせてしまった事になる。



　東２局　　親：真瀬　　ドラ：

　この局も、まこはセオリー外の一手を打つ。

　８巡目、

　　　ツモ　　ドラ

　何と、まこはここから、打。
　よりにもよって、出来面子のドラを中抜き。それも赤の方を。

　このは親の真瀬さんにポンされ、ドラ５で18000点以上確定。
　４巡後、手にならなかったらしい狩宿さんは、親の現物の暗刻落としでオリに回る。

　４枚、４枚、３枚が見えているため、当たるとしたら、ワンチャンスのだけなのだが、



　狩宿さんにとっては意外な事に、放銃したのはエイスリンにではなく、を切ったまこの方にだった。

　これも、平和ドラ１で、和了点はたったの2000点。
　でも、結果的には、ドラの固まった親の大物手と、エイスリンの手を同時に潰してしまった。


　この、まこの闘牌に、最初は興味無さそうだった小瀬川さんが反応。
　対戦校の名前すら覚えていなかった様で、チームメイトに確認を求めると、



「清澄！ 原村さんのいる学校だよー」

　……と、姉帯さんが即答。
　ああ、姉帯さん、のどっちの事も、ちゃんとチェックしてたんだ。

　それと、頭上半分だけ出てる、胡桃ちゃんが可愛いな。
　小瀬川さんの膝の上が、胡桃ちゃんの定位置なのだろうか？



　絶好調のまこは、更に眼鏡を外して、本気モード突入。



　何だか、瞳の中に、十字架みたいな紋様まで浮かんでいるな。殲滅眼イーノ・ドゥーエ？



　そして、

「オカルトにしろ 何にしろ
　その相手が まこの見知った顔しか作れないのなら――」



「まこはそう簡単に負けないのよね」

　まこがトップを奪還し、そのまま次鋒戦終了――！！　早っ！！

　先鋒戦後半といい、この作品は、ホント大胆にキンクリ発動するよなぁ。
　姫松高校次鋒、真瀬由子さんが言ってた「キーウィ対策」って、何だったんだ？
　いや、エイスリンがニュージランド人だから、「キーウィ」だったというのは、分かるケド。

　ともあれ、県予選決勝とは逆に、まこのエイスリンに対する相性は最高だった訳か。
　幾ら聴牌が早くても、手順が素直であれば、まこのTASみたいな能力が発動して、完封出来るのね。
　そう言えば、今回のまこは、一度も染め手を和了らなかったな。


　今年の『咲-Saki-』は、この第75局までで終了。
　次回掲載は、次の1月7日発売号にて。









　蛇足。

　オカルトという単語が出て来たので、僕の考える「麻雀のデジタル」について少し。

　ネットを見てると、キャプテンの打ち方は「デジタル」なのかという話を目にする事がある。
　確かに、「流れ」と違い、「癖」というものは確かに存在する、合理的なものである。
　では、「デジタル」なのかと言えば、少なくとも僕は「デジタル」とは呼んでいない。


　麻雀では複雑なので、じゃんけんで喩えてみる。
　ただし、普通のじゃんけんでは戦略が生まれないので、下記の様にルールを変えてみよう。

	グー（ｘ）	チョキ（ｙ）	パー（ｚ）
グー　（ｇ）	０	３	－６
チョキ（ｃ）	－３	０	６
パー　（ｐ）	６	－６	０

　要するに、グーで勝ったら３点、チョキで勝ったら６点、パーで勝っても６点である。
　え、じゃんけんグリコ？　何ですか、それは？


　これを見て、子供の頃の僕が考えるのは、こんなところである。
　グーは、まけたら６点とられるのに、かっても３点しかとれないから損。
　チョキは、かったら６点とれるのに、まけても３点しかとられないから得。
　パーは、かってもまけても６点だからおなじくらい。
　だから、チョキを多め、グーを少なめ、パーをグーとチョキの真ん中くらい出そう。


　でも、こんなのは、ちょっと計算すれば、簡単に答えが出せる。
　自分がグーを出す割合をｇ、チョキをｃ、パーをｐ。
　相手がグーを出す割合をｘ、チョキをｙ、パーをｚ。
　こう置く時、0gx+3gy+(-6)gz+(-3)cx+0cy+6cz+6px+(-6)py+0pzが０になれば、絶対「負けない」事になる。
　当たり前だが、相手も同じ戦略を取れる以上、絶対に「勝てる」戦略は存在しない。

　後は、これを計算して、
　0gx+3gy+(-6)gz+(-3)cx+0cy+6cz+6px+(-6)py+0pz=0
　(-3c+6p)x+(3g-6p)y+(-6g+6c)z=0
　グー、チョキ、パーを出せる最低回数は０回なので、g,c,p,x,y,z>=0。
　だから、-3c+6p=0、3g-6p=0、-6g+6c=0で、g=c=2p。

　つまり、グー：チョキ：パーを２：２：１の割合で出すのが、最適戦略という事になる。


　さて、それを知った上で、実際のゲーム中に「相手の癖」に気付いた時、この戦略を変えるべきだろうか？
　もし変えれば、勝率が高くなる可能性もあるが、低くなる可能性もある。
　「人間の癖」なんて、変わるかも知れないし、偶然かも知れないし、周到な罠かも知れない。
　逆に、戦略を変えなければ、勝率50%以上をキープ出来る代わりに、確率を超えて勝つ事も出来ない。

　ここで、戦略を変えるのがキャプテンの雀風、変えないのがのどっちの雀風だろう。
　そして、僕は、ここで戦略を変えないのが「デジタル」だと考えている。
　まぁ、これは、どちらが正しいとか、間違っているとかじゃなくて、好みの問題だと思うケド。

　いずれにしても、僕がキャプテンを「デジタル」と呼ばないのは、そういう理由である。



　最後に。



　大昔の事なので誰も覚えてないだろうし、気にしない。