貸本マンガ史研究会

貸本マンガと戦後の歴史

ヒモトタロウさんの訃報に接して。

2014-10-20 21:48:46 | 日記

さっきの続きです。

2008年12月3日の研究会HPのブログに私はこう書きました。


先週の土曜(11月29日)、ヒモトタロウ(阪本誠一)さんから2冊の本が届いた。『第二次世界大戦の劇画図鑑! ! 潜水艦』と『第二次世界大戦の劇画図鑑! ! 戦艦大和』である。
 版元は「土屋書店」(貸本マンガの曙出版を経営していた土屋豪造氏が現在営まれている出版社)である。2冊ともB5判180ページほど。画像は『第二次世界大戦の劇画図鑑! ! 戦艦大和』である。
『第二次世界大戦の劇画図鑑! ! 戦艦大和』の奥付には、

 本書は昭和53年刊行の「あけぼの少年文庫」劇画図鑑の中から「第二次世界大戦の劇画図鑑!! 戦艦大和」阪本誠一著を復刻出版したものです。出版当時の劇画を忠実に復刻するとともに、巻頭には新たに「戦艦大和」の史料・写真を加えました。

と記載されている。昭和53(1978)年といえば、純粋な意味での貸本マンガはもはや存在しなかった。しかし、貸本マンガの老舗であった「曙出版」はまだ苦闘を続けていたのである。『貸本マンガ史研究』18号から連載が始まった、宮川義道氏(曙出版でマンガを描かれ、編集もされていた)の今後の記述によって、貸本マンガ出版社の末期のありようが、あきらかにされるだろう。(H)


さきほどお伝えしたように、そのヒモトタロウさんが亡くなられた。
戦記マンガを語るのは難しい。しかし、貸本マンガの重要な一画を占めていたのは間違いないのだから、「戦後」を語るうえでも避けてとおるわけにはいかない。しかし、難しいのである。
ここでヒモトタロウさんを偲んで、お会いしたときのエピソードを記したい。もちろん作品論、作家論などではない。
7、8年、いやもう少し前だっただろうか。
宮川義道さんから、「ヒモトさんの絵画グループが上野の美術館で展示会を開くようです。会いに行きますか」という連絡をもらった。
研究会からは、ちだ・きよしと私が行き、展示会会場でお話しをうかがった。堂々とした体格の人であった。絵画グループのメンバーとのおつきあいがあるのだろう、短い立ち話で終わってしまったのが残念だった。
問題はそのあとである。これは、ちだ、宮川氏、そして私だけの秘密なのだ。他の会員は知らない。こんなことを梶井に聞かれたら、私たちは研究会を即刻除名処分だっただろう(そのころは梶井もそのくらいの体力は残っていた)。
ヒモトさんは1万円札を財布から出し、「これで飲んでいってください」と言われたのである。
もちろん固辞しましたよ。しかし、出されたものを受取らないのは失礼ではありませんか。収めどころがないでしょう。その1万円札を誰が受取ったのか記憶にないのですが、多分私だったようです。
私たち3人は、いただいた1万円で、アメ横の安酒場で昼過ぎから飲んだのでした。(H)

訃報

2014-10-20 17:11:17 | 日記
残念なお知らせです。
もうご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、8月6日、ヒモトタロウ(坂本誠一)さんが亡くなられました。77歳でした。宮川義道さんが知らせてくれました。
ヒモトさんについては、近いうちにまた書きます。(H)

バックナンバー(4)

2014-10-05 22:06:51 | 日記
●10号(2002・10・21)
 92ページ 定価600円
・「おてんば」試論1
  -“自立する少女像”は描かれたか/吉備能人
・資料/みやわき心太郎氏インタビュー
  ただマンガを描くことだけが望みだった
・貸本マンガと日活アクション映画-その断面
  江波譲二「トップ屋ジョー」の明るいアクション(下)/三宅政吉
・貸本マンガとはなんだったのか?
  渋谷・村上対談批判2/三宅秀典
・貸本マンガ家4「白い恐怖」/松本正彦
・理想でも希望でもなく
  -久呂田まさみ初期劇画論/ちだ・きよし
・「裕次郎ブーム」なんてなかった
  -映画と貸本マンガの関係にふれて/権藤晋
・「全国貸本新聞」に見る貸本マンガ9
  広告に見る貸本マンガ3〈若木書房〉/三宅秀典

●11号(2003・1・25)
 80ページ 定価500円
・貸本SF短編マンガ誌『X作戦』の世界(上)
 「破滅」への情熱と貸本マンガ/三宅政吉
・少女マンガのなかの戦後風景
  -遠藤信一とつげ義春を手がかりに/権藤晋
・軌道の光芒 「きちがい時計」とその周辺論
  -辰巳ヨシヒロ小論-/ちだ・きよし
・私記貸本漫画家7「始め興宴より起りて」/大山学
・「おてんば」試論2
  -「自立」とは対極にあった夢想/吉備能人
・貸本マンガに奥付はなかった?
  -四方田犬彦発言を検証する/権藤晋
・堀江卓は古い作家だったのか? 三宅秀典論文批判/溝口博史
・マンガ表現における「古さ」と「新しさ」
  溝口博史氏の批判にこたえる/三宅秀典
・貸本マンガ家5「表紙要す」/松本正彦
・戦後・貸本・マンガ(上)
  -鵜野博吉さんと大竹正春さんに聞く/梶井純

●12号(2003・4・28)
 128ページ 定価800円
・貸本SF短編マンガ誌『X作戦』の世界(下)
  冷戦・原水爆実験そして貸本マンガ/三宅政吉
・貸本屋のある風景/権藤晋
・資料/みやはら啓一氏インタビュー
  貸本青春マンガ時代のエートス
・「おてんば」試論3
  -「少女劇画」の実相と青春マンガの一断面/吉備能人
・私記貸本漫画家〈最終回〉「煙霞跡無し昔誰か栖みし」/大山学
・戦後・貸本・マンガ(下)
  -鵜野博吉さんと大竹正春さんに聞く/梶井純
・貸本マンガ家6「心強い同志」/松本正彦
・もうひとりの「寺田ヒロオ」
  -断末魔の時代と山本まさはる/坂育夫
・恋尽小島剛夕少女
  -胸キュンの貸本屋さん時代/風かをる
・青春の描き方
  -石川フミヤス作品の有効性について/ちだ・きよし
・「全国貸本新聞」に見る貸本マンガ10
  広告から見た貸本マンガ4〈東邦漫画出版社〉/三宅秀典
・問題を横滑りさせてはならない
  -「裕次郎問題」によせて/権藤晋